29-05 Issue

第29部 Calm Day?

奥多摩湖畔から15日目


(5)Issue ************************************************************ 3115文字くらい




「ボクちゃんのは?」

「まだついでないわよっ」



目的語は、味噌汁のこと。

香の分しか注がれていないことへの、

分かりきっている質疑応答。



まだ後ろ抱きから体勢を変えないでいる¨もっこり男¨は、

さすがにココでおっぱじめるのには、まだ時期が早いと、

起き上がりそうな下半身に、ここは大人しくするよう命令を下す。

香の反応が微妙にヘンであることは感じつつも、

特にマイナスの異変ではなさそうだと、

いつもの香が戻りつつあることを読み取りながら、

くいっと肩を掴んで対面式に体勢を変えた。



「わわっ!」



ちょうど腰にあるエプロンの結び目あたりで、

撩の腕もクロスする。





「かおりちゃん、これからは本気で反撃してみな。」

「は?は、反撃?」

「そ。」

まだ頬を赤くしたままの香は、また板を背にきょとんと目を開く。



「持っている包丁でも、鍋でも、そのへんにあるもん何でも武器になんだろ。」

「え?な、何?ど、どういうこと?」

「これも訓練♡」

小首をかしげてそういう撩を、潤んだ瞳で見上げる香。

少しだけ不安げな色が含まれる眉の角度に、

撩は解説を加える。

「前から言ってんだろ? 気配を読む訓練だよ。

 気付いたら反撃するか除けるかしてみな。」

「うー…。」

ニンマリといたずらっ子のように提案する相方に、

悔しさが混じった感情が湧いてくる。



「ほ、本気のアンタに、かなうワケないじゃないっ!」

「だから、おまぁもホンキだしてみろって…。」

そう言いながら、腰に回していた左腕を緩めて、

ゆっくりと大きな手を体躯に沿って上に這わせれば、

ひたりと香の右頬を包み、

親指で濡れた香の唇を左から右へとつつつとなぞる。

びくっと肩が上がった香の中に、

同時多発で生まれた感情は3種類。




その1

このオトコは、どーして、

こぉーゆぅータイミングでしかけてくるのか、

わっけわかんない!

た、たしかに、ちょっと、し、してほしかった、けど…。

ごにょごにょ…。





その2

ホンキの反撃って、無理だよ…。

アンタ相手にそんな気分になれる訳ないじゃない。





その3

お味噌汁、冷えちゃう…。

温め直さなきゃ…。




ほんの数秒の間、

ドキドキと脈打つ自分の鼓動を感じつつ、

撩の目を見つめながら、そんなことを考えていたら、

ふっとその目が細くなった。




「リップクリーム、とれちまったな…。」

「は?」

「あくびして、切れちまわねぇよーにしとけよ。」

「はぁ?」

油断していたら、またちゅっと吸い付かれる。

「っ!」

瞬発的接吻に目を閉じるヒマがなかった。

「さすがに、ずっとちゅうしっぱなしで、潤すワケにはいかんしなぁ〜。」

重ねて艶が出た下唇に、また親指をスライドさせる。

この甘い時間に、もう限界っと、

香の方から空気の流れを変えることにした。




「えいっ!」

「ぐがっ!」




香から金的をくらったのは、これで3度目。

この反撃で、妙な音と同時に、撩が股間を押さえて床に転がった。

そこに、包丁や鍋では足りないだろうと、

お約束の木製ハンマー100トンを振り落とす。

地響きのエコーが途切れた後、

香が、柄(つか)を握ったまま、実に落ち着いた口調で返す。




「それじゃ、あたしも、家事を邪魔されたくないから、

ご指示通り、『ホンキ』でさせて頂きます。」



パンパンと手をはたけば、

確か、フローリングで護身術訓練を受けた時も悶絶していたことを思い出す。

あの時は、心配して近付いたら逆に捕まってしまった。

これもフェイクかもしれないわと、そう思い返しながら、

冷めた味噌汁腕をすっと持ち上げ、

あーあ、とつぶやいてまた鍋に戻すことに。



「もう、あんたのせいで、光熱費の無駄遣いだわ…。」

脇で潰れている相方は、上半身をのされた状態で

ごそごそとハンマーの下から這い出てくると、

両手をファールカップがわりにしたまま、

よじ登るように白木のイスの上に横たわる。



「か、かおりしゃーん、ここは反則ぅ。子種がなくなるだろぉーが…。」



持っていたカラの汁椀が香の手から落ちた。

「は?」

どきんっと、

心臓だけマイクロ波を受けたようにじゅうと温度が上がる。

一つの行く先を否定することのない言葉が、

さらりと撩の口から醸された。

香は、体の機能が一時停止中。

頭の中は、あの時ベッドで聞いた台詞がエコーする。




— ……香、……お前が望む未来を、……諦める必要はない。 —




2度目の夜に確かにそう言っていた。

そんなことをまだ考える気分もゆとりも全く無いところに、

この一言は、香にとって刺激が大き過ぎた。

本来だったら、

¨ 子種がなくなれば、どっかのオンナが、あんたの子供だから面倒見ろって

言い寄られる心配はなくなるじゃない? ¨

と憎まれ口も軽く出てくるはずだったのに。

しかし、ふいに訪れた命の種の単語に、

体と心が激しく過剰反応中。

見えている肌は全て赤くなった。




「あぅ〜…。他のヤローには、いくらでも使っていい手だけどな…、

 ボクちゃんのふぐりはカンベン…。」

はっと我に返って、

悶えている声の主の方をみると、

テーブルからは顔が見えない。

角度を変えれば、床に膝をつけたまま流しに向かって尻をつきあげて、

イスにうつ伏せになっている撩。

大事なところ押さえたままで、顔を青くしている。

芝居、フェイクには見えない。




「や、やだっ!ちょ、ちょっと撩!大丈夫?!」

慌てて駆け寄り、顔を覗き込めば、あまりみることのない撩の苦悶の表情。

「ご、ごめん!あ、あんたが本気だせって言うから!」

「うー・・・ん」

「りょ、撩!」

「……も、かい、ちゅうして。」

「は?」

「ちゅーしたら、こいつも元気になって、きっと治るはずだっ!」

上半身をがばっと起した撩は、

香の両肩をロックして、たらこ唇全開で接近してきた。

パーンと音がしたのは、

フライパンだったからではない。

撩が熱い口付けをしたのは、径26センチの赤い鉄の塊。



「朝からふざけるのはやめてくれないかしら?」



すっと立ち上がった香は、また手をパンパンとはたけば、

落としたお椀を拾い上げて、

コンロのガスをカチンと消した。

軽く器の汚れを洗い流しながら、

これから毎朝こんなことが続くのだろうかと、

昨日の屋外訓練の筋肉痛と、こめかみの痛さを若干感じつつ、

布巾できゅっきゅっと拭き上げる。



夕べの味噌汁を2人分注げば、

刻んだユズの皮を散らして、香りと彩りを添える。

香は、はぁとまだ頬を火照らせたまま、

ことりと食卓に汁物を合流させた。



早いうちから保温のスイッチを入れていた炊飯器に向かうと、

程よく加温された主食を、

それぞれの茶碗に盛りつける。

(そう言えば、このお米も種なのよね…)

と思ったとたんに、またかぁぁっと体温が上がる。



撩の子種発言の台詞が被ってしまい、

ぼしゅっと湯気を吹き出した香は、

慌てて炊飯器のフタをバクンと閉めた。



このオトコといると、

甘い刺激が多過ぎて、本当に心臓に悪い。

両手に一つずつ茶碗を持って、

自分のところに静かに置き、それとは対照的に、

丼サイズに近い大きな茶碗を

撩の席にドン!と音を立てさせて、味噌汁の左隣の指定席へ。

エプロンをはずして、イスにかければ、

すとんと、自分の席に腰を降ろす香。

香なりの照れ隠しは、時に激しさが伴うことは承知済み。



「……くっていいの?」



鼻から上だけ、ひょいとテーブルの縁(ふち)から顔を出す撩。

「別に、食べたくなかったら食べなくてもいいのよ。」

淡々と返す香の表情を見やり、

ふっとテーブルに隠れている口元が笑う。

「いえ、いただきやす!いただかせていただきやす!」

とおかしな日本語を発しながら、

がたがたと席について、箸をとる。

「いったらっきまぁーす!」

本日の、朝食は至って和風なメニュー。



この手料理も、

自分が¨オトされた¨要因の一つかと、

撩はまず一番に、

ずずっと汁碗の中身をすすった。



********************************
(6)へつづく。






原作中、撩が香から金的くらったのは、
美樹ちゃんが街中でナイフ攻撃した際に
膝がヒットしたシーンがありましたが、
それ以外であったかいな?と。
(竹刀でぶっ叩かれたのは除く。)


【Yさん(←とりあえずこの伏せ字でっ)ありがとうございます!】
「返」→「変」とりあえず修正しました!
いつもご連絡ありがとうございます!
助かりま〜す!
(まだ未修整の箇所があるのでオペに行ってきま〜す)
2013.12.16.21:56

スポンサーサイト
プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


9万hit記念に
とりあえず作ってみた
CH専用Twitter
 


拍手1000パチ記念につけちゃいました。



かなり便利なサーチツール

登録サイト最新情報はこちらをチェック!


試運転中…

カテゴリ
最新記事
月別アーカイブ
検索フォーム
QRコード
QR
現在の閲覧者数: