03-09 Sofa

第3部 Turning Point

奥多摩の翌日


(9)Sofa **************************************************************************1351文字くらい




「あのバカ、結局全部やりやがって…。」



キッチンに戻った撩は、きれいになったテーブルとシンクを見て苦笑した。

「っんとに、自分のことは後回しだな。」

炊飯器もセットしてあり、チャック付きポリ袋に入った冷凍のマアジが

バットの上で解凍を待っている。

とにかく、今は香に何もさせたくない撩は、

そばにいないと、まぁた何か始めそうだと、リビングに行くことにした。



チャッとドアを開けると、ソファーの角で顔の上半分だけ出して、

体育座りで毛布にくるまっている香が目に入った。

(なぁーんでまた、そんな寝苦しそうな格好で…。)

すーすーと静かな寝息が聞こえる。



撩は、足音を立てずに近付いて香の右隣りにギシリと腰を下ろすと、

そっと肩を抱き寄せた。

重力のまま香の体はゆっくり傾き、

撩に膝枕をしてもらうスタイルで、その身を横たえた。

撩は薄手の毛布をかけ直す。



布越しに感じる香の重さと体温に、ふっと表情が緩む。

左肘はソファーの背もたれにひっかけ、

右手でくしゃりと香の髪の毛に触れた。

小さな頭の形が伝わってくる。

茶色のクセっ毛が愛おしく、しばらく指でからませて遊ぶ。

ついでにさっき撫でた長い睫毛にも、フェザータッチをしてみる。

真っすぐで濁りのない、射抜かれるようなその明るい銅色の瞳は、

今は目蓋の下で休息中。

細く美しいラインの眉に、うっすらと見える睫毛の影、

その目元の美しさにしばし見惚れる。



セスナが突っ込んだ日の夜の逆バージョンに、くすりと思い出が蘇る。

その膝の柔らかさと温かさ、そして自分の髪が撫でられる感触が

どんなに心地良かったことか。

一方で、頭の中では警報が鳴りまくっていた。

寝たフリを装いながら、

香を掻き抱きたい思いと、このままの時間を維持したいという思いが

激しくぶつかり、香への想いが危うく外に飛び出そうになったあの時。



結局、それを悟った翔子には、セスナでの恐怖体験の中、

自分には聞く権利があると、白状させられたが、

その文言も気を失いそうな状況だった故、自分でもあまり記憶が定かでない。

普段だったらごまかすような内容も、

あの膝枕のせいで、

思いの他素直な部分が表に出かかっていたのかもしれないなと、

懐かしい記憶に思いが馳せる。



「俺も一眠りすっか…。」



撩もこの時間仮眠を取ることにした。

髪の毛をいじっていた右手をソファーにかけて、

こめかみにその丸めた拳を当てて頭を預ける。

左腕は毛布の上から香の脇腹に落とし、

見えている左の手首を上から包み込んだ。

細い手首なのに、親指が当たる部分から力強く打つ脈を感じる。



夕べから、香と一緒にベッドで過ごし、

寝るのがもったいなくて、殆ど覚醒していた自分に苦笑する。



己の感情を押し殺していたことが、まるでウソのような情景。

乾期から雨期になって、ひび割れた大地が潤されるように、

自分の持っていた深い渇きや飢えが、全て満たされる。

もっと、早く素直になれば、

お互い苦しい時間も、もっと短かったかもしれない。

だが、もう今は、もしもなど関係はない。

もう、迷う必要はない。揺らぐ必要もない。

今は、ただ

このぬくもりを確かめられれば、それでいい。

そんなことを考えながら、撩もしばしの休息をとった。



*****************************************
(10)につづく。





「膝枕」っていうダイレクトな名詞は英語では見当たらず、
やむを得ずタイトルを「Sofa」にしました。
天野翔子ちゃんの回の膝枕シーン、
その後を悶々と妄想していたのは、
ワタクシだけではあるまいっ!
っんと北条さんって、
「ご想像にお任せします」的な場面の区切りが多くて、
やってくれるぜ…と、折々に感じておりましたが、
当サイトでは、
撩ちゃんの初膝枕をここで使わせて頂きました〜。
目が覚めたら出発です。


【御礼】
いいんでしょうか…、こんなにカウンターがまわってしまって…。
8000Hit、日々このページを開けて下さる全ての方々に
感謝申し上げますっ。
2012.06.12.02:11

え?何でこんな時間に起きてるかって?
へへ、実は今日の午後、中学生の前で職業講話をするもんで、
その準備をしていたのだぁ〜。
どさくさ紛れに、
「おばちゃんが、みんなと同じ年の頃にはこぉ〜んなマンガを読んでたんだよぉ〜。」と
他の作品に紛れ込ませて、CHの完全版を持って見せてこようかと。
平成生まれのローティーンに布教してきますっ。
(なんか目的違うくないか?)


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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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