29-08 Arbeit ?

第29部 Calm Day?

奥多摩湖畔から15日目


(8)Arbeit ? ******************************************************** 2234文字くらい




「残念…、今日も、なし、か…。」



撩と一緒に車で家を出て、

いつも通り伝言板の前で、肩を落として直立不動。

目だけ動かして、隅々まで読み取れる日本語を確認するが

求めている該当情報はなし。

そう言えば、これまで英語で書かれていたことはないわねと、

もしかしたら、

今後XYZ以外の文字が母国語以外という可能性も

ゼロじゃないことを、ちらりと思う。

丁寧に写し取るか、カメラで撮影し現像後に撩に訳してもらうか、

またその時選べる対応を想定しておかねばと、

頭の隅に留めることに。



ふぅと、一息吐き出して、

カジュアルシューズのつま先が、たっと東口出口に向かうが、

はたと動きを止めて、ショルダーバッグの紐をくっと持ち直す。

念のため、怪しい人影や気配がないか、

ざっとあたりを見回してみた。

雑踏が構内に響き、

昼前にもかかわらず、相変わらず人口密度が高い。

特に違和感はなし、と香は撩の待つ場所へ足を早めた。







「なかったわ。

伝言板経由の仕事って、夏以降全く来てないのよね〜。」

助手席に乗り込みながら、報告と愚痴をこぼす香。

橘葉月のそれが最新であったことを思い出す。

「あ、そ…。」

「あっそうって、あんたこのまんま仕事なかったらどうすんのよ!」

「あーん?なんとかなんじゃない?

それにぃ〜、今月ただでさえもボクちゃん働き過ぎだもん。」

キーを回し、エンジンをかければ、

そのまま赤い車は駅前から大通りへ。



「あ…。」



そう言えばと、香は指先を唇に当てて思い返す。

クロイツ戦は、依頼や仕事とは言えなかったが、

大きな事件を一つ解決したことには間違いない。

ファルコンの依頼の補助は、

報酬も入り、これは間違いなく仕事となった。

それに、あれから折々に生活に組み込まれている

自分に対する訓練指導も、

お互いが生きるためという目的のもと、

インストラクターというべきか指導官というべきか、

決してグータラしている時間とは重ねられない

ある意味、仕事のための仕事をしているとも言える撩。



確かにこの2週間は、色々な事案で密度が高い。

撩が、働き過ぎと発言する気持ちも分からなくもないが、

こうも伝言板に何もない日が続くと、

暗号の存在そのものが、完全に忘却されてしまうかもと、

若干不安になってしまう香。



「んー、だ、だからって依頼がないことは、あんまり喜べないわよ。

まぁ、世の中それだけ平和ならいいんだけど、ね。」

と、複雑な表情になりながら、流し目で車窓を流れる風景を追う。

贅沢はできなくても、そこそこ食べていければいい。

救いの手を求める声がなければないで、

収入がゼロということを、そのままにしなければいいのだ。

考えがすぐに切り替わったところで、

おもむろに対策を口に出す。



「年内に仕事入りそうになかったら、

あたしバイトしよっかな…。」

「はぁ???」

撩が素っ頓狂な声をあげて香の方に視線を向けた。

「ほら、来月とかクリスマス商戦で、

配達員や売り子が必要な業種、結構あるのよ。」

香は、今朝の新聞の折り込み広告に入っていた

求人チラシをカサッと取り出す。

スーパーの安売り宣伝と一緒に持ち出して来たものだ。



「ケーキの配達員募集とか、フライドチキンとピザのデリバリーとか、

こっちのデパートは梱包作業の補助とかあるのよ。」

「なぁーんで、そんなもん持ってんだよ。」

外でのバイトと聞いて、心中穏やかではなくなる撩。

「あら、だって、これまでだってさ、

仕事こなくて光熱費払うのどうしようって

厳しかったことが一度や二度じゃないのはあんたも知ってるでしょ?

エロイカとかエレクトラのママに、あんたがツケばかり増やすから、

お店でバイトしないかって誘われたことも、何度もあったのよ。

ちゃんと、いざっていう時の稼ぎ口も情報持っておかないと困るでしょ?」

腕組みをして、早口に説明する香を運転しながらちらりと見やる。

以前ならば、“勝手にしたらぁ?”と

強がって無関心を演じていたが、関係が変わった今、

同じ言葉は出てこない。



自由を奪うつもりはないが、

無用な行動で自分と離れる時間を作らせたくない上に、

不特定多数の目の下に、クリスマスコスチュームを着た香を

晒すことは、全く持って許しがたい。

ましてや、自分の行きつけの店でのバイトなど、

客層が知れているからこそ、させられるワケがねぇーだろ、と

この2週間で、自覚以上に独占欲が急成長している撩にとって、

香がどこぞでアルバイトという選択肢は、

完全シャットアウト。



「んなこと、する必要ねぇーって。」

一応、落ち着いているフリをして口に出してみる。

心の中では、

(だぁーっ!だめだっつーの!そんなん、させられるかってーのっ!)

と本気で叫ぶ自分がいる。

「だ、か、ら、いざとなったらよ!」

チラシをガサガサとしまいながら、まだ対策案を語る香。

「美樹さんからも、かすみちゃんが動けないときは、助けてねって言われてるし。

今度、ビラ配りする時のチラシも増刷しなきゃね。」

かすみの名前が唐突に出て来て、わずかに肩がぴくりと動くが、

家計のことで、頭の中は各種計算中の香はそれに気付かず。



「いざとなったらねぇ…。」



正面に向き直り、小さくつぶやく撩。

右腕を窓枠にひっかけて、片手でハンドルを持つお決まりの姿勢で、

アクセルを踏む。

表情筋は、好きにすれば?という凪の穏やかな容相ではあるも、

胸中、実際にそーゆー話しになったら、

ものによっては全力で阻止せねばと、荒波を水面下で抑えながら、

固く誓う撩であった。



********************************
(9)へつづく。




平成生まれの方に「現像」って通じるのか
ちょっと心配。
中学生ではダメだった…。

香ちゃんのアルバイトシリーズだけでも、
多くのお作が発信されているので、
まとめて読みあさりたい気分です。
(ヤキモキする撩がたまらなく楽しい)

原作中では、XYZを書き残したのは、
殆ど全部が日本語圏の文字と人物だったような。
撩レベルであるならば、
どの国のどの人種からも依頼が入ってもおかしくないと
思いますが、そーゆーのって、
カオリンにナイショの裏シゴト?
こっそりチェックして、消しちゃってるとか。
こーゆーのコネタする時間が欲しい…。


ーーーー2014年01月06日の時事的あとがきーーーーー

って添え書きしておかないと、
タイムラグのある方に、不親切なあとがきもどきなもんで…。

本年最初の本編更新記事にお越し頂きありがとうございます。
西暦の数字も変わってしまい、午年となりました。
拙い未熟なサイトでございますが、
本年もよろしくお願い申し上げます。

今のうちに謝罪という感じですが、
年末から実生活の方が、思った以上に慌ただしくなり、
ここにロクイン出来る時間が、かなり細まってきそうな感じです。
年度内には、色々とケリをつけたいところですが、
頂いた各種メッセージへの反応がさらに遅くなるかもしれません(泣っ)。
カオリンのような人に、家事その他を手伝って欲しいと
本気で思う今日この頃ですが、
色々ともたつくかもしれませんということを
予告&先にお詫びをお伝え致します。

2014年も、CH好きなネットワークが、
さらに楽しく輪を広げていければと思います。
この1年も、
素敵な作品との出会いや
ファンの繋がりが積み重なって行きますように!

【追記】
開夢(はるむ)さんのお部屋新作更新!

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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