29-10 Unaltered

第29部 Calm Day?

奥多摩湖畔から15日目


(10)Unaltered  *************************************************** 2730文字くらい




「なっ…!」




香は、今日はリビングでサンドイッチを食べようと、

一通りのセットを運んできた。

扉の前で広いトレーを片手で持ち直し、

空いた手でドアを開ける。

「りょー、ここで食べ…。」

と近付きながら、

ソファーの長辺側で

仰向けになって転がっている相方をみやれば、

顔にはいつもの愛読書。

その裏表紙から折り込みページがぱらりとはみ出ていた。

洋物かつフルカラーの無修正。

そこで、冒頭の声が出た。



ガラステーブルのそば、

中腰のままトレーを置く直前のスタイルで、

ピキンと固まってしまった香。

目がその写真から離せない。

つま先から赤い目盛りが音を立てて垂直に登っていく。

瞬く間に、見えている皮膚は

ショウジョウトキの羽根色に染め上がった。



布を一切まとっていないその男女の絡み。

モデルばりのコーカソイド系、

男は黒髪で女はショートの茶髪。

その組み合わせだけでも、

否が応でも自分たちを重ねてしまうのに、

印刷されているそのページの構図は、

カメラマン渾身自慢のワンカットと主張するがごとく、

枠一杯を使い切る。

流線型のシワを残した黒い布地を背景に、

自分の膝の上に女を座らせ後ろから抱き込む男。

2人の足は完全開脚状態。

ライティングの効果か、

レンブラントの油絵のような明暗の仕掛けで、

筋肉と骨格の凹凸がはっきりと浮き上がり、

顔の毛穴まで見えるようなピントの合わせ方に、

全ての体毛も汗もきめ細やかに映し出されている。

女はきつい姿勢で振り返り気味に首を反らせ、

男は左肩より覆い被さるよう、女の舌を吸い付きながら、

右腕を背後から伸ばして、左の乳房を言葉通り鷲掴みにし、

左腕は女の脇腹から絡ませて、

陰毛を隠すように無骨な指が覆っている。

女の白い左腕は、男の頭の引き寄せ、

添えられている指は優しさよりも

激しさを含んだ髪の掴み方。

右手では、自分の右の乳房の形を変えるように指先が食い込み、

人差し指と中指の間から、色の濃い乳首が見えている。

そして、全く隠されていないソコは、

明らかにアレが深く“入って”いた。



眉を寄せ、キツく閉じられた瞼に、

苦悶とも恍惚とも言える表情は、

全く見ず知らずの外国人であるにも関わらず、

その写真を見たとたんに、

香の頭の中では、問答無用で自分たちに置き換わってしまった。



ガシャシャンッ ! ! !

「うわっ、な、なんだよっ。」



撩が飛び起きる。

その勢いで、愛読書は床にバササッと落ちていった。

コーヒーやリンゴジュース、

各種サンドイッチに、ヨーグルト、フルーツが乗った

大きめの四角い木製トレーが、

激しい音を立てて、

20センチ上からガラステーブルに着地したと

発信源を見て得心するも、

香は中腰のスタイルで目を見開いたまま、愛読書があった元場所から、

視線を動かせず、全身を真っ赤にしていた。



トレーの中身は、そのままの垂直移動に一部耐えきれず、

やはりコーヒーとジュースは、容器から跳ね散っていたが、

さほどの被害ではない。



「ほえ?」



香の気配にはもちろん気付いていたものの、

グータラしていることをツッコまれるかと思っていた撩。

飛び起きたフリをして、ハンマーを想定したイメージで、

わざと両腕を使いガードをする素振りを見せていた。

が、香の状態は想定外。

トレーの音も、苛立ちを表現した演出かと思っていたら、

どうやら本気で手から意識が離れて落としたものらしいことが、

なんとなく分かった。



「か、かおりしゃん?ど、どったの?」



まだ、まばたきもせずにソファーのコーナーあたりを

凝視したまま、湯気があがっている香に、

撩もまだ状況把握が追いつかない。



「…………。」

「…………。」



アクションがないことに先にしびれを切らしたのは撩。

ひょいと顔を動かして、

香の視線のライン上に割り込んだ。

「なぁ、食わねぇの?」

一応、まだ持ってこられたコーヒーからは湯気が上がっている。

同じく、香からもまだ湯気が上がっている。

視界に侵入してきた、小学生のような表情の撩に、

息を吸うのを忘れていたことを思い出して、

すはっと自発呼吸が再開する香。

瞳に意識が戻ってくる。



「は…。」



小さく漏れた声と同時に、止まった思考が再起動。

「おまぁ、何赤くなってんの?」

撩が腰を浮かせて、香の左のこめかみに向かって腕を伸ばす。

「…っ!」

撩の指がつと触れたとたんに、

香の体が反射で後方に引っ張られた。

しかし、立っていたところはテーブルがある一段下がった床面故、

スリッパから出た右の踵(かかと)が

段差に激しくぶつかってしまった。

バランスを失った体は、物理の法則に従って、

そのまま仰向けに倒れ…、



「きゃああ!」

「おわっとっ!」



たと思ったら、衝撃がこない。

どさっと耳に入った音は自分の体が発したものではないらしい。

後頭部くらい強打するかと体が予測していたが、痛みもなし。

まだ頬が染まったままで、うっすらと目を開けると、

目の前には、自分を覗き込んでいる撩の困惑した顔。



「ったく、おま…、何やってんだよ…。」



フローリングと自分の背中の間には、

撩の右腕が差し込まれ、その手は香の二の腕を包み、

左腕は香の腰を引き寄せていた。



「あ…。」



床との衝突を免れたのは、明らかに撩のとっさの行動で、

自分が守られたからと、理解する香。

どうも自分の感情の受け皿の状態が芳(かんば)しくない。

置かれている状況が分かったとたんに、

まるでフローリングが

熱したフライパンに変わってしまったかと錯覚するくらいに

背中から全身に渡って一気に熱伝導が起きる。

腕の中で、更にぼしゅっと茹で上がる香に、

理由はともかく、たかだかこんな触れ合いでも、

激しい照れや恥ずかしさを見せる香が

愛おしくてしょうがない撩。



くすっと笑って、

左手を熱くなっている香の頬にひたっと触れさせた。

「ひゃあっ!」

びくんと反応する体に、ますますイタズラをしかけたくなる。

「んと、どったの?こーんなに赤くなっちゃって…。」

フローリングの段差部分で、

撩に抱きとめられたまま仰向けになっている香は、

自分の過剰反応に理解が付いていかず、

混乱と照れで神経に高い電圧がかかる。

目をくるくるさせていたら、

撩が、ちゅうぅ〜の準備をしながら、顔を近付けてきた。



しかし、轟音とともに撩が口付けをしたのは、

香ではなく冷たい木目の床だった。

出て来たのは、なぜか331トンハンマー。




「も、もうっ!あ、朝も、ひ、ひ昼も、なななに考えてんのよっ!

ああああたしっ、と、トイレいってくるから、

さ、先に、たたた食べてていいからっ!!!」

バタン!と、壁面が揺れ、

リビングのドアが壊れそうなくらいの勢いで閉められた。






「な、なんで…???」



ハンマーの下で、

逃げた香の気配を追いながら、

挙動不審の原因がまだ分からない撩であった。



********************
(11)につづく。






沸騰の理由は次回で…。
どこかのお部屋で拝見した、撩のコレクションで
こっそり勉強しようとする香のシチュもスキなんですが、
そのうち、学習タイムを作ってやりたいなと。

【もっとじっくりどっぷりしたいのに…】
サイトのログイン、Twitter&FBのログイン、
もっとまとまった時間でかまいたい思いとは裏腹に、
千日紅さんのお言葉を借りれば、まさに「隙間時間」状態での現実逃避。
つまみぐいじゃなくて、しっかり食べてエネルギー補給をしたい…。
(女の子の日が終わって解禁まで耐える撩?)
CHがらみでも、色々先送り事案蓄積中。
少しずつこなしていきたいと思います。
基本、CHに使っている時間は至福なので。
2014.01.20.

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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