29-11 Switch

第29部 Calm Day?

奥多摩湖畔から15日目


(11) Switch ******************************************************* 2215文字くらい




バン!

まずは、洗面所の扉が閉められた。



ジャーッと節約無視で激しく水を流す。

バシャバシャとハイビスカス色になった顔から熱をとろうと

まんべんなく肌に水飛沫を浴びせかけた。



(お、おかしい…、おかしいわよっ…。)

撩じゃなくて、¨自分¨が。

(さ、さっきの、リップクリームだってっ…)



洗面台に両手をついて俯き加減に、排水口を見つめる。

顎からぽたぽたと雫が垂れ、

前髪もうっすらと濡れてしまう。

冷たい水温で、少しだけ肌の温度が落ち着いた。



(りょ、撩の、やーらしい本なんて、そのへんにあるのは普通じゃない!)



じっくりゆっくり眺めたことがある訳ではないが、

リビングに撩の部屋に地下の射撃場にと

露出度の高い冊子やポスターがあるのは当たり前で、

文句を言いながら、片付けていたのは自分であって、

ある程度は触り慣れていて、見慣れていたものだったはず。



時折、

撩と他の女がこんなことをしているのだろうかと、

中身が開かれたままのページを視界の端に捉えるたびに

ちくりと痛みを感じていた。

写されている女性のスタイルの良さに落ち込みながら、

自分は撩の好みでないと、

撩とはこんな関係にはなれるはずがないと、

あり得ない未来として無理矢理情報処理をする。

強制的にそれらを見なかったことにして、

スイッチをオフにし、

掃除をしていたことを思い出す。




(スイッチ…?)




自分の中の切り替え部品がぼんやりと見えた。

確か、天野翔子の依頼の時に、

セスナの機内にそれこそ露出の高い

洋物系の写真を貼りまくったことがあった。

その時は、完全にスイッチオフになっていたのだ。

撩の飛行機恐怖症を治せるかもしれないという

ただ一つの目的のために、

両面テープを使って、せっせと作業をしていた自分を振り返る。

全く気にならなかった各種裸体の数々。

なのに、さっきの写真1枚で一気に自分の頭の中が

夜の仲良しタイムに持って行かれてしまった。



(ま、前は、こ、こんなこと…、なかった、のに…。)



ちょっとした刺激で、スイッチがオンになってしまう。

唇に何かが触れるだけで、

撩の姿を見るだけで、

撩に触れられるだけで、

性交に関わる情報をちらっと見ただけで、

自分の方が、

昼夜問わず撩に抱かれたいと強く願う意識が持ち上がってくる。



「だっ!だめじゃない!こんなんじゃっ!!!」




思わず声が出て、

顔をブンブンと振りながら正面を向いた。

鏡に映った顔は、まだほんのり赤い。

目を合わせられず、また俯き目を伏せる。

撩のことをこれまで散々変態オトコだと罵ってきたが、

まるで自分も、

そんなことばかりを考えている助平と同じではないかと、

この半月で、

変わってしまった感情の受信具合に

自分の意識がついていかない。






「これじゃ…、ほ、ホントに、仕事に差し障りが出る…。」



撩といることが平常心を保てない事態に、

自分を責める香。

「だ、だいたい、いちいち、いちゃつき過ぎなのよ!」

撩にも責任があるんじゃない?と、

ドン!と洗面ボールの縁を叩く。

「い、嫌じゃ、ないんだけど…、さ…。」



折角、切り替えて家事に集中していても、

ことある度に襲撃をしかけてくる相方の起爆剤。

もし、ハンマーを受けてもらえなければ、

たぶん、

そのまま台所でもリビングでもコトが進むことをきっと止められない。

自分がそれを望んでしまいそうで、

どうしてこんなことを思うようになったのか、

激しく困惑する。

決して本気で拒絶したい訳ではない。

撩に触れてもらう

心地よさや気持ちよさ、安心感やぬくもりを知ってしまい、

むしろ、許されるのなら、

ずっと一緒にくっついていたいと脳が欲し、

ホンネの優先順位は十分自覚している。

しかし、タテマエ上はそーゆー訳にはいかないのも分かっている。



あれから2週間、

唐突に変わった環境と関係に、

体も心もまだまだ適応していないと、

自身の順応能力の乏しさを痛感する。

小中高のクラス替えや進学時などに味わった変化への対応は、

それなりに上手く乗り越えていたはずなのに、

男女の関係に関わる事案には、

何もかもが初めて過ぎて、

26年の人生経験が殆ど役に立たない。



「な、慣れて、ない…、せいなの、かな…?」



撩の言動に対する動悸息切れ発汗発熱、

これではまるで、昼のワイドショーか何かで見た

更年期障害ではないかと。

慣れて症状が軽減されるものなら、

積極的に慣れなければとちらりと思うも、

とてもじゃないが、

上手に切り返せるような自分は想像できず、

現実的ではない。



「はぁ〜…、いったいどうしたらいいのよ…。」



洗面台の縁に指をかけたまま、

へなへなと膝を着いてしまった。

こんな状態では、

今リビングに戻って、一緒に昼食をとるなんて、

出来そうにない。

ソファーに座ったら座ったで、

きっと、まるで園児のようなからかい口調で、

なぜ勝手に赤らんでいるのか、しつこく絡んでくるに違いない。

本人も言っていた。

あのオトコにとって、自白させることは得意技の一つ。



いやらしい写真を見て、撩に抱かれたくなりました、

なんて、間違っても言える訳がない。



気分が落ち着くまでは、そばに居れない。

スイッチがまだオンのまま。

「捨てなきゃ…。」

香は撩のコレクションを

生活空間から完全排除しよう、と心に決めた。

自分が慣れないうちは、また同じことが繰り返され、

いざという時に、大きな弊害が出てしまう。

依頼人が宿泊する時のことも考えて、

古紙回収の日を確認しなければと、

赤い顔のまま眉を寄せ、早く体温が下がるのを狭い洗面所で

静かに待つことにした。



********************
(12)につづく。





カオリン、重度のリョウちん依存症へ。
サエバ氏はソレ以上にカオリン中毒。
二人とも互いを欲する重篤なホリック患者として、
むさぼるようにいちゃついて欲しい。

環境教育の業界で学生時代に思ったこと、
色んなスイッチがあって、
それが押されるきっかけが一つあれば十分。
CHにスイッチが入るまでは、
ミニなんてただの赤い車でしかなかったのに…。


ーーーー2014.01.27.の時事お知らせーーーー

【金さんのブログ更新!】
近況報告ありです!

【訂正感謝!】
3ヶ所誤変換発見ありがとうございます!
2014.01.27.20:34

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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