29-13 Game Start

第29部 Calm Day?

奥多摩湖畔から15日目


(13)Game Start **************************************************** 3428文字くらい




まだギクシャクとしている香。

とりあえず、

持って来た食後のコーヒーも飲み終わった。

ちらりと時計を見る。

一息ついたのは、午後1時半過ぎ。



「さて、やるか…。」



その言葉にぴくんと反応した香はソファーの短辺側に、

撩は長辺側に座って、

お互い持っていた白いカップをコトリとガラステーブルに置いた。

「バンダナ持って来れるか?」

「あ、うん。取ってくる。」

ついでに、

持って来たコーヒーセットを片付けて運ぶことに。

さっとキッチンのテーブルにそれらを置けば、

早歩きで客間兼自室に向かう。

タンスの引き出しを開けると、

整えられたスカーフやハンカチ、ハンドタオルが行儀よく並んでいる。

やや厚手でかつ大きめのサイズのバンダナをひょいと選び、

リビングへ急いだ。

綿100%でクリーム色のそれは、使い勝手がいいお気に入り。




「これでいい?」

部屋に入りながら、持って来た物を見せる香は、

まだこれから何をするのか全く想像がついていない。

これを使った止血の方法とかの話しになるのだろうかと、

先が読めないまま布を手渡す。

「オッケー。」

撩は、バンダナを受け取るとパンと広げて、

三角形の二つ折りにした。

「な、何するの?」

ソファーに座った香は不思議そうに撩の手元を見つめる。

「さーて、なんでしょぉ〜?」

と言いながら、さらに折り込んでいき、

5センチ幅まで細く畳んだバンダナの両端をピンと引っ張った。

その作業をするだけでも、無駄のない軽やかな撩の指の動きが、

また香の意識を横道に逸(そ)らせようとする。



(だめだめだめっ!)



香は、ブンブンブンと顔を激しく横に振る。

「な、なんだぁ?」

「なっ、なんでもない!で、い、いい一体何するのよ?」

「こーするの。」

「 ! ! ! 」

どもりながら向き直った時には、

すでにソファーから撩の腰が浮き、

自分に接近してくる動きが見えた。

その刹那、すぐに視界が遮られる。

「なっ!何よこれっ?」

「メ・カ・ク・シ」

そう言いながら、

撩は香の後ろ頭に適度なキツさでくっとバンダナを結んだ。

その指をそのまま香の髪に埋め、

隣に密着して腰を降ろす。

香の左半身に撩の熱エネルギーが服越しにじわりと伝導する。



「ちょーっと実験してみよっかなーと思ってな…。」

「じ、実験?」

ごくりと喉が動いた。

「おまぁが、どこまで気配を読めるか、そいつをちょっと調べてみよっかなぁーと。」

口調は楽しそうに、

まるでゲームをするかのような言いぶりだが、

これは訓練、気を抜くなとその裏の声が心に届く。



「何を…、すれば、いいの?」

「別に難しいことは何にもないさ。ただ、ここで待ってればいい。」

「え?ここに?」

見えないが声がする方に思わず顔を向けた。

「そ。」

撩は、香の頭のてっぺんに置いていた右手を、

ゆっくりとうなじ経由で右肩へと移動させ、くっと引き寄せる。

「ぁ…。」

周囲が見えない不安と、撩の温度を感じる照れが混じり合い、

小さな声しか出なかった。



「俺がこの部屋を出た後、感じた変化を教えてくれるだけでいい。」



平静を装った返事の向こうには、

目隠しをされている分、

かえって美しい鼻筋や、コーヒーで少し湿り気を保った

色形の申し分ない唇が余計に目立ち、

このまま食べてしまいたくなる欲求が膨張中。

反射的に動いた左手を香の右頬に添えると、

親指をつっと香の下唇に触れさせる。

「だ!だめっ!」

突然、香が急に大きな声を出した。

撩の左腕を掴み頬から離そうとする明らかな抵抗。

「お?」

「あ…、そ、その、…集中、できなくなくなる、から…。」



だから、触らないでと、言いたかった言葉は、

恥ずかしさで、続かなかった。

そこに触れられると、

自分の中の何かのスイッチが入ってしまう。

まだ言葉では表現できないその感覚を

さっきなんとか沈めようとしていたばかり。

ソレをここで台頭させるワケにはいかないと、

必要最低限の言葉でなんとか返す。



ふっと撩の小さく吐かれる息の音が聞こえた。

「ま、確かにボキちゃんが、集中力を散漫にさせるワケにはいかねぇーよな。」

くしゃっと香のくせ毛を軽く掻き回した。

それだけでも、

まるで気持ちを伝え合っていない初恋の相手から触れられるような

トキメキ感がくっと胸を締め付ける。

すでに、集中力を掻き回しているじゃない!と文句を言いたくなるが、

これもまだ撩に触れられることに慣れていない

自分の未熟さかと、自身を叱咤しながら

なんとか気を引き締め直す。



「じゃあ、始めっかな。」

「ね、ねぇ、ま、待つだけ?」

ルールの説明を極簡単に終えたが、まだ撩は隣りにくっついたままで

香の頭から手を離そうとしない。

「そ。俺がいいと言うまでは目隠しもとっちゃダメ〜。

何か感じたら、声を出して教えてくれればそれでいい。」

「え?それだけ?」

「そんだけ。」

「は、反撃とかしなくていいの?」

また撩の声のする方に顔が向いてしまうが、当然見えない。

その困惑する目隠しをされた香の姿は、

いつぞや肛門裂傷を負った時に、

薬を付ける付けないで騒いでいたあのシーンも思い出させてしまう。

撩の方が、

吸い付きたくなる衝動を抑えるのが辛くなってきた。

早いとこスタートしないと、このままソファーに押し倒しかねない。



「反撃が必要な訓練は、また別の時にすっから。」

「う…、わ、分かった。」

香の緊張感が触れている全ての部分から伝わってきた。

「で、でも!あ、あああんたが、ヘンなことすると、

あ、あたし…、ハンマー出すの止められない、と思う…。」

自分で体の強張りを少しでも取ろうと、防御反応的に会話を続けようとする。

またくしゃっと髪の房が優しく掴まれる。

「別に出してもかまわねぇーが、

その前にちゃんと気付くか、しっかり集中してろよ。」

からかい口調で頭の上から聞こえた返事に、

少しだけむっと来るが、これは訓練と言われた通り、

この課題を素直に受けることにする。

「う、うん…、分かった…。で、でも!

……あんたが完全に気配消したら、たぶん全然分かんないよ?」

「心配すんな、そのへんは考えてあっから。」

撩がすっと立ち上がる動きを体の右側から感じた。

急に温かさが遠のき、

とたんに淋しさに似た感覚が胸に流れ込んでくる。



「んじゃねぇ〜。」



そう短く言い残すと、撩はスリッパの音を立ててパタパタと、

居間の出入り口に向かった。

開けられたドアは、閉める音はなし。

撩の足音は、廊下に出たとたんに、

まるで空中を歩き始めたのかと思うくらいに、

消音になり、香は進行方向さえも掴めなかった。

ただ、ソファーに座って耳をすませて感じたことは、

リビングのドアは開いたままのはず、と

閉じられる音がしなかったことを確信していた。



目隠しをされたまま、すっと左手を伸ばしてみる。

さっきまで撩が座っていた場所が、ほんのりと温かみを残す。

ただそこに触れただけなのに、じわっと胸骨あたりが熱くなった。




「だ、だめ!集中しなきゃ!」



一時的に視覚を奪われている香。

残った感覚器官をフル活用せねばと、

鼻の通りをすんと吸って確認し、

耳にはベランダの外から雑踏がかすかに届くことをチェックし、

腕まくりをして、肌で感じる部分を増やした。



緊張しすぎると、かえって色々と気付きにくくなる。

適度にリラックスをしておいたほうがいいだろうと、

香は、ふぅっとソファーの背もたれに少しだけ体重を預けて、

指示通り¨その時¨を待つことにした。



*********************************
(14)につづく。







目隠し実験、
一度私もあるプログラムで体験しましたが、
普段いかに視力に頼っているかを痛感です。
原作に冴羽家にアイマスクがあったかよく覚えていないのですが、
二人が使っている場面は思い当たらず。
そのうち買わせるか…。
というワケで、ゲームスタート〜。


【2014.02.10.の一言】
みなさんから頂いたサイト情報、
現在、整理中&ご挨拶まわり中です。
もう少しお待ち下さ〜い。

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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