04-03 University Hospital (side Ryo)

第4部 Report

奥多摩翌日の夕方から夜


(3)University Hospital (Ryo side) ************************************************1949文字くらい




「ほれ。」

助手席のドアを開ける。

「あ、ありがと。……で、でも、

まだ、なんかすっごい違和感あるなぁ。撩に開けてもらうなんて。」

俺は、後ろのトランクにバケツをしまって、ハッチをバンと閉めた。

まぁ、そりゃそうだな。

エスコートされることそのものに縁遠かったのだから、

しかたないわな。



「たまにはって言ったろ。」

運転席に乗り込みながら言ってみる。

赤い顔をして困惑した表情を一瞬見せたものの、

こめかみを指で押さえながら、

「……うーん。」

とまだ納得できていない。

これ以上、突っ込むことは止めにしておいて、

次の予定を提案した。

「教授んちに行ってみっか。」

まだ夕食までには時間がある。

昨日、教会で別れてから、その後の美樹ちゃんの様子も気になるし、

顔だけ出しておくかと、進行方向を決めた。



「うん、みんないるかしら?」

エンジンをかけ、外国人墓地をあとにする。

「うーん、式の時、かずえちゃん、

何かの実験をさしおいて奥多摩に来たって言ってたからなぁ。」

「もしかしたら、結構忙しいかも?」

「まぁ、とにかく行ってみっぺ。」



教授とかずえちゃんのサポートで、これまでも何度も世話になっているが、

医療設備が整っているとは言え、

全治数週間の患者をつきっきりで見るのは、

研究業で多忙なかずえ君には、大変かもしれない。

海原戦の後、俺らが大勢で押しかけた時は、

美樹ちゃんも動けたし、かずえちゃんも丁度農閑期だったらしいから、

さほど大変さはなかったようだが。



「手ぶらでいいのかな?」

突然の予定で、仮にもお見舞いとも言うべき動きに、

花も果物も何もない。

「どっか寄ってくか?」

「うん、そのほうがいいかも。」

再び買い物に寄る場所を探すことに。

「じゃあ…、この先に大学病院があるから、

そこの売店なら果物もお菓子もお見舞い用に売っているはずだわ。」

香は、現在地と教授宅との間で、

立ち寄れそうな店を頭の中ですぐに思い描けたようだ。

「了解。」



ちょっとスピードを速めて、経由地へと急ぎながら、

香の思考の回転の良さに感心する。

この情報は、自分だけでは思いつかなかった。

「おまぁ、あの病院行ったことあんのか?」

「前にね、高校の時の友達が入院して、お見舞いに行ったことがあるの。」

「ふーん。」

その友達が男か女か、即気になった俺。

声色に出ちまったらしい。

「……女友達よ。」

「へ?」

自分の思っていたことがバレたような返答に、

思わず、すっとんきょうな声がでる。

「入院したのは仲のよかった女の子。」

「……かわいこちゃんか?」

「柔道部の部長だったわ。」

「……な、なるほど。」

んじゃ、ケガで入院ってとこか。



“ あんたじゃないんだから余計な心配はしなくてもいいの ”



幻聴が聞こえたのは、香の遠回しのメッセージか。

心の靄が取れた。

香の一言一言に、こうも波打つ己の心に苦笑する。



病院のロータリーに入ると、端に寄せ駐車した。

「すぐ戻ってくるから。」

香はそう言い残して、目的地に向かった。



香の説明によると、

そこは入院患者用の品々に加えて、職員用の飲食関係も充実し、

夜勤や付き添い人のために、営業時間もやや長い。

目的のモノちゃんと選べるようになっていたようだ。

あまりゆっくり選択する時間もないと、手近な花と果物のセットを

手早く購入してきたという次第。



「っはぁ、お、おまたせ…。」

小走りでクーパーに戻ってきた香は、やや息切れ。

「ったく、調子悪い時に無理すんじゃねぇって。」

俺は、車から出て花と果物籠を受け取り、後部座席へ置いた。

香は、助手席に座りながら、

「調子悪くないってば。」

と、俺の言葉を否定するも、やっぱりどこか動き辛いのは否めない。

「んじゃ、さっさと行くぞ。」

クーパーをロータリーから脱出させる。

必要最低限で寄り道が終わり、教授宅へ進路を走る。



「ねぇ、撩。」

「あん?」

「後ろの花束、ケガしている人に相応しくないものとか混じってないよね。」

香がそこまで気にしていることに、やや驚く。

花一つでも、相手を不快にさせる要素がないようにしたい配慮に、

他人を気遣いすぎる性格をまた垣間見る。



「あー、ちょっと待ってろ。」

と、ちらと後部座席を振り返り種類を確認する。

花言葉には、「絶望」とか「死」とかの意味を持たされたモノもあるので、

確かにケガをしている入院患者には、間違いでも贈ってはならないだろう。

この花束は……、ふん、問題なさそうだな。

「大丈夫だ、全く問題なし。」

「ほんとに?よかった。」

「撩ちゃんのメモリーに間違いはなし!」

ぷっと香が笑う。

「ちょっと急ぐぞ。」

そう、俺はおまぁが笑ってる顔を見ていたいんだよ。

思わず、目にしたその微笑みに、余裕がなくなるのを悟られないよう、

ギアを変え、スピードをあげた。


**********************
(4)につづく。





香ちゃんが買ったお花は、
みなさんのご想像にお任せしまーす。
しっかし、2度も花の買い物をさせるのも、
読み手の方も慌ただしく感じちゃうので、
省略しようか迷いましたが、
手ぶらでは行けないと強く思う香の思いを優先しちゃいました。
でも、教授の屋敷ってどのへんなんだろ?


【御礼!】
ぬぉ!9000Hitを越えてしまっとるっ!
こんな妄想の垂れ流しにお付き合い頂き本当に有り難い限りです〜。
いったい、いつ奥多摩の翌日が終わるんだぁ〜という
超だらだらモードですが、頑張って3週間分続けたいと思いますぅ〜。
取り急ぎ感謝!!!
2012.06.19.23:00




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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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