29-22 Gift From Kasumi

第29部 Calm Day?

奥多摩湖畔から15日目



(22) Gift From Kasumi  *********************************** 2555文字くらい




ジャー!ゴボゴボボボ…



ガチャッと開いたトイレから出て来たのは、冴羽社長。

「あー、すっきりぃ。」

ご機嫌にそうつぶやけば、

パタパタと廊下を歩く。

目指す場所は非常階段。




用足しする前に、

香の部屋兼客間に入り毛布を調達。

あれからソファーでそのままお昼寝タイムになってしまった相方に、

そっとくるませる。

自覚無自覚含めて心身各種の疲れが蓄積中のはず。

奥多摩から帰宅後、間髪入れず教授宅へ通い、

訓練も日課となり、

昨日までは慣れない山中でのビバークを体験し、

あっという間の2週間の中で、

一体何度撩と身を重ねたのか。

両手では足りない回数に、

わずかながら申し訳なさを感じながら、

毛布を持って来た男は、香の髪の中のそっと指を差し込んだ。



「メシまでは休んでろ…。」



そう言い残して、静かにリビングを出れば、

廁経由でかすみが言い残したくだんの場所に向かうことに。

1階駐車場からではなく、

外付けの非常階段から5階に来るように言い渡した通り、

かすみはそこからアパート内で合流。

侵入者に反応するトラップは

撩がそこだけオフにしていた。

辿り着いた非常口の扉の前に立て掛けてあるものが目に入る。




「これか…。」




香が花屋さんのイメージが云々と言っていたことの謎が解けた。

花の香りがかすかに漂っていたのは撩も気付いてはいたが、

注意事項を言い渡していたので、

わざわざ匂いをつけてくることはないだろうと、

アパートに来るまでの間に、

利用した電車や立ち寄った店舗で連れて来た臭気かと思っていた。



「油断したな、かすみちゃん。」



かさりとその置き逃げされたモノを拾い上げる。

店任せではなく、

きっとかすみ本人のアレンジと思われる華やかな演出。

蕾の状態のもあれば、開きかけ、全開、と

各ステージが様々に混じった花弁は、

全部で5色、各5本ずつ。

水色の不織布とポリプロピレン、

クリーム色のリボンで可愛らしくラッピングされた、

赤、白、オレンジ、ピンク、黄色と暖色系のバラの花束。



色ごとに、咲き具合ごとに、国ごとに違う花言葉は、

もはや言ったもん勝ちの世界。

認知度の高いものだけは押さえていはいるものの、

ここまで混ぜ込まれたら、

この花束に込められている裏のメッセージは絞り込めない。



「ま、お祝いっつーことで…。」



狭い空間にローズ系の芳香が漂う。

撩は、左手で花束を逆さにして持ち直し、

右手で頭をがしがしとかきながら、

通路を戻ることに。

この花をどうやって香に見せるのがベストか、

まずは置き場所から悩むことに。



「どーすっかな…。」




今、リビングに行ってテーブルの上に置くパターン。

(休んでる香をわざわざ起して教えるのもなぁ…)



キッチンのシンクに浸け置きするパターン。

(んー、切り口きんのとかめんどくせぇし…)



花瓶を出してキッチンに飾るパターン。

(だぁー!俺が花仕事ってあわねぇしっ)



フラワーアレンジメントのスキルとセンスがないワケではないが、

どこかこっ恥ずかしい思いがある。

このボリュームだとダイニングテーブルの真ん中に置けば、

配膳に支障が出るだろうし、

やはりリビングのソファーの裏の物置あたりが適当かと

そんなことを考えていたら、

あっという間にキッチンまで戻って来た。



廊下の真ん中で立ち止まって、

花束を逆さに持ったまま、

左右にちらりちらりと視線を往復させる。

最後にバラの束を見やれば、

ふっとお決まりの細い息を出した。



「ま、たまには、いっか…。」



撩は、キッチンにずいっと入れば、

一度テーブルの上に花束を仮置きして、

倉庫に向かった。

以前、西九条沙羅をボディーガードした時に、

立てこもりに使われた場所。

ここに普段あまり出番のない花瓶がしまってある。



「こいつでいっか…。」



そう選択肢もない故、

大きさで選んだ白い四角柱の陶器を

ひょいっと持ち上げる。

これなら20本オーバーの花卉も十分飾れるだろうと、

撩は、倉庫の扉をパタンと閉めた。



「さてと、やりますかね…。」


花瓶に水を勢いよく注ぎ、すぐに蛇口を止めれば、

適度な水量がたまり、

それをゴトリと白木のテーブルの上に置いた。

剪定ばさみを探すのが面倒くさかったので、

引き出しを開けて探し当てた

調理ばさみをチャキーンと握って、

冴羽流花道スタート。



するりとリボンを解けば、

透明なポリプロピレンにツーっとハサミを滑らせる。

手早く茎の切り口を落とし、

適度に葉も間引きして、

ちゃっちゃかと形を整えつつ、

頭の中では、この花をちょっとひねったことに使えないかと、

再び複数のパターンをはじき出す。



これが、隣りの堕天使からの花束だったら、

即可燃ゴミにしたくなるが、

協力要請に応じてくれたかすみからの進呈品なら

気分もまた違って来る。



「ぐふっ!いーこと思いついちゃった!」



表情が崩れたことは言うまでもない。

ふふんと鼻を鳴らしながら花をいじるスイーパー。

この緩んだ顔を香が見れば、

きっと『ろくでもないことを考えているんでしょ!』

ツッコミが入ること間違いなし。

そんなことはおかまいなく、

このミスマッチを楽しみながら、

さっさかとオフホワイトの花瓶へバラを差していく。




「へへ、こんなんでいっか。」



鼻先をぴっと親指で軽くこする撩。

短時間で仕上がった飾り付けに満足し、

周囲をてきぱきと片付ければ、

なぜか、2本だけ咲き加減の違うバラをテーブルに取り置いている。




「今日明日ですぐに枯れるこたぁないだろ。」



くすっと笑みを漏らしながら、

姉妹のような成長の違いのある花を拾い上げ、鼻翼に寄せる。



「意外と濃いな…。」



開く前には、まだそんなに匂いを漂わせないと思っていたが、

そこそこ存在感のある香り。

仕上がった花瓶を残して、

一度キッチンから出て行った撩の手には2輪の花。

数分でまた戻ってきたが、その手には文字通り手ぶら。



「ふふーん♪楽しみ楽しみっ!」



ご機嫌モードで作品を持ちリビングにそっと入れば、

まだ香はソファーで意識不明。

音を立てずに、

花瓶を長辺側の背もたれの向こうに置いてみれば、

なかなか感じがいいことに、

(さすがリョウちゃん、いいセンスじゃん。)

と心の中で自分を褒めてみる。




(さてと、警備システムをオンにしてきますかね。)




撩は、すーすーと寝息を立てている香の顔を覗き込むと、

得意技の起さないほっぺちゅうを残して、

再び無音でリビングを後にした。



*****************************
(23)へつづく。






すいません。
撩が花いじるワケないじゃんという方も
いらっしゃるかと思いますが、させてしまいました〜。
(原作中女装を何回かしている撩なので着付けもオッケーなら花もいけるかも?)


頂いたご質問の一つ。
Q:「あとがき」はいつ書いているのですか?
A:もうバラバラです…。

更新日直前の事もあれば、
オリジナル原稿が生きている場合は、
1年前、2年前のあとがきだったり、
数週間前だったりと…。
時事的ネタは、更新日が近い時ですが、
うっかり、あとがきナッシングの時も複数回やらかしていますので、
そのような時は、したくないのにサイトネグレクトかもと。

今回は、更新時間直前の書き込みです。
はやくのんびりCH風呂に浸かりたい…。

[修正…]
ごめんなさいっ!
取り置いた2本のバラの表記を変えさせて頂きましたっ。
矛盾が生じたことに今気付いた…(><)。
2014_06_25

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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