29-30 What Are You Thinking ?

第29部 Calm Day?

奥多摩湖畔から15日目



(30)What Are You Thinking ? ************************** 3747文字くらい



「えええ!?な、なんで?中にいるの???」



見えないままで、

思わずドアノブをがちゃりとまわした。

「はぁーい、おつかれさぁーん♪ まだ目隠しは取るなよ。」

「ちょ、ちょっと!あんた、いつの間に部屋に入ったのよ!」

音も気配も、

さっきキッチンで気付いた石けんシャンプーの匂いも

全くしなかったのに、

今、この部屋に入ったら、

嗅ぎ慣れた衛生用品の香りを感じた。

それに加えて、

この部屋では体験したことのない芳香もうっすらと鼻をくすぐる。



「ほれ、そのまま真っすぐ歩いてこいよ。」



匂いが気になっていたところで聞こえて来た撩の声。

まるでスイカ割りの誘導を思わせる。

たぶん、ベッドのそばか上にいるような位置から

声をかけられているような気がした。



「ちょ、ちょっと…、ここで訓練って、何すんのよ。」

香は、まだドアノブから手を離せない。

「へへ…、ま、暗闇体験講座ってとこ?」

「……あ、あんた、ヘンなこと考えてるでしょ。」

「うんにゃ、至ってマジメなことさ。」

ぎしっとベッドのスプリングが鳴った。

たぶん撩が立ち上がって発せられた音だと、

香は読む。

「視力を奪われた時、他の感覚器官をいかにより研ぎすませるか、

その疑似体験特別授業っつぅーことで。」

もっともらしい言葉を並べる相方の口調に、

疑いの気は晴れない。



「……それ、昼間やったじゃない。それに、なんでココなのよ。」



訝しがる香は、目隠しをされたまま、

まだその場から動こうとしない。

「そりゃ、ココのほうがいろいろ都合がいいしな。」

「わっ。」

その声は、耳のそば直近で囁かれ、

同時に羽織っていたカーディガンが、

肩からふわりと浮き布地の動きとともに、

腕が引っ張られ、するりと脱がされてしまった。

この時も、撩は直接香に触れないでことを成す。

「なっ!なにすんのよ!寒いじゃない!」

「じゃあ、さっさとベッドに行きましょう〜♪」

ぱさっと聞こえたのは、上着がどこかに置かれた音。

パタンと聞こえたのは、ドアが閉められた音。

まだ疑問符が取れない香は、

両腕をさすりながら訴える。

「だっ、だから!な、なんでベッドなの?

あ、あ、あんた、訓練って言ってたじゃないっ!」

「んー?だ、か、ら、ココで出来る訓練だって。」

その声は、また自分から離れてベッドそばから発せられた。



「こいよ。」



ついふらふらと言われた通りに動きたくなる、

小音の掠れた甘い声。

しかし、状況が異常だ。

なんで目隠ししたままで、寝床に行かねばならないのか、

これで訓練と銘打って一体撩が何を考えているのか、

香の警戒心が膨張する。



「ご、護身術とかじゃないの?」

「それはまた今度な。」

「じゃ、じゃあ、一体何するのよ!」

「来れば分かるさ。」

両腕を抱き込んだまま、まだ動こうとしない香。



「あ、あんた、何考えてんのよ…。」

「んー、香ちゃんのための、楽しい訓練タイム♡」

香は、バンダナを目に巻かれた状態では、

どうしてもベッドに行く気にはなれない。

「これ、取りたい…。目を閉じてればいいんでしょ?」

「うんにゃ、ちゃんと付けてろ。」

「な、なんか、やだぁ…。」

「言っただろ?感覚を磨くための訓練だって。」



こんなことはもちろん初めてで、

この後の訓練という中身の展開が全く見えない。

「い、いつ外せるの?これ…。」

「ボクちゃんがいいって言うまで。

つーか、自分じゃきっと外せないと思うぜ。」

捻りを加えたバンダナの結び方は、

撩本人じゃないとほどけない小技が仕込んである。



「へ、ヘンなこと、しない?」

「俺を信じろっつーの。」

「あ、あんたさぁー、その台詞、全然説得力ないんだけど…。」



この2週間、幾度か訓練タイムを重ねてきたが、

多くの場合が、

そのまま“いちゃつきタイム”に持っていかれ、

ハンマーで強制的に軌道修正をしたこと複数回。

しかも、今回は撩の部屋。

もう、これはこのままいつものような展開になってしまう未来が

容易に想像された。

ただ、視力を奪われたまま、そんな流れになることは、

是が非でも拒否したい。

しかし、それを訴える文言をこのタイミングで言うことも出来ず、

表現の仕方も分からずに、

香は、ただ「うー…」と小さく唸るばかり。

そうこうしている間にも、

一枚衣類を失ってから、ますます足元から体が冷えてくる。



「ほれ、まずはベッドまでどれくらいあるか、

ちゃんと測ってから来てみろよ。」

きっと、にやつきながら言っている、

そう思わせるイントネーションに、香は少しだけむっとした。

「わ、分かったわよっ!い、行けばいいんでしょっ!行けばっ!」

これ以上抵抗しても、

恐らく状況は変わらないと見た香は、

半ばやけくそになって、見えない先に歩みを進めた。

何かよからぬことがあったら、またハンマーが頼りかと、

いつでも出動させられる体勢を保ちながら、

だいたい距離はこれくらいかと、

見えている時のイメージでベッドに近寄って行く。

が、思いの外近かった。



そろそろ減速して、すり足で歩いて、

ベッドの端を探そうかと思っていたところに、

目的地に強く接触して、バランスを崩してしまう。

「わわっ。」

なんとか両手を前に突き出して、転倒は免れた。

ベッドがぎしっと音をたて、

香の体重の一部を受けていることを訴える。

「あ、あれ?こんなに近かったっけ?」

またしても自分の感覚と実際の距離に差があったことを

小さく悔やむ。

出発点の問題だったのか、

見えなくてもつい出入り口のある後方に顔を向けた。



「んじゃぁー、ヨコになってもらおっかなぁー。」



その声にどきりとして、

発信源に振り向くがもちろん視界は完全ブラック。

「ま、待ってよ。な、な、なんで、横になんなきゃいけないの?」

「んー?集中力を高めるために決まってんだろ。」

「も、もう!や、やっぱりヘンよ!」

香は、上体を起こすとふくらはぎをベッドの端に触れさせて

寝床に背を向けた。

顔は撩のほうに正しく向いている。

しかし、その頬は熱を持ってじわじわと赤くなり始めた。



もしこのまま撩に触れられたら、

何かトンデモナイことになりそうと、

未体験ゾーンに対する警報が香の心の中で鳴りまくる。



「これから、ボクちゃんがいくつか質問すっから、

ちゃんと答えられたら外してやるよ。」

「な、なによそれ!」

香は、撩の位置を読もうとする。

たぶんチェストのところに寄りかかっているんじゃないかと、

イメージした。

「見えずにどこまで判断できるか、確かめてみんの。」

「うー…。」

明らかな抵抗を示している香の様子が愛らしくて、

思わず手が伸びそうになる撩。

静かに抑えて、引き続き説き伏せる。



「さっさと外したいんだろ?」



香は、再度自分の両腕を抱き込んで、わずかに俯く。

「ま、簡単なテストみたいなもんだから、そんなにキンチョーすんなって。」

「テスト?」

「ほれ、仰向け。手は枕。」

香の困惑をよそに、至って当然のように指示を出す撩。

香は、正直今すぐに自分の部屋に逃げたい面持ちだが、

逃亡は色んな意味で無駄だろうと、

いとも簡単に捕獲される自分が明瞭に見える。

はぁー…と大きくため息をつくと、

一拍置いてすっと息を吸い込んだ。



「も、もうっ、し、知らないっ!やればいいんでしょっ!やればっ!」



とにかくこの目隠しを一刻も早く取り去りたい、

もう訓練だろうがテストだろうが、どうにでもなれ!と

やけっぱち状態で観念する。

そのまま、

いやいやながらもゆっくりとベッドの端に腰を下ろした香は、

ぎしっと当然発するきしみの音にビクンとしてしまう。

左手を伸ばして枕の場所を確かめれば、

のろのろと窓側に頭を向けた。

自分が動く度に、

それに合わせてスプリングが反応する。

この時点で、撩はベッドの上にはいないことを確信しながら、

ソファー側にむかってやや右寄りに

ゆっくりと体を横たえた。

視覚をシャットアウトされた状態で、

撩のベッドにいること自体が異様だと、

これから、何があるのか当然心は穏やかでない。



「手は枕。」

同じことを繰り返された。

「あ、ご、ごめん。」

なぜか謝りながら、自分の顔の両サイドに手を持って来て、

くっと枕の端に指を添えた。

撩はようやくここまで誘導できたと、内心喜々としているが

それをおくびにも出さずに、

いたって平静な口調で続けた。



「んじゃ、やるか。」

「は、早く終わらせてよ!」

目隠しを一秒でも早く取り去りたい一心で訴える。

「そう焦るなって。じゃあ、まず第一問な。」

撩は、そう言うと

ベッドボードの上に置いてある観葉植物のそばに手を伸ばした。

ギシッという音と共に、香の左側が大きく沈む。

撩がそこに腰を降ろしたイメージがぼんやりと浮かぶ。

それだけで、また心臓がドキンと跳ねてしまったのに、

今度は、香の顔の右側から控えめのギ…という音がした。

「え?」

脳が状況を読み取ろうとする。

おそらく、撩は左手を自分の右手側について上半身を支え、

上から覗き込まれているのではと。

同時に、

くんとどこかで嗅いだ香水のような芳香を

嗅覚が捉える。

いつ嗅いだんだったかと思っていたら、

いきなり、ふーっと細い息を額に向かって吹き付けられた。

「ひゃあ!な、なによ!」

真ん中だけあらわになった香のおでこに、

ひんやりと柔らかいものがつと触れた。

「な、なに?」

「当ててみ?」



もうこれが訓練の質疑応答に入っているのかと、

香はこくりと喉を小さく鳴らした。



*****************************
(31)へつづく。







肛門裂傷の時の目隠しカオリンと
被らせて頂ければと…。

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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