29-32 Decoration

第29部 Calm Day?

奥多摩湖畔から15日目



(32)Decoration ********************************************************* 3352文字くらい



「ひゃあっ!」



次のアクションで、

ぺろんとめくり上げられた黒のタンクトップから、

胸骨より下の腹部が露出させられた。

美しく引き締まった腹筋に走る

浅い縦の溝がくっと引きつる。

これはさすがに手が動いてしまった。



「なっ、なにすんのよっ!」



両腕がまだ布地を被っている胸部を慌てて隠す。

「訓練だって、何回言わせんだよ。」

「ここここんなの訓練なんかじゃないわよっ!」

「いいから手ぇどけろって。最終問題だ。」

「やーんっ!」

香は、身をよじってソファーに向かって横向きになった。

「おまぁなぁ、何もかも見せ合っているくせに、

今更腹ぁ隠しても仕様がないだろ?」

撩の左手が香の顔の右横で、ぎしっと沈む。



「ややややっぱりヘンよ!こんなんで、ななな何の訓練するって言うのよ!」

「言っただろ?感覚を磨く為の訓練だって。」



甘く掠れたゆっくりとした口調に、

本能の部分では

“ はい、わかりました ”とつい言ってしまいそうになるが、

もちろんタテマエの香は納得していない。

「や、やだっ!」

「ラストゲート。これをクリア出来れば終了!」

「さ、最後?」

胸を隠したまま、小さな声で尋ねる。

目隠しされていても、自ずと顔が撩の方を向いてしまう。



「ま、やっておいて損はしないはずだぜ。」



今度は、香の左側がぎしっと音を立てた。

伝わったたわみ具合から、撩が少しだけ腰の位置をずらしたように感じた。

「は、恥ずかしいよ…。」

いつもながらの真っ赤な顔、

バンダナの下では潤みがちの目にきゅっと力が入る。

「部屋は暗いまんまだから気にすんな。」

「や、やんなきゃ、ダメ…?」

「だめ。」

その言葉と左頬に受けた感触が重なった。

「っ…。」

皮膚で感じたそれは、

さきの花の質と似ているが明らかにボリュームが違う。



(ひ、開ききってる?)



香りもより強いと、花卉の差異に気をとられていたら、

またふっと花が浮き、くいっとパジャマの端が引っ張られた。

びくっとする香をよそに、落ち着き払った口調で説明が続く。

「最初は、背中より腹側の方が分かりやすいと思うぜ。」

「はい?」

「第4問は、花びらの数をどこまで捉えることができるか、

それが今回のラストクエスチョン。」

「は…?」

横向きになっていた香の体が、わずかに撩の方へ向きなおる。

「いいから、そのまんま腹出してろ。」

またパジャマの裾をくっと摘まれ、

体の向きを変えさせられた。

このまま、タンクトップをたくし上げられたら危険だと、

自分を抱き込んだ腕は現状維持で再度仰向けになる。

丸見えとなっている白い鳩尾(みぞおち)に

ひんやりと花が当てられた。

「っ…。」

つーっと真っすぐ下降して臍下まで辿ると、

花弁がじんわりと臍を中心に円を描き始める。



「うぅー…、く、くすぐったい…。」

「集中し過ぎると、かえってカウント出来なくなるぜ。」

「え?ど、どういうこと?」

花が自分の肌から離れたらしく、

服以外に体に触れているものの存在がいっさいなくなった。

撩はくすりと薄く笑うと、

バラを口元につと寄せて、最も外側の大きな花弁を1枚、

ぴっと唇で挟み取った。

不安がる様が愛おしく、細めた瞳で香を見下ろしながら、

ふっとオレンジ色の切片を舞わせれば、

それは、ひらっと浅くZの軌道を描いて、

香の臍の脇にひたっと落ちた。



「え?こ、これ…、花びら?」



水滴が落ちた感覚とは明らかに違う。

流れずに、そこに留まっていることがちゃんと分かる。

「2枚目。」

今度は、花茎をくわえて固定させると、

指でまた外周の花弁を摘まみ取り、

みぞおちを目指してそっと散らせる。



「……あ。」



肌で、そのわずかながらの重さを捉えた香、

これなら、何とか分かるかもしれないと、

今、腹部に乗っている2枚の花びらの位置を再確認する。



香が腹式呼吸をする度に、

ごく浅く上下する花の切片は、

白い肌により映えて、バレンシアオレンジの色を思わせる。

綺麗だ、とその肌に顔を埋めてしまいたい衝動を

静かに抑えつつ、左手は香の左脇についたまま、

撩は、くわえていた花に指を伸ばして花頭を鷲掴みし、

組織を痛めないよう器用にむしり取った。

ぷっと残った茎をベッド脇に吹き飛ばすと、

またぎしっと少し体重を移動させる。

すっと腕を動かせば、

撩の手の中から、3枚目の花びらがつと香に落ちた。

1枚目とわずかに重なり、臍が隠れてしまう。



「ん…、い、今、落ちてきた?」



自信なさげに3枚目の花びらが認知されるも、

なんで撩とこんなことをしているんだかと、

訓練と連発する相方の思考にまだ疑いが晴れない。

コレって本当に訓練なのぉ?はたから見てもおかしいでしょ!と

心の中で思いながらも、

とりあえずは、次に落ちてくる花弁がどこに触れてくるのか

腹部に意識を集中させた。



「4枚目。」



撩の声と同時に、右の脇腹にぴたっとくっついた何かを感じた。

花びらのカーブが、ちょうど香のボディーラインと重なり、

ベッドに落ちることなくひっかかった。

「う、うん、……今のも分かった。」

撩の手の中のオレンジ色の柔らかいかけらが、

また一枚ひらっと香の肌に吸い寄せられる。

左の肋骨の下部に着地。



「…ご、5枚目?」



撩が自分にバラの花びらを散らしている。

ふと、客観的にその場面が目の裏をよぎり、

どこの少女マンガよっというシーン撮りに、

一刻も早く終わらせなければ、自身の心が耐えきれないと思ってしまう。

何でもいいから、こんな状況から脱出したいと

落ち着きのない心拍で顔を赤くしながら

次のカウントを待ち構えていた。

しかし、聞こえて来た言葉は予想外の台詞。





「もうわかんね?」

「え?」

「今、7枚目。」

「ええ?」

「8枚、…9枚。」

「えっ!ちょっ、ま、待ってよ!ぜ、全然分かんないわよ!」

香が驚きの返事をする度に、

腹筋が動き、散らされた花びらがひらひらっと小さく動く。

「まぁー、確かに花びらの上に落ちるのは感じにくいよなぁー。」

撩は、右手の中でほぐしていた残りの花びらを、

手の平の上にして、ふーっと一気に吹き飛ばした。

「あ、あれ?な、なに???」

香の喉や頬、腕にひたひたひたと複数の花弁が触れた感触が伝わる。

「おっしまい!」

「へ?」

「第4ゲートは鍵まで見つけたってところだな。」

「はぁ?」

「んじゃ、盛りつけが済んだから、頂くとすっか。」

「は?も、盛りつけ?」



見下ろしている香の体は腹部をさらして、

無防備に横たわり、

オレンジ色の花弁で飾り付けられている。

右耳には、蕾のバラがほどこされ、

髪に、枕に、腕に、肩にと上半身一杯に、

新鮮な花片がちりばめられ、

まるでエディブルフラワーのように、

これから食べて下さいといわんばかりの装飾に、

撩自身がもうくらくらとしている。

ただ、そんなことは微塵も感じさせずに、

いつも通りのおちゃらけ口調で続ける。



「そ。訓練おっしまい!

というワケで、これから香ちゃんをいったらっきまぁーす。」

「はぁあああ?」

何を言っているのこの男はと、口が開いたところで、

上唇だけがつっと吸い付かれた。

「!」

唐突に落ちてきた撩の唇の感触に、

自分の腕を抱き込んでいた手がぴくんとブレて少しほどけてしまう。



「一気にがっつくのはもったいないよなぁ。」



そう言いながら、舌先を小さく尖らせて

つまみ食いをするように、香の下唇をぺろりと舐め上げる。

撩にしては、あまりにも控えめな接吻。

触れているのは、お互いの口器だけ。

香は、やっと触れてもらえたと、

恋しかった感覚を少しだけ与えられ、

オンナの部分がじわりと反応する。



しかし、大概キスをする時は目を閉じているとは言え、

目隠しされたまま受けるのは、

相手が見えない不安の方が大きくなる。

そんなことを考えている最中も、

撩は極々軽く自分の唇を香の頬やら鼻先やらに触れさせる。

このらしくもないじれったい動きに、

香のほうが、“ もっと ”と声を出したくなったが、

何とか押さえ込み、違う要求を出すことに。



「ちょっ、ちょっと!ま、待って!これ取ってよ!」



畳まれたバンダナに指をかけて、

アイマスクになっている布地の除去を訴えた。

着用は訓練の間だけだと捉えていたので、

先の撩の訓練終了宣言があれば、

もうこれはいらないだろうと考えたワケだが、

返された言葉に香はぎょっとした。



*************************************
(33)につづく。





ようは、リョウちゃん、
目隠しプレイを
ちょーっとだけしてみたかったのだ。



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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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