29-33 Peel

第29部 Calm Day?

奥多摩湖畔から15日目



(33) Peel ***************************************************************** 2781文字くらい





「そんまんまつけてろ。」



耳の直下で囁くように聞こえた日本語。

「……は?」

「いつも目ぇ閉じてんだったら同じだろ?」

「……は?」



それってどういうことなの?と尋ね返そうと思っていたら、

顔の両サイドで、ぎしっとスプリングが沈む。

撩が左右の手をついているのかと読んでいたところで、

ウィークポイントの一つ、耳介の縁を温かい舌が往復する。



「ぁん…。」



相方の鼻息も頬と耳にかかり、

その刺激で香の下腹部がじわりと反応する。

しかし、この指示はそう簡単に受け入れきれるものではないと、

とにかく反論することに。

「そ、そんなっ。く、訓練もうすんだんでしょ!だったら外してよっ。」

若干、弱気な口調になってしまったのは、

与えられている刺激に翻弄され始めているあらわれ。



「目ぇ以外で俺を感じとってみ。」



ゆっくりと額や頬に唇を滑らせ、所々で軽く吸い上げる。

「ん…。」

くすぐったさと恥ずかしさと照れくささと、

いつも沸き上がってくる感情が

香の心の中できりもみ三つ巴状態。

「は…。」

顔が再びソファーのほうに向いてしまった。

撩は、まだ手を使ってこない。

当然のようにさらされた細い首筋にも

ライトな口付けを落としていく。

「っ…。」

また、ぎ…ときしむ音が聞こえ、

今度は、腹部に小さな圧を感じた。

撩が花びらの上から、唇と鼻先を香の腹筋に軽く押し付けた様が

ぼんやりと浮かぶ。




「これも感覚を研ぎ澄ますのに役立つと思うぜ。」

「…く、訓練終わりって、い、言った、じゃない…。」



抵抗感を訴えつつ、

本当は自由になっている腕を伸ばして、

撩を引き寄せたい、そんな思いが込み上がるも、

どうにかして、この目隠しを取りたいと、

自力で結び目がほどけないか、挑戦してみることに。

「や、やだ!取ってよコレ!」

体を横向きにして両腕を後ろ頭に回すが、

指先でさぐる結束部分は

どこをどうしたらいいのかさっぱり分からない。



「いやか?」



また香にとって断れないようなトーンを使って聞いて来る撩。

あがいていた香の指の動きがぴたりと止まる。

恐らく、こんなの嫌だと訴えても、

きっと言葉巧みに丸め込まれてしまう。

確信度100%。



一方で、視力が効かない分、

ほんのわずかに撩に触れられただけで、

いつもより格段に各所が敏感に反応しているのは認知済み。

そして、その控えめな刺激でも恐ろしく心地いい。

問いにどう答えようかと、迷っている香。

視覚以外で、撩を感じることに専念するとどうなるのか、

これまでのこの時間とどんな差が出てくるのか、

もしかしたら、従ったほうがいいのかもという思いも、

心の端に芽生えて来る。

そんなことを考えていたら、

拒否感が拭えない主要因がぽろりと声に出てしまった。



「……ふ、不安なの。み、見えないと。」



撩のくすっと笑う空気の音が

耳のすぐそばで聞こえた。

「だよな。」

同時に、香の左側が深くきしみ、

撩の体の動きが大きく伝わってきた。

「わひゃ!」



素早過ぎる数アクション。

体の向きをドア側に変えさせられ、

撩の腕が香の首の下を潜り、

後ろ頭がくしゃりと掴まれ、

太い左腕が香の脇腹経由で体幹に巻き付いた。

手の平と頬と腹部に直接撩の肌が触れたことで、

相方がほぼ裸体であることを初めて知る。

足も絡められ、すっぽりと腕中に収まってしまい、

かぁーっと体温のメモリが対数曲線のラインで上昇中。



「これでどう?」



完全に、撩のペースでコトが進んでいる。

「〜〜〜っ。」

小さく固まった香は、

やっとこうして撩の肌のぬくもりを感じることが出来たことに、

ほっとするも、

この状況がどうしようもなく、こっ恥ずかしく、

その上、どことなく悔しい感情もちらりと出てきた。

湿った小刻みな吐気と一緒に、

撩の問いとは別の件に答えることに。



「あ、あんた、な、なんで、何にも着てないのよ…。」

「だってぇ、風呂から直行だったしぃ。」



まだほんのり香る湯上がりの芳香と、先のバラの香りが入り混じり、

そこに撩がもともと持つ個の匂いがミックスされ、

嗅覚は一杯一杯。

下腹部に当たる例のブツが

すっかり元気であることも確認済み。

タオル地の越しの感触があり、

どうやら腰巻きタオルだけは残してある模様。

てっきり、スウェットか何かを着ているかと思っていたので、

脱衣所から、トランクスも履いていなかったのかと、

小さく驚くも、表皮が冷えていることもなく、

相変わらず筋肉の発する熱のためか、

自分の体温よりも高く感じた。

頭皮から感じる吐気で、

撩が髪の毛に口元を寄せていることが伺える。



やっと直接触れてもらえた。



素直にそう思ってしまった自分が恥ずかしく、

包み込まれた安堵感を抱きつつも、

体の硬直はとれないまま。

それでも、ここに横たわった時点から、

悲しいかな、焦らし作戦にまんまと乗せられてしまったのか、

下着が湿っぽくなっていることに

正直気付きたくはなかった。



「よっと。」



という声が聞こえたと思ったら、

ばさりと大きな布地が覆い被さるのを感じた。

肩から下が掛け布団で隠され、背中も包まれる。

撩がベッドの足元に畳まれていた布団を

足の指でひょいとつまみあげ、左腕でひっぱりあげたのだ。

ぬくもりが更に増した。



「これでむいてもオッケーだな。」

「はい?」



なに、そのバナナの皮を剥くような軽い口調は?と

言い返そうとしていたところで、

撩の腕と手先と足とが、

滑るようにさわさわと肌を巡ったと思いきや、

腕からするりと袖が抜かれ、腰から一気にウエストのゴムが下降し、

あっという間にパジャマの上下は

文字通り剥かれてしまった。

「ちょっ、なっ!」

撩の腕の中でショーツとタンクトップだけになってしまい、

直に触れ合っている部分の面積が倍増以上。

「んじゃ、頂きますっ。」

「んんーっ。」

後ろ頭に滑り込んでいるのは撩の大きな右手。

背中から腰に巻き付いているのは、熱い左腕。

その両腕でぐいっと引き寄せられ、

ぱっくりと口を塞がれてしまった。



今日も、こうして密着しながら夜を過ごせることに、

やはり羞恥心が拭えずにいつつも、

幸福感はソレに勝り、もうこの流れに逆走しても無意味だと、

熱い潮流に身を任せることに。



(そ、そうよね…。

いつも目を閉じているばかりなんだし…、

変わらないって言ったら変わらないかもしれないけど、

こうして撩にくっついていることが、

ちゃんと分かれば、

それでいい…。)



香は、撩の唇と舌と歯の感触を受け止めながら

おずおず感を纏わせてゆっくりと右腕を撩の背中に回してみた。



鼻から細切れに発せられる湿度の高い息の音、

そして唇同士が奏でるスナップ音が、

いつもよりより鮮明に聞こえるような気がした。

まだキスを十分に返すゆとりはなく、

優しくかつ激しく触れて来る舌と上唇下唇に、

ただ、意識飛ばされないよう、

感覚を集中させて逃げないように受け止める。

それが精一杯。




背中をさすられながら、

髪を撫でられながら、

香は、

右耳の後ろでゆれるバラの蕾の重さを感じていた。


********************************************************************
第30部(1)へつづく。次はパス付きです。







カオリン、リョウちんの作戦に、
まんまと丸め込まれたの図。

やっと29部一区切り〜。
ちょっといくらなんでも
長過ぎたか…。


【ご連絡感謝!】
Sさまーっ、「れ」入れました!
発見&ご連絡大感謝!
更新日、当の本人がすっかり忘却しておりましたっ(><)。
2014.07.01.02.58

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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