SS-06 January 16、1989 ( side Kaori )

12万HIT企画

今更ですが、カウンターキリ番企画消化ネタです。
アンソロ2014の完成お祝い&日頃のご訪問の御礼と言いつつ、
自己満足でごめんなさい。

内容は原作以上です。
本編設定が土台の、奥多摩から2ヶ月後の1月16日の夜が舞台。
成人式が1月第2月曜日になったのは2000年からなので、
ここでは旧成人式の日取りです。
(日付けに合わせてアップしたかったの…)




【 SS-06 】January 16、1989 ( side Kaori ) ************************** 3629文字くらい




1992年1月16日木曜日。



成人式の翌日の夜。

あたしは、アパートの屋上にいた。

空には、

半月と満月のちょうど間くらいのお月様。



コートを着込んでいても寒い。

お風呂上がりに

ここに来るワケにはいかなかったので、

まだジーンズにハイネックとトレーナーという

動きやすい普段着のまま。




吐き出す息が白く流れる。




あの時から、3年。




昨日は、キャッツで

美樹さんとかすみちゃんの誕生日パーティー。

それこそ3年ぶりだった。




あっという間。



3年なんて、

中学校3年間、

高校3年間と同じ長さなのに、

この年になって感じる3年の短いこと短いこと。





このところ、色々とあり過ぎて、

気がついたら年を越してしまっていた。




つい2ヶ月前、

あたしと撩は、

公私ともにパートナーとなって、

大きな大きな節目を一緒に跨いだ。




考えるだけでも、

寒かった体が熱くなる。

未だにこの手のことに、

大した進歩も進化も適応もしていないあたしは、

奥多摩という単語が思い浮かぶだけでも、

じゅわっと背中から湯気があがる。




熱を下げるために、

コンクリートの柵に両肘をついて、

自分の頬を両手で挟んだ。




はぁ…。




緩い風に乗って、

白くなった空気がまた流れていった。




目の前には、

遠くまで見えるビル群の明かり。

眼下には、

幹線道路を行き来する車のライトにエンジン音。




今、この街のどこかで、撩は夜のパトロール中。





どうでもいいことなんだけど、

とても些細なことなんだけど、

今日は、

あたしにとって意味ある記念日。

きっと、

生涯忘れることができない日の一つ。





マリーさんから撩の過去を聞いた日。

撩の誕生日を勝手に決めた日。

それから、ここで撩があたしに…。




って、もう恥ずかし過ぎて

頭の中でも先が続かない。




そ、そりゃね、それまで、

こっそりなんかされてるかも?って

感じはあったのよっ。

で、でも確信なかったし!

言い出すことなんて出来なかったし!

奥多摩で、本当に、そ、その、し、してもらうまでは、

それこそ墓場まで持って行かなきゃと思っていたくらいの

秘密のほにゃららだったし!

そもそも撩が、あたしなんかに!と思っていたし、

だ、だからこそ余計にね、

驚きっていうか、衝撃が大きかったのよ!




思わず、ぷるぷると顔を横に振ってしまう。




寝ている時じゃない、

目が覚めている時に、

撩の唇がはっきりおでこに触れたのを感じた時は、

全ての時間が

完全に止まったと思った。




あたしは、目を閉じて、

右手の人差し指と中指を揃えて

ひたりと自分の額に当ててみる。

冷たい。

自分の指先も、おでこの表面も。




もう幾度となく、

撩と唇を合わせ、

キスをされていない場所なんか

ないんじゃないのと思うくらいの

関係になっても、

あの日、

ここでもらったキスの感触は忘れない。




同じように、ひんやりと冷たかった。

ほんの少しだけ、かさついていた。

そして、

わずかに撩のぬるく濡れた舌先が

唇の間でかすめられ、

ほんの少しだけ湿り気を残して、つぶやかれた言葉。




———  サンキュー、パートナー  ———




台詞と一緒に、

肌で受けた温かい湿度のある息。

握られていた右手首に

くっと少しだけ力が込められたのは

気のせいじゃなかったと思う。





一瞬、ほんの一瞬。




これからもよろしくねと、

あたしが何の違和感もなく差し出した手を、

撩は、素早い動きで握手にオプションを加えた。




もはや、オプションではなくメイン。




同じ日付けで、

同じ場所にいるだけで、

鮮明に思い浮かぶあの夜の出来事。

日中も10度届かない冬空の深夜、

放置されたあたしが身動きできずに

これまた勝手に風邪をこじらせたのが懐かしい。




立ちっぱなしの間、

頭の中はぐるぐると同じ言葉がメリーゴーランド状態で

まわり続けていた。




撩にキスされちゃった、撩にキスされちゃった、撩にキスされちゃった

撩にキスされちゃった、撩にキスされちゃった、撩にキスされちゃった




きっと夢見ているのよ。

目を覚まさなきゃと、

今しがた起ったことが現実とは思えずに、

のぼせた頭は文字通り処理能力を越えて

ヒートアップ。





美樹さんが、

屋上に様子を見に来なかったら、

あたし、ここで凍死していたかも。




それが、3年前。



あたしは目を閉じたまま少しだけ上を向く。

ふぅーと細く息を吐き出すと、

タバコの煙のように白くゆらめいて頭上で消えた。



ふと、小さく耳に届いた聞き慣れたエンジン音。

コンクリートの低い壁から腕を組んで覗き込むと、

赤い車が目に入る。

それが減速して車庫に入る直前に、

運転席からひょいっと右腕が出てきた。




「なっ…!」




あたしが、屋上にいることを運転中に気付いたのか、

それとも、道行く知人への挨拶だったのか、

でも、もうそんなに人が出歩く時間でもないし?




そんなことを考えていたら、

ガチャリと屋上の扉が開く音が聞こえた。



まーた、このオトコは、

まるで1階駐車場の扉を開けたら

屋上に直結しているんじゃないかって思うくらいの

どこでもドア的な瞬間移動で現れる。

いい加減、これにも慣れてきたけどね。




「おまぁ、なぁーにやってんの?」



すぐに振り向いて、

嬉しさ丸出しの顔を見せるのもシャクだから、

あたしは、背中を向けたまま、体をコンクリート柵に預けて、

そっけなく答える。



「べっつに。

あんたも珍しいわね、こんな時間に戻って来るなんて。」




日付けが変わるまで、まだ1時間以上ある。

近付いて来る、落ち着いたスリッパの足音。

一緒に、くすっと撩の笑いを含んだ息が聞こえた。




とたんにずしっと背中が重くなる。

「ちょっ、ちょっと!重たいじゃない!」

ロングコートを着た撩は、

あたしを後ろから包み込むように抱きついてきた。

柵の上に組んでいたあたしの腕に、

自分のそれを重ねてきて、

左肩越しから頬を合わせられる。



「……30分以上はここにいただろ?」




ほぼ正解。

たぶん、ほっぺたの冷え具合からの逆算。

こんなことはお手の物だしね。

当てられたのが悔しいので、

とぼけてみる。

「いつからって覚えてないわよ。」

もう周辺が温まってきた。

こんな撩の行動にもまだ慣れないあたしは、

当然体の中からも温まって来るワケで…。



外回りのはずだったのに、

それを思わす匂いがあまりしない。

強いお酒の香りも、タバコの残り香も、

バーのママさんが付けている香水の芳香も…。

ちょっと安心したのが、

撃ちたての硝煙臭もしないこと。




平和な見回りだったみたいね。




「ったく、この季節に

ここに長くいたら体調崩すのは経験済みだろうが。」

「え?」

がばっと体の向きを変えさせられた。

撩のコートの中にすっぽりと収まっているあたしは、

目をぱちくりとさせながら、

聞いた言葉を反芻する。




2人の吐く白い息が、

ゆっくりと横になびいていった。




ふいに撩の右手がせり上がってきて、

あたしの額をかき分ける。

って、ちょ、ちょっと!

驚いて、少しだけ身をのけぞらせたら、

背中にある太い腕がぐいっと動いて、

より密着させられた。




目を閉じながら、

ゆっくりと近付いてくる撩の顔のアップ。

寸前に見えた視線の先は、唇ではなくその上。

あたしは、慌てて目を閉じた。



ちゅっと押し付けられた、

あの時と同じ場所に同じ唇。

まるでデジャブ。

また体が沸騰しそう。

肩幅がきゅうと狭まって、足も腕もカチコチになる。




撩は、そのまま

何回か薄い皮膚をついばみ、

狭い範囲を吸い付いた。

あたしの頭に添えられていた温かい右手は、

するりと落ちて、

顎のラインに添えられる。

強制的に斜め上を向かさせることになり、

薄目を開けたら、

また近過ぎる相方のいたずらっこ的顔。




「……あんとき、こっちにちゅうしてたら、

どーなっていたことやら…。」




バクンと心臓が反応する。

細く開けていた目がパチっと開いた。

撩が、親指をあたしの下唇に触れるか触れないところで

緩慢に横へ滑らせる。

も、も、もしかして、撩、わ、わ、わかってる???




撩はいつものように、ふっと息を吐き出し、

素の穏やかな表情をする。

その小首が少し傾いたと思ったと同時に、

またちゅっとついばまれた。

今度は、唇。

一度吸い付かれるとなかなか離れない撩の口は、

今回は珍しく超ライト級で、次のアクションに。



「冷えたかおりちゃんを温めてあげるには、

やっぱここじゃぁダメだよなー。

ささ、早く中に入りましょーねー。」

と、明るく軽い口調で言いながら、

撩は、あたしをひょいっと抱き上げた。

気がついたら、屋上の扉を閉められ、

足早にお姫様抱っこで階段を降りている。




「りょ、撩!ちょっと!あ、あたし、ま」

と、ここまで言って、言葉が止まる。

まだお風呂に入っていないんだから!と言ったら、

きっと、

そのまま浴室で仲良しタイムになる可能性大!

とてもじゃないけど、

それはまだ恥ずかし過ぎる。




ど、どうしようぅぅぅ!



妙にご機嫌な撩にしがみつきながら、

この後の展開にどうすべきか、

火照った頭で考え巡らす。



妙案も浮かばず、

撩がこの日の意味を知っているか否かも分からず、

いつのまにか、7階の撩の部屋の前。




あたしが撩に誕生日を作った日。




今日もまた、

こうしてぬくもりをそばで感じることが

素直に嬉しくて…。




あたしは、この後のことなんて、

もうどうにでもなれと、

半ばやけくそで、

さらに撩に強くしがみついた。



****************************************
中途半端でおしまい!






リアルでは、今日は
でこちゅう記念日から26年目。

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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