01-03 No Windwpane

第1部 After The Okutama Lake side


(3)No Windowpane **************************************************************2458文字くらい




「……あの夜の続きを、してもいいか…?」



「え?続きって?」

「……だ、か、ら、目ぇつぶれって…。」

さっきから、

高速で打ち付けている香の脈がさらに加速する。

(つ、つ、続きって、ま、まさかっ。)

手を添えられた香の顔は、

ゆっくりと角度を上向きにさせられる。

目はまだ見開いたまま。



「…ったく、もう…。」

(あんまり待ってる時間もないんだよなぁ)

撩は、ちょっと困った顔をしながら、

頬を包んでいた左手を少しずらして、

人差し指は右のまぶた、

親指は左のまぶたに触れ、

そっと目を閉じさせた。



「……ぁ。」



香の小さな戸惑いの声が漏れる。

撩は、軽い深呼吸を一回して、意を固める。

そして、首を僅かにずらし、

ゆっくり背中を傾けて距離を縮めた。





(これで、終わりだ…。)





そう思いながら撩も目を閉じた。

「!!」

薄く開いた形のいい香の唇に、

撩はそっと口を寄せる。

その瞬間、

撩の腕に香の全身が硬く強張るのが伝わってきた。

想像以上の心地良さを持つ感触と弾力。

撩も目を閉じたまま、

左手で香の右耳にかかる髪をかきあげながら、

角度に少しずつ変化をつけつつ、

柔らかいバードキスと

プレッシャーキスを優しく繰り返した。



ずっと長い間

しっかりと触れたいと思っていた香の唇に、

今、自分が口付けをしている。



そう思うだけで、撩の心は昂り、

何かが溶け出しそうな心境になった。

やっと、きちんと触れる決心をし、

長い間踏み出せなかったその一歩を

ようやく行動に移すことが出来た。




(これで、やっと壊せた…。)




時に薄氷のようになり、

時に鋼鉄のように厚くなりと、

その厚みや質を変化させながら、

二人の間に高く立ちはだかっていた心の壁を、

溢れた大きな波の塊が、

激しく決壊させた。

熱がうねりを持って流れ込んで来る



(うそ、うそ、うそっ!あたしが撩とキス???)

信じられない、

ありえないという感情が渦巻く香は、

全身の体温がさらに上昇するのを感じていた。



撩の温かく大きな手が、

ゆっくりと耳の後ろや、腰回りを撫でるに従い、

撩の腕の中で、僅かずつ香の硬直が解けていく。

(気持ちいい…。ガラス越しじゃ、ない…。

で、でも本当なの?これって夢じゃないの?現実なの?

あ…だめ、何も考えられなくなる…。)



睡眠薬を飲ませるためでも、

救命救急の人工呼吸でもない。

初めて本気になった愛おしい者への愛情表現としてのキスに、

撩自身が人生初の感覚に包まれている。




(もっと…、もっと深く触れたい。)



「……香。」

少し掠れた低い声で、名を呼び、

ほんの僅かに顔を離して、

香の表情を確認する。

閉じていた長い睫毛を纏うまぶたが、

震えながらゆっくりと上がる。



「……りょ…。」



香の潤んだ大きな瞳の中に、

自分の姿を見つけ、

らしくもなくドキリとする。

揺れる茶色い虹彩で撩を見つめながら、

真っ赤な香は震える小さな声でゆっくり尋ねた。




「あ、あなた、…どっかの誰かと、あたしを、

勘違いしている訳じゃ、ない、わよね……。」




この後に及んでも、

まだ信じられない香は、

どこぞのもっこりちゃんと思い違いをしてるんじゃないかと、

また、からかわれているんじゃないかと、

また、ほのかな期待からどん底に突き落とされるのではと、

心中に微かな暗雲が漂っていた。



撩は、こんな場面でも

香にそんなことを言わしめてしまった自分に

心底腹立たしく思った。



(信用しろって言っても、

今までの俺の姿を見てりゃ無理もないよなぁ。)



撩は溜め息まじりで、

自分の唾液で艶がでた香の下唇を、

そっと左の親指の腹でなぞってみた。

瞬間、香も撩も同時に

背筋にぞくぞくと電気信号が這い上がってくる。



「……ちゃんと、おまぁの名前を呼んだだろうが…。」




「りょ…。」

「…香。」



お互いの名を口にしあったその刹那、

終わったと思った口付けが再び始まった。



香の唇が、

撩のそれで全て覆われ吸い付かれる。

角度を少しずつ変えながら、

上唇も下唇も撩の唇で挟まれ、

全周を舌で撫でられ、また全てを口で覆われと、

香は息継ぎがうまく出来ずに、

初めての接触に戸惑うばかり。



苦しそうな香に気づいた撩は、

唇の端に少し隙間を作った。

そこから酸素を吸い込んで苦しさが軽くなったと思いきや、

撩の生温かい舌が、

香の口の中にそろりと入って来た。

歯と歯茎の境目をゆっくりとなぞって移動していく。



(こ、こ、これもキスなのぉ???)



初めての行為に、

体がつい逃げ腰になるが、

腰と後ろ頭を撩の手でしっかり固定され、

撩のなすがままに濃厚なキスが繰り返される。

時折、水気を含む音が耳に届く。



「んっ………、ふっ…。」



漏れた声は、

あまりにも色香をたっぷり纏う響き。

初めて聞く香の甘い声に、

撩は脳の裏が痺れるのを感じた。

同時に、

もっと奥にと欲に火がついてしまう。



「……少し、口、あけて…。」



唇を離さないまま、撩が小さく囁いた。

香は軽いパニック状態になっていたが、

言われるままに、

ほんの少しだけ口元を緩めてみたら、

まるで生き物が口の中で探検しているかのように、

撩の舌が上顎の裏や、歯の内側を移動し始めた。

そして香の舌とぶつかると、

思わず香は舌をひっこめてしまったが、

それを撩は追いかけて、

舌同士を絡めゆっくり踊らせた。



「んんっ…。」



官能的な筋肉の質感に、体がざわざわとする。

香は、ふとタバコの風味の中に甘さを感じた。

(これは?撩の唾液の味?)

そう認知したとたんに、

体がさらにカーッと熱くなる。



呼吸も十分できず、意識は朦朧。

立っているのがやっとで、

頭と腰を支えてもらって

ようやく直立している状態に。

香は鼻だけで苦しげな呼吸をし、

肩が震えながら上下する。



撩の息使いも少し乱れている。

何度も何度も角度や深さを変えながら、

撩は香の唇と口腔内を味わっていく。

もはや時間の進み具合など

完全に意識の外に追いやられた。



香は自分の左手から、

そして密着している腹部から、

体温と共に撩の心拍の震動をかすかに感じた。



(早い…、

きっと私もそれ以上に早く脈打ってる…。)



香は、自分の耳の奥で響いている自身の鼓動に、

心音が共鳴するかのような錯覚を抱いていた。


**************************************
(4)につづく。




やっと、ちうまでこぎつけました。
他のサイトさんでも、
奥多摩湖畔でのキスシーンのイラストが
複数アップされていて、
やっぱこうでしょ〜っ!と萌えておりました。
絵を描けないワタクシ、
勝手に脳内で補正しています。
だって、ここでちゅううってしなかったら、
ひねくれたお二人、
ほんと、数ヶ月くらい更なるオアズケは間違いなしっ。
奥多摩後、進展がなかなかないシチュもかなり萌えますが、
当方では、ガマンできなくて、ここでさせちゃいました〜。
やっとこさ、こーすることが出来る関係になったお二人、
さて、この後どうする?




【誤植発見ありがとうございました!】
「撩の心は高ぶり」⇒「撩の心は昂り」
修正させて頂きました!
こんな大事なシーンでも
しっかり凡ミス…。
情けなや〜。
mさん発見ご報告ありがとうございました!
合わせて若干改稿致しました。
2016.01.27.09:25


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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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