05-01 Kaori's Morning (side Kaori)

第5部 Professor’s House  (全15回) 

奥多摩から2日目


(1)Kaori′s Morning (side Kaori) ************************************************3013文字くらい



ふっと目が覚める。

しっかり休息がとれた時に感じる気分のいい目覚め。

熟睡できたと、体が喜んでいるみたい。

たぶん、いつも通りの時間のはず…、と

時計を探そうと、わずかに眼球を動かせば、

目に飛び込んできたのは、

やっと想いを交わすことのできた愛しい男のその横顔。

というか、顎の下から覗き込むように、

斜め下からのアングル。

ドキンと心臓が飛び跳ねる。




コンマ遅れてあたしが撩の腕枕で右の肩口に頭を乗せ、

その太い右腕が自分の体に巻き付き、撩の体と密着させていることに気付く。

こうやって、撩の腕の中で目覚めるのも、

これで3回目。

昨日は2度の目覚めだったから。

毎度毎度、起きる度に心臓への負担が大きい。

これは、もとい、これも、当分慣れそうにない。

そうこう考えているうちに、少し脈が落ち着いてきた。

できるだけ体を動かさないようじっとする。



……まだ、寝てるのかしら?



静かに閉じているその目蓋は、ぴくりとも動かず、

ただ、規則正しい呼吸の音だけが、高い鼻から聞こえるだけ。

正直、綺麗な横顔だと思った。

男の人に綺麗だなんて、似つかわしくない表現かもしれないけど、

まじめにそう感じた。



そもそも、撩が本当に寝ている姿なんて、

唯香ちゃんのガードで高熱出して寝込んだ時か、

海坊主さんとの決闘でケガした時くらいしか、

見たことがない。



確信はないけど…、

いびきをかいていたり、寝言を言っていたり、

すけべ顔の時なんかは、あれはたぶんフェイクだと感じ始めたのは数年前。

今も、もしかしたら寝たふりをしているのかもしれない。

そうじゃなくても、

あたしが少しでも体を動かすと、

間違いなく目を閉じたままでも目覚めるはず。



小さい頃から、命の危険に晒されることが日常、

今も仕事柄、いつ襲撃されるか分からないような生活。

熟睡することが命取りになる、

そんな生き方がずっと続いていたとしたら、

撩には、心休まる日なんてあったのかしら…。



起きてやらなければいけないことが沢山あるけど、

もう少し寝顔見ていたいな…。



だって、こんな至近距離でじっくり見られるなんて

今まで殆どなかったんだもの…。



固そうだけど、実は意外と柔らかい艶とクセのある黒髪。

強い信念を具現化したような太い眉に、

思いの他、長い睫毛を纏っている目蓋。

男のくせして肌も比較的綺麗な部類。



それでも、よく見ると

過去につくった傷の痕がうっすらと複数箇所残っている。

頬に残るラインは、銃弾が掠った痕か、ナイフが裂いたものか、

自分にもその痛みが伝播してきそう。

それでも、形のいい彫りの深い顔に、背稜の高い鼻、唇さえもどこか女性的に見える。



今まで気付かなかったことが、

次々と頭にインプットされていく。



視線がある一点で止まったままになった。

初めて、それがあたしの唇に触れたような気がした時、

絶対夢に違いないと思っていた。

額にお礼のキスをされた時は、只々信じられない思いばかりで、

その場を1時間も動けなかった。

あの港で、撩に顎を掬われた時、

撩の唇を本気で欲しいと思ったのに、

自分じゃないことに、

声にならない悲鳴が爆発しそうだった。

寸止めをしてくれた撩のあの時の表情は忘れられない。

ただ、ちゃんとあたしだと分かってくれていたんだと、

奥多摩で聞いた撩の話しに、

あの状態で出来る最大限の配慮だったことを知った気がした。



あたしね…、海原の船から脱出してから、

撩と、…ガラス越しでないキスが、…できたら、いいなって、

ずっと思ってたんだけど…、

きっと「お前なんかと気色悪りぃ」とか言われて、

そんなこと、あたしたちが出来る訳ないじゃないって、

望んではいけない叶わぬことって、もう諦め切っていたの。

それでも、一緒に居られればいいって…。

触れて欲しい、触れたいって想いを

深く深くしまい込んで…。



目を閉じ、ふぅっと息を吐いた。



だけどね、クロイツからあたしを救ってくれた時、

心から色々溢れてきちゃって、本当に嬉しかった…。

撩の唇があんなに熱いものだなんて、あんなに心地良いものだなんて、

あの瞬間まで知らなかった。

初めてのキスが、撩でよかった。

初めての、……ごにょごにょ……も、撩で、よかった。

あなた以外とだなんて、もう考えられないよ。



撩のスウェットに触れていた指にくっと力が入る。



明日の命をもどうなるか分からない、そんな境遇の中で、

あたしを受け入れることは、

あたしが思う以上に、きっと決心と覚悟を固めるのに、

相当な抵抗があったんだと思う。



そうじゃなければ、

海原戦の後にとったあなたの行動の説明がつかないんだもの。

撩は、ずっとずっと迷っていたことに、

もの凄く悩み抜いて、決着をつけてくれたんだと思う。



涙腺からしみ出た物が、

目を閉じているせいか鼻の奥に次々と落ちていく。



あたしを受け止めてくれたことで、

あたしは、あたなの人生のお荷物になってしまうかもしれない。

あなたに、またケガを負わせたり、

更なる命の危険が増えるのは必至。



それでも、あたしはもう、あなたのそばでしか

……生きることができない、そう断言できるくらいに、

撩、あなたが好きなの。



自分のワガママなのは十分分かっているけど、

それでも、あなたの傍に居たいの。

どんなことがあっても、

あなたのパートナーという立ち場から逃げないから、

そばに居させて欲しい。

足手纏いにならないように、頑張るから、

お願い、撩、死なないで…。

生きて、一緒に、明日も、来年も、

その次も、ずっと一緒に傍に居させて欲しい…。



閉じた瞼の端から溢れたものが、

自分の頬をつたってポロポロと流れる。

それが撩のインナーに吸い取られた。



「……香?」

「え?」

「……な、なんで泣いてんの?」

「は?」



あわてて目尻を指で掬うと、人差し指がしっとりと濡れた。

なっ、なんでぇ?こんなに零れていたなんて、

自分でも気付かなかったわっ。

撩の前では泣かないようにって思っていたのに!



ふっと撩の鼻から短い吐気が聞こえたかと思ったら、

さっき見つめていた唇が、自分の目元に降ってきた。

零れた涙を撩が丁寧に吸い取っていく。



うわわわわー、もうその感触だけで腰が砕けそうっ。

きゅっと目を閉じて、その甘い感覚が去るまで何かに耐える。

や、や、や、やっぱり信じられないっ。

撩が、あたしにそんなことしているなんてぇー。



「……何も心配するな。」

「え?」

つと唇を離した撩は、真っすぐあたしを見つめた。

ち、近過ぎるよ、この距離っ。



「ところで、撩ちゃんの寝顔どぉだったぁ?惚れ直したぁ?」



とたん撩はへろんっと緩んだ顔になり、ニヤリとしながらあたしを抱き直す。

しばらく見つめていたことがバレバレで、

またボボンッと赤くなる。



「っ、っあ、あんた!やっぱりタヌキ寝入りしていたのねっ!」

「ぐわっ!」

ミニハンマーを顔面にお見舞いしてあげた。



たぶんこれもあいつの照れ隠しの一つなんだろうな。

ハンマーを避けるなんてワケもないくせに。

ちゃんと受けてくれるなんて、

これも撩の捻くれた優しさ、って思ってもいいの、かな。

過去の男の不器用な表現を思い返す。



ハンマーを受けた撩の腕が少し緩んだそのスキに、

顔に赤味を残したままのあたしは、するりとベッドから降りた。

「ん〜っ、あー、よく寝れたっ。」

伸びをしながら、窓のブラインドを開ける。

「今日もお天気よさそうね。色々することあるから、さっさと着替えなきゃ。」




通りの奥から見える昇ったばかりの陽が眩しい。

気分が切り替わる。

「撩もさっさと起きてきてよ!」

まだシーツの上でひっくり返っている撩を一瞥して、

ベッド脇に転がっているスリッパを見つけ、

すばやくつっかけると、頬を染めたままパタパタと部屋をあとにした。


*************************************************
(2)につづく。





第5部スタートです…、って15回もあんのかよ!!
一体、次のもっこりタイムはいつになることやら〜。
という訳で奥多摩から2日目の朝のカオリンを妄想してみました。
今は、オフラインではセミが鳴き始めていますが、
こちらは11月ということで、
秋晴れを連想して下さいませ〜。



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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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