05-04 Kaori's Cooking

第5部 Professor’s House  

奥多摩から2日目


(4)Kaori's Cooking ************************************************************3309文字くらい



やたらと大物ばかりの買い物を手早くすませ、

教授宅に着いたのは、昼ちょっと過ぎ。

荷物を中に持ち込むと、香はさっそく昼食の準備を整えた。



「香君、買い出しご苦労じゃったのう。」

様子を見に教授が香に話しかける。

「いえ、もうすぐ配膳できますから。」

住んでいる人数には見合わないほどの広い食堂、

そこに5人前だけど10人分くらいの食事が、

テーブルにずらりと並ぶ。

多種多様なおにぎりが主食で、吸い物に、

煮付けに、空揚げに、お浸しに、お漬物に、フルーツにと

一見ピクニックのお弁当のような賑わいで彩られている。



「わー、すごい。これ香さんが全部?」

と美樹が歩いてやってきた。

「え!美樹さん歩いて大丈夫なの?」

驚く香に、クスッと笑顔を向ける美樹。

「食事やトイレの時くらいは、平気よ。」

「無理はしないで。お部屋に運ぼうかと思っていたのに。」

傍に歩み寄る香。

「あら、みんなと食べる方が楽しいし、その方が治りも早くなるわ。」

「じゃ、じゃあお好きなところに陣取っちゃって。」

「それじゃ、遠慮なくファルコンの隣に座らせてもらうわ。」

なぜか赤くなる香に、撩は苦笑した。

撩と香とファルコンと美樹、そして教授の5人揃っての食事に、

まるでちょっとしたパーティーのようでもある。

「さ、食べましょ。あまり上等なものじゃないけど、みなさん召し上がって。」

香がみんなを促した。



「頂きまーす。」

美樹がさっそく箸を伸ばす。

一応右利きではあるが、左手も使えるように訓練しているので、

器用に取り皿に選り分けて行く。

「美味しい!この味付けいいわぁ。あ、こっちのも好み!」

パクパクとまさに食欲旺盛という感じで、美樹は香の手料理を楽しんいでる。

「ね!香さん、今度これとこれの作り方教えてくれない?

この味気に入っちゃった。」

香は、美樹の高評価に全身で戸惑う。

「そ、そ、そんな、たいしたモノじゃないのに…。」



教授も柔らかく微笑みながら嘴を挟んできた。

「撩はいつもこんな旨い物を食わせてもらっておるのか?」

「……教授、なんでこっちに振るんすか。」

空揚げを頬張りながらブスッとした表情で教授に視線を送る。

「お前さんのことじゃ、

どうせ美味しいの褒め言葉もなしに、がつがつ食っとるだけじゃろ。」

ファルコンも参戦してきた。

「撩、新宿中の香のファンが、

どんなに香の料理を食べたがっているかお前も知っているだろ。」

「へ?」

「は?」

香と撩が、同時に声を出す。

「そうよぉ、冴羽さん。毎日香さんの手料理を食べられるなんて贅沢なのよぉ。」

美樹も参戦してきた。

「み、み、美樹さん、海坊主さん、そんな、ぜ、贅沢だなんてないわよ!」

慌てて否定する香。

「私が作るものなんて、ホントたいしたものじゃないんだからっ。」

「いやいや、香君、謙遜するでない。本当にいい味じゃよ。」

お浸しを口に運びながら教授も続けた。

「撩は、日本に来る前は、このような食事とは縁遠かったからのう。」

「きょ、教授っ!」

このじいさんにこれ以上喋らせたくないと、焦る撩。



「あら、私たちもそうですよ。教授。」

美樹が補足する。

「内戦中なんて、本当に食を楽しむなんて出来なかったわ。ねぇ、ファルコン。」

「ああ。」

短く返事するファルコンに、

みんなと香は過ごしてきた背景が違うことを改めて感じさせられていた。

その表情に気付いた美樹がフォローする。

「今はこうしてみんなで美味しいもの食べられるなんて、

ホント有り難いわよねぇ。」

次の料理に箸を伸ばしながら微笑む。



「そうじゃのう、夜はミックとかずえ君も合流する予定じゃから、

もっと賑やかになるぞい。」

「げっ、ミックの奴も来るのかよ!」

フルーツが口からこぼれそうになった撩は、

さらに面白がってカラかってくるミックの言動が容易に想像できた。

はぁと溜め息をつく。

「夜はありきたりで申し訳ないですが、カレーライスを予定してるの。」

香が、身と声を小さくして夕食の予告をする。

「おう、それは楽しみじゃの。老人だけだと食べる機会も少ないからのう。」

教授の顔に細かい皺が浮かぶ。

「教授、お台所の寸胴鍋をお借りしてもいいですか?」

「もちろんじゃとも、置いてあるもの何でも好きに使ってよい。」

「ありがとうございます!」

そうこうしているうちに、

みるみるとテーブルの上の料理が空になっていった。



「あー、お腹いっぱい!ごちそうさまでした!香さん、どれも美味しかったわ!」

美樹の明るい声が食卓に響く。

「ごっそさん。」

撩も爪楊枝をくわえてリラックススタイル。

「お粗末様でした。あたし、お茶入れてくるわ。」

香は空の食器を持てる分だけ下げ、台所に戻った。

すると、ファルコンがおもむろに立ち上がって、

大きな手で残りの器を回収し、香の後を追った。

「お、海坊主わりぃな。」

「ファルコンは紳士じゃの。撩よ、少しは見習わんか。」

後ろ姿を細い目で見送る教授は、お約束のように撩に振った。

「ふん!俺はいつだって紳士だって!ねぇー美樹ちゃん!」

と共感を求めつつ美樹の左手を取ったとたんに、

ガォーンンンン!

こめかみに弾が掠めた。

「っぶぁっきゃろっ!タコっ!何すんでい!当たったらシャレにならんだろうがっ!」

「…まったく冴羽さんたら、香さんも苦労が耐えないわね。」

美樹が深いため息をつく。

「おお、壁に穴が…。

ファルコンくんも美樹君が大事でしょうがないようじゃな。」

「すいません、教授、壁の修理代弁償しますわ。」

美樹は申し訳なさそうに壁にめり込んだ弾を見つめた。

「いや、請求先は撩じゃな。」

「は?」

「お前さんが、余計なことをしたのが原因じゃ。」

涼しい顔で答えた。

「教授、それは違うでしょ!」

と、食いつかんばかりに抗議する。

が、何をどう言っても分が悪いのは撩であることは、

自身も分かっている。



ほどなく香がお湯飲みを5つお盆に乗せて戻ってきた。

「ちょっと、さっき海坊主さんが撃ったの、

撩が原因じゃないでしょうね?」

銃声を聞いてあわてて振り返ったら、銃口から煙を吐いているキングコブラを

ファルコンが仕舞うところだった。

(『気にするな』って言われても、気になるじゃない!)



「香さん、いつものことよ。」

美樹があきれ顔で壁に人差し指を向けた。

はぁぁ、と香は肩を落とす。

「ふーんだ、撩ちゃん悪くないもんねぇー。」

と、だだっこのように椅子の上であぐらをかいて口を尖らせそっぽを向く。



香は、ため息をついた後、

お盆を置いて台拭きでテーブルを綺麗にし、

一人一人に湯のみを差し出した。

「どうぞ。」

「ありがと、香さん。」

「食後の一服、至福じゃのう。」

ずずっと緑茶を傾けながら教授が微笑む。



「香、俺と海坊主はこれから出かけてくる。」

飲み終わった撩は、香に声をかけた。

「あ、例の下見ね。」

「ああ、夕食までには戻れるよな。」

ファルコンに同意を求める。

「大丈夫だ。俺のランクルで移動するぞ。」

ファルコンの手の中では、

まるでままごとセットの湯飲みを持っているかのように見える。

「海坊主さん、撩、気を付けてね。」

少し眉を切なげに寄せる香。

「心配すんなって。じゃぁ、行ってくる。」

一服し終わった二人の男は、のっそりと立ち上がり、

ファルコンは無言で、撩は左手をひらひらさせながら、食堂から出て行った。



「香君、これがかずえくんから今朝預かったメモじゃ。

台所や洗濯物について、細かいところまでアドバイスが書いておる。」

白衣のポケットから白い紙切れが出された。

「あ、ありがとうございます。じゃ、さっそく取りかかりますね。」



「じゃあ、私は部屋で休んでいるわ。」

美樹は、怪我をしているとは思えないほどのスムーズな動きで

席を立った。

「美樹君、食後の薬を飲むのを忘れんようにのう。」

「はーい。」



香は、メモにざっと目を通した後、湯飲みを回収しながら、

夕方までの時間の使い方を思い描いていた。

「……香君、あまり無茶するでないぞ。」

香は、ふっと笑顔になり、答えた。

「大丈夫ですよ。させて頂いていることが嬉しいので。」

そのままお盆と台拭きを持って台所に向かった。

「やれやれ、若者三組それぞれ楽しませてもらうかのう。」

教授も意味深な微笑みを残して書斎に向かった。


****************************************
(5)につづく。







【誤植発見感謝!】
スームズ⇒スムーズ直しました!
ご連絡大感謝です!
[2014.09.22.20:58]


教授宅の食堂は、
銀狐の回で香が教授の家に泊まりに行った時
朝食のシーンで出てきました。
あのコマをご参考にと思います。

また脱線話しですが、
先日、CH二次創作サイトの整理をしてみたら、
なんと閉鎖もしくは機能停止のサイトが
115もありました(泣っ)。
バナーだけは残っていることが多かったので、
バナーコレクションを開始。
ちまちま印刷して、CHノートに貼付けちゃってます。
(んなことしているヒマがあったら家事をしろー)
みなさん素敵なデザインで
これだけでも癒されますのに、
中身が見られない閉鎖は本当に残念です。
勝手ながら何らかの形での復活を願っておりますぅ。

【キングコブラについて】
読者の方から、
キングコブラは美樹の愛銃ではないかとのご指摘を頂きました。
それにつきまして、少々言い訳解説をさせて頂きますね。
ファルコンが美樹の銃で撩を狙ったシーンは
実は、迷ってひねった場面だったんです。
当初は、完全版12巻と22巻等で登場した
「44マグナム」でと思っておりました。
しかし、余計なことを考えて、余計なひねりを入れてしまいました。
奥多摩の結婚式の時に、
ファルコンはバズーカ砲その他の銃器を持ち込んでいました。
当然、美樹ちゃんも自分のキングコブラを持参していたことでしょう。
結婚式でも何があるかわからん稼業という想定の中で、
本当になんやらかんやらが起ってしまい、
美樹ちゃんが撃たれてしまいました。
リョウとのクロイツ戦を終えたファルコンは、
きっと諸々の銃器と共に美樹の愛銃もちゃんと教会の控え室あたりから回収したのではと。
他のオオモノは、アジトかキャッツにしまい込み、
キングコブラは、海ちゃんが預かって美樹ちゃん復活まで常に身につけているという設定で
あのシーンにあの銃を使った次第です。
たぶん、これは大変分かりにくいひねりなので、
美樹の台詞で「ファルコン、あなたまだあたしの銃持ち歩いてるの?」
返すファルコンの台詞に
「お、お前が動けるようになるまでは、お、俺が管理しておくっ。」的な
やりとりを挿入すればよかったかもしれません。
言葉足らずでした。
気付いた皆様、困惑させてしまいましたことをお詫び申し上げます。
[2013.09.17.01:25]

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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