05-09 Kazue & Kaori

第5部 Professor’s House  

奥多摩から2日目


(9)Kazue & Kaori  **************************************************************2145文字くらい



キッチンで先に片付けをしていたかずえは、

もうワイングラスを用意してテーブルに並べていた。



「かずえさん、教授が言っていたワインってこれ?」

洗い物を持って入ってきた香は、

目に入った2種類のボトルに視線を落とした。



「そう、教授ってどっからこんなもの仕入れているのかしらね。」

かずえがコルク抜きを探しながら呆れ顔で呟く。



あまりお酒に明るくない香は、

ラベルを見てもなんと書いてあるのか読み取れず、

かずえが呆れている理由がイマイチ分からない。



「1本はね本格カレーに合うロゼなの。」

かずえが、軽く解説する。

「へぇー、カレーに合うワインなんてあるんだ。」

香は組み合せの意外性に、素直に驚いた。



「で、もう1本は…、これは教授か冴羽さんに説明してもらおうかしら。

香さん、クラッカーとチーズで簡単なおつまみお願いしていい?。

私、向こうの食器をさげてくるわ。」

そう言い残して、キッチンワゴンを押しながら食堂に向かった。



「ワインに合うおつまみねぇ。」

香は、あまり作ったことのないサイドメニューに迷いながらも、

カナッペもどきを作り始めた。



食堂から、食器を回収してきたかずえは、シンクですぐに洗い出す。

「香さん、お皿見事にみんなカラよ。」

「あはは…、残飯処理の手間がなくて助かるわ。」

香は、手早く作業を進めながら、

パセリやスモークサーモン、クリームチーズにカマンベールチーズと

冷蔵庫で見つけた食材をクラッカーに乗せていく。



「冴羽さん、からかわれて困ってたわね。」

クスッと笑いながら、食器洗いを続けるかずえ。

「……ぁ、あの、かずえさん。」

赤く染まりながら俯いて、小さな声で尋ねる香。

「ど、…ど…して、…みんな、教会で会った時、

そ、その、…えーと、…あ、あの…。」

どもっている香が可愛らしくて、かずえもつい抱きしめたくなった。

「どうして、みんなが『変化』に気付いたかってこと?」

「そ、そう!」

香は、朱に染まった顔をぱっと上げて、

自分が言いたかったことをずばり言い当ててくれたかずえに驚いた。



「ふふふ、そうね。本当にみんな『なんとなく』だったと思うわ。

あなたたち二人が戻ってきた時の、

二人の距離とか、香さんの肩や腰に手を添えている冴羽さんの様子だとか、

赤い顔をしたあなたの表情とか、冴羽さんの香さんを見る目だとか、

とにかく私も全体的に空気がというか、距離が変わったとすぐに感じたのよね。」



かぁーっと血流が激しくなる香。

「それで、みんな香さんが救出された時、冴羽さんときっとなにかあったに違いない、

なぁんて勘ぐっていたんだと思うわ。」

「…はぁ。」

小さく溜め息をつく香を見てかずえは、ふっと微笑んだ。

「本当に、よかったわ。これまでが長かったものね…。」

「……かずえさん。」



今は、ミックとまとまっているとはいえ、

かずえもかつては撩に想いを寄せていたことを香は知っている。

教授宅に留まったのも、

研究のために命を落としたフィアンセとの思いを断ち切り、

新しい生き方を選ぶため。

そんな背景を持ちながら、

香にそんな優しい言葉をかけてくれるかずえに対して、おのずと涙腺が緩んで来た。



「あ、こらこら、泣かないの!」

食器洗いが終わったかずえは、

椅子に置いていたカバンからノートサイズのマチ付き紙袋を取り出した。

「はい、これ。」

ニコニコしながら香に手渡すかずえ。

「え?」

「半年分は入ってるわ。もう必需品でしょ?」

「っあ。」

それが何なのか分かった香は、またボッと赤くなる。

「まだ、冴羽さんにはナイショにしてるの?」

「あ、…うん。」

かずえは、ワイン2本とグラス2種類14個をワゴンに乗せながら尋ねた。

「そっか、……でも冴羽さん、きっと分かってると思うな。」

「ええ!?な、なんで?ゴミも分からないように捨てているのに?」

香は、かずえの発言に必要以上に驚いた。



「あんな敏感な人が、

香さんが常用している薬のことに気付かない訳ないんじゃない?」

「だ、だ、だって、撩は私のことなんか無関心っていう態度ばかりで…。」

慌てて今までの普段の状況を思い返す。



「そんな素振りをしていただけよ。きっと。」

カナッペもワゴンキャリアーの下段に乗せると、かずえはさらに続けた。

「私の想像だけど、一緒に生活している訳じゃない?

たぶん、香さんの『女の子の日』の周期もちゃあんと把握しているんじゃないかしら。」



香は、ボンッと顔面が噴火しそうな気分になった。

分からないように、細心の注意を払っていた事案に、

もしそれが本当だったら、

ますますこれから撩とどんな顔で向き合ったらいいか分からないではないか、と

香は複雑な想いがぐるぐると巡る。

「ミックはちゃんと把握してくれているわよん。」

自身の惚気話しに方向を変えたものの、香はしゅーしゅーと湯気を出したまま。



これじゃ、冴羽さんも手放さなければならないと思いつつも、

手放せなくなった理由がよく分かるわ、と

かずえは香の初心な反応が可愛らしくてしかたなかった。

「ふふふっ、また『そっち方面』で悩み事があったら気軽に相談してね。

もちろん守秘義務は守るわよ。」

「ぅ……ぁ、ぁりがと。かずえさん。」

赤面したまま答える香。



「さ、運びましょうか。」

と、ワゴンキャリアーを押しながら、二人は食堂へ戻った。


************************************************
(10)につづく。





教会での診察に引き続き、
かずえの鋭い考察をここで出させて頂きました〜。
すでに、銀狐の時に、
「あの二人が別れられるわけが…ないことくらいわかってますわ!!」(第120話)と
教授と語るかずえは、
あの時点でもう深いところまで読み取っていたと思われます。
今後もカオリンの良き相談相手&色々便利なクスリを作ってくれそうな重要キャラとして、
期待したいところです〜。


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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
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十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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