05-13 Correction

第5部 Professor’s House  

奥多摩から2日目


(13)Correction  **************************************************************2018文字くらい



ガシャンとシャッターが降りる。

クーパーは駐車場の指定席に入り込むと、

いつも通り、2人を送り出した。

階段を上がろうとする香に、指で鍵をまわしながら撩は悪戯っぽく聞いてくる。



「香ちゃん、選ばせてやるよ。

おんぶがいい?肩抱くのがいい?お姫様抱っこがいい?手ぇつなぐのがいい?」

「はい?」

「いや、6階まで昇るのに、楽しいほうがいっかなぁーって。」

よくぞここまで態度を変化させられるもんだと、

香は大きな眼を丸くさせた。

そして、赤らんだ顔のまま腕組みして暫し考えた後、

バッグを持ったまま両手を腰に当て、こう言った。

「全部却下!あたしがあんたの背中押したげる!」

「へ?」

「はい、のぼった、のぼった!」

「お、おいおい!」

と、香は撩の背中の中央よりやや低い場所を両手で押しながら

2段遅れで階段を上った。



自分の思惑が面白い形で裏切られたことに、

(んと、飽きないヤツ。)

と嬉しそうにされるがまま目的地を目指す。

「ちょ、ちょっと重いわよ!まじめに歩いてよ!」

「いや〜、撩ちゃん、なんだかこっちのほうがラクチン。」

わざと重心が香の手に乗るようにして、ふざけながら一段一段進んで行った。

「もー。」

(はぁ、もうバカップルだわ…。

信じらんない、あたしたちがこんなやりとりしてるなんて。)

香は、恥ずかしさと照れで、冷めたと思ったほろ酔い気分が戻ってきた。



「ほい、到着。」

玄関を開けた撩。まるでドアボーイのように扉を支えている。

「なんだよ、早く入れよ。」

「………。」

「香?」

「うーん、ミックだったら分かるのよ。レディーファーストの国だし。

でも、あんたが『あたし』にそんなことしているのに、

何だか、やっぱり、もの凄〜く違和感あるのよねぇ。」

と、やや早口で喋りながら玄関をくぐる。



「違和感ねぇ。」

撩は、扉を閉めながらポリポリと頬を掻く。

靴を脱ぎながら続ける香。

「今までは、『おい、早くしろよっ』とか言っちゃって、

閉め出すような勢いの時もあったし、

なんか、乱暴で粗末に扱われるのに慣れちゃって来たせいなのかし」

最後まで言わないうちに、がばっと包まれてしまった。



「……じゃあ、今後は、こーゆーことに慣れてもらわんとな……。」

すっぽり腕の中に収まっている香は、

このいきなりの展開に心臓が跳ねる。

「…りょっ。」



聞こえた撩の声は、少し低く掠れた口調だった。

香はちょっとだけ『しまったっ』と思った。

「……ご、ごめん。撩…。い、今の訂正。」

「ん?」

「その、乱暴な、こ、言葉で落ち込んだことは、た、確かに、あったけど、

りょ…が、あたしを守るために、い、色々考えていてくれたことは、

あの、ちゃんと分かっていた、…から。

だから、あの、…さっきの粗末ってのは、訂正させっ…。」

また皆まで言わないうちに言葉が吸い取られた。



「んんん…。」

切なげに寄せられた太い眉と、静かに閉じられた目蓋が至近距離で目に入る。

反射的に目を閉じた香は、もう何度目かも分からなくなった

熱く深い口づけに身を委ねた。

それはまるで、『すまない』と聞こえてくるような、

優しいタッチで、

言葉がなくても香に撩の謝罪が伝わって来た。



家に帰って来た安心感と、温かさに包まれている幸福感に浸りながらも

触れ合っているこの行為にまだ慣れなくて、どうしても身が硬くなる。

しかし、やんわりと頭や背中を撫でられ、温かい手の感触が服越しに伝わると、

力みが少しずつ抜けていく。

ワインの余韻も残り、足元からふわふわとしてきた。



(も、もぅ、とけてしまいそう…。)



ぼやけてきそうな意識の中で撩の小さな声が届いた。

「いかん、だめだ…。」

唇をつけたままそう言うと、

また軽くちゅっと吸ってポンと離れた。

「……管制塔がイカれちまいそうだ。…さっさと風呂入って休んじまおう。」

「りょ?」

前半は幻聴かと思う音量だったので、聞き漏らしそうだった。

頭をくしゃっとかき回され、細めた瞳と目が合う。

「おまぁ、先にシャワー浴びてこい。」

「え?」

「それとも、一緒に浴びるぅ?」

ついっと接近する撩。

「は?」

にやっと笑った撩に、ぼぼっと赤面する香。

「まぁだ、超奥手で照れ屋さんのカオリンは無理かなぁ?」

「んなっ、なっ、なにをっ…。」

「その気になったらいつでも呼んでちょーだい!香ちゃんっ!」

と、くしゃっと髪をかきまわし、ご機嫌モードで香から離れていった。



「な、なん、何なのよ〜。この豹変振りはぁぁぁぁぁ〜。」

今宵は、美樹とファルコンの結婚式から2日目の夜。

激変した自分たちの関係に、まだ頭も体も戸惑っている香。

特に、日常を過ごすこのアパートの中での撩の言動が事更馴染めず、

別のもっこりちゃんと自分を冗談抜きで勘違いしているのではと

思ってしまいたくなるほど困惑していた。



「はぁ〜。」

溜め息をついた香は、頭を軽く振った。

「……とりあえず、着替えとってこよう…。」

ちょっとだけふらつく足で玄関を後にした香は、

自室経由で浴室に向かった。


********************************************************
(14)につづく。






「それとも、一緒に浴びるぅ?」
は、銀狐の時の
「それとも おれと一発する?」
のあの距離感を参考にして下さいませ〜。
表情は「んじゃ金だす?」の顔でよろしく〜。


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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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