05-14 The Rooftop(side Ryo)

第5部 Professor’s House  

奥多摩から2日目


(14)The Rooftop (side Ryo) *****************************************************1471文字くらい



火をつけないままでくわえた煙草を口元で弄びながら、

俺は屋上の縁でコンクリートに体を預けていた。

日付が変わる1時間ほど前。

視界にはまだネオンが輝き、街のざわめく音も聞こえる。

パトカーや救急車も、遠くで音を発している。



「もう1日、…空けといたほうが、いいだろうなぁ。」



朝からずっと動きっぱなしの香は、

決して自分から疲れたとは言わない。

教授から出されたワインで、少なからず酔いも残っているだろう。

できたら、ゆっくり休ませてやりたい。



さっき、勢いで触れてしまった唇の感触で着火した、

どうしようもなく滾(たぎ)っている熱に、

夜風に当たりながら冷めるように念じてみる。



やっと触れる決心をした愛おしい存在に、

触れれば触れるほど、もっと、もっとと、

その想いは膨らむ一方で、

触れても触れても、飽きることなく、

一時でもその体温を離したくない欲望が溢れてくる。



— 乱暴で、粗末に扱われることに慣れて… —



さっきの香の言葉がリフレインされる。

「っとに、俺って酷いことばぁーっかりしてたよなぁ。」

香の呟きを耳にしたとたんに、

ハンマーを心臓で受けるような息苦しさを感じ、

思わず抱き寄せた。



唯香ちゃんに電車の中で言われた『卑怯者』という言葉がかぶる。

子どもでもおかしいじゃないかと分かるその関係に、

何年も何年もずっと耐えていた香を想うと、

きっと自分が考える以上に、あいつの持つ傷は深い。

さっき帰宅した時の香の言葉は、

それを垣間見せるやりとりだった。



まだあれから2日しかたっていない。

やっと3晩目だ。

今まで自分が作ってしまった痼(しこ)りを

これからゆっくりと解(ほぐ)して行くしかない。

もう、手放す気も、元に戻る気もない。

香がいない人生も意味はない。



槇村に、共に生きて行くと誓った、自分が自分であるための要。

この闇の世界へ引き込んでしまった原罪は拭い様がないが、

自分の命が尽きるその瞬間まで、守り通したい。

願わくば、1日でも、1秒でも、共に過ごせる時間を長くできるよう、

その努力を惜しむつもりはない。



「……いつから訓練すっかなぁ。」



美樹ちゃんが、教授のところで療養している間は、

慌ただしいだろうな。

かずえちゃんの予定次第、か。

あ、いかん。ミックに連絡すんの忘れてた。



確か、南ガルシア共和国は、あの小林みゆきちゃんの件以来、

国際社会から厳しい監視を受けているはず。

薬物関連のルートは、あの時ほぼ壊滅したと聞いたが、

また復活したのか?

そして今度は、武器密輸にも力を入れ始めたってことか。

叩けば叩く程に埃が出る国だ。

軍部崩壊か国のヘッドを失脚させるに十分なネタがあるはず。

それをどう、表に出すかがミソだな。



しっかし、現場は相当雑魚が集まりそうだな。

あぁ、めんどくせぇ。

一気に木っ端微塵にしたいところだが、そういう訳にもいくまい。

公共施設のダメージを最小限に押さえつつの、任務遂行か。



まぁ、自分から足を突っ込んだヤマではあるがな。

さっさと終わらせて、タコと美樹ちゃんを一緒にさせてやらんと、

香がきっと無理を重ねちまう。

自分から人前で弱音を吐くようなタイプじゃないからな。



まずは、明日の夜の準備だな。

えーと、武器庫で持ち出しする銃器の確認だろ、

で、ミックに電話、変装用の衣類のチェックに、

ああくそ!けっこうすることあるじゃねぇか。



頭をがりがり掻いていたら、

向かいのビルの某階に明かりがついた。



「お、帰ってきやがったな。」



結局タバコに火をつけないまま、

きゅっと曲げて、そのまま自室へ向かい、ゴミ箱に放った。

その手で、子機を取ると慣れた番号を押し、

コールが受信に変わるのを待った。


**********************************************
(15)へつづく。





サイトオープンから今日で4ヶ月となりました。
実は、立ち上げる当初、
表のブログ1つの他に、
自分が更新を担当しているサイトが2つあり、
4つも管理できんのかぁ?と
二の足を踏んでおりましたが、
やはり、シテハンに費やす時間が自分の癒しに繋がりますので、
慌ただしくも、思い切ってここを立ち上げて良かったと
素直に感じております。
これも日々、こちらにアクセスして下さる皆様のお陰です。
まだまだ、だらだらの垂れ流しが続きますが、
お気軽にお立ち寄り下さいませ〜。


スポンサーサイト
プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


9万hit記念に
とりあえず作ってみた
CH専用Twitter
 


拍手1000パチ記念につけちゃいました。



かなり便利なサーチツール

登録サイト最新情報はこちらをチェック!


試運転中…

カテゴリ
最新記事
月別アーカイブ
検索フォーム
QRコード
QR
現在の閲覧者数: