06-01 Morning Of The Third Day (side Ryo)

第6部 A Day Of Ryo & Kaori (全15回)

奥多摩から3日目


(1)Morning Of The Third Day (side Ryo)*****************************************2227文字くらい



海坊主と美樹ちゃんの結婚式から3日目の朝。

先に目覚めていた俺は、腕の中の香が覚醒する気配で、

目を開けた。

「……ん。」

なんともまた可愛らしい声を出すもんだ。



まだ目を閉じていて欲しいような、

まだ起きる時間が来て欲しくないような、

まだこのままでいたいような、

でも、その目蓋が開くのが待ち遠しいような、

早く、自分を呼ぶ声を聞きたいような、

なんとも矛盾した気持ちが沸き上がり苦笑する。



俺の右肩口を枕にしたまま、向かい合って横になる香。

目が覚めて隣に女が寝ているなんて、

用が済んだらさっさと部屋を出て行くのが当たり前だった頃は、

殆どあり得なかったことだ。



ああ?冴子に酔い潰された時?

ありゃフェイクに決まってんだろっ。

騙されると分かった上で、

もっこりなしを承知で芝居に乗ってやっただけだっ!

槇村の大事な連れ合いのためになっ!

だいたい、あいつが酔いつぶれた男を一人で運べる訳ないだろっ。

酔ったフリでぜぇーんぶ、計算済みだったんよっ!(読者に言い訳中)



なんてことを考えていたら、

香の目蓋が微かに震えた。

その様子を見つめながら、そっと左手で茶色いくせっ毛を撫でてみる。

手触りが伝わったのか、思いの外早い動きでパチッと目蓋が開いた。

大きな瞳とパチンと目が合う。

「おはよ。」

髪をそのまま撫でながら朝の挨拶。



「………。」



香は、返事が出来ないまま、大きな目を見開いて、固まっている。

目蓋だけが、パチパチと忙(せわ)しく瞬く。

「香ちゃん?」

名を呼んだとたんに、香の顔が瞬時に全面朱色に染まった。

体もピキーンと硬くなる。



おいおい、まだこの状況に慣れない?

その姿が可愛くて、前髪をかき分け、額に唇を押し付ける。

「おはよ。」

もう一度言ってみる。

さらに石化する香、体から水蒸気が吹き上がる。

「ぁ、…ぉ、ぉ、は、よ…。」

体温39度ってとこか。

腕の中でかっかしている香が愛おしく、両腕で柔らかく抱き直す。

もうちょっと、こうしていたいんだがなぁ。



「なんか、…ヘン……。」

「あ?何が?」

腕の中で香がぼそっと言った。

「だって、……いっつもあたしが、撩を起しに来ていたのに…。」



ふっと顔が緩むのが自分でも分かるくらい、にやけてしまった。

確かに『あれ』以来、元気な香の声で叩き起こされることがまだない。

あれはあれで、

結構好き好んで起されるのを待っていたりしていたんだがな。



「まぁ、一緒に寝てりゃそうなるわな。」

弛み顔がバレないように、さらりと言ってみる。

また体温があがる香。

おまぁ、どこまで上昇させる気だ?



「い、い、今、な、何時?」

ベッドサイドの時計をちらっと見る。

「7時ちょい過ぎ。」

「やっぱり、…ヘン。」

「は?」



同じ言葉を繰り返す香にちょっと驚く。

「だって、この時間に、起きている撩とまともな会話していること事態が、変。」

「へ?」



香は、頬を染めたまま、眉を寄せて上目使いで続ける。

「だって…、こんな時間帯で撩が家にいる時は、

朝帰りで酔って訳分かんないこと言っているか、

いびきかいて寝ているかのどっちかしかなかったもん。」



まだ、変化に慣れないまま、今まで染み付いてしまった数々の習慣から、

違和感を拭えない香のささやかな訴え。

「んー、まぁ、その通りかもなぁ。」

否定は出来んと、同意の返事をする。



「っあ、あたし、も、もう起きなきゃ。」

顔を赤らめたまま、腕から抜けようとする香を、

つい引き止めてしまった。

「もうちょっと寝よぉ〜。」

わざと甘ったれた猫撫で声で、抱きしめ直す。



香は目を開いてびっくりするが、

照れながらも抵抗を始めた。

「だ、だめっ!これから起きてすることが沢山あるのっ!

だ、だから、は、は、放してちょーだいっ!」

「やだぁ〜。」

と駄々をこねる真似をする。

とたん、スコーンと10tハンマーが顔面にヒット。

「がっ!」

そのスキにするりとベッドから抜け出た香。

正確には、逃がしてやったというところだが。



「と、とりあえずっ、あたし、さ、さ、先に降りるからっ。」

まだ、どもりながら赤面している。

「食事出来る頃には、ちゃんと起きて来てよっ!」

とパタパタと部屋を出て行った。



わざと食らったハンマーをころんと転がす。

ふっと笑みを漏らしながら、

両手を後頭部で組み、ばさっと枕に仰向けになる。



『あれ』から、香と向かえる目覚めは3日目であり4度目であり、

あ、いやソファーの膝枕を入れたら5度目か。

その度に、表現し難い満足感を得ている自分に、

昔だったらありえないと、思わず過去と比べてしまう。

目を閉じ、先ほどまでの感触を思い出す。



愛おしい。



その細く、柔らかで、華奢な体に、

いったいどれほどのものを抱え込んでいるのか。



早ければ、海原戦の後には、

すでに薄くなっていた壁を崩すのには十分な条件が揃ってはいた。

ただ、香の一時的な記憶喪失につけ込み甘えて、

それをだらだらと先延ばしにしたのは、紛れもなく俺。

そのために上乗せされた時間は、きっと香も相当苦しかったはず。



お陰で、俺たちの間にあった壁はさらに厚みを増してしまった。

完全な自業自得だ。

分かっていたのに、関係を崩すのにお互い怯え、逃げていた日々。



「まぁ、ゆっくり穴埋めしていくさ…。」



もう手放せやしないのだから…。



トーストが焼ける香りが、かすかに漂って来る。

「さて、そろそろ行きますかね。」

俺はとりあえず、頭をぼりぼりかきながら、6階に降りることにした。

今日はどんな1日になることやら。


*********************
(2)につづく。





第6部スタートです。
って今回も15回もあんのかっ!!
奥多摩から3日目も慌ただしい1日になりそうです。

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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