06-04 Smell Of Gun Powder

第6部 A Day Of Ryo & Kaori

奥多摩から3日目


(4) Smell Of Gun Powder ***************************************************** 2739文字くらい



6階に着くと、

撩はそのまま香の両肩を後ろから押して、

脱衣所に誘導した。

「香ちゃんはこっち〜。」

「え?え?なんで?」

仕切りカーテンの前で、立ち止まり撩を振り返る。

「硝煙浴びちまってるから、シャワーで流してこい。」

「は?」

「いいから、早く行ってこいって。」

と、ポンと背中を押される。



「え?どういうこと?って、なんで着替えまで用意してあんのよっ!」

脱衣籠には、ジーパンにシャツに下着まで置いてある。

「あ、あいつっ!あたしの部屋から勝手にっ!!」

(し、しかも!あたしのお気に入りの下着を!!)

タンスをあさられるのは、

今に始まったことではないが、

伝言板を見に行っている間に

整えたに違いないこのセットに、

ますます意味が分からなくなる。



「な、なによっ、

自分だって硝煙の匂いが染み付いているって、

由香里さんの時に言ってたくせにっ。」

と、とりあえずしぶしぶ浴室に入った。

昼食の準備もあるので、手早く全身を洗って

ぶつぶつ言いながらも着替えをすませる。

ドライヤーで髪の毛を乾かすと、

リビングへ足を運んだ。



「撩、一体どういうこと?」

ソファーで横になっている撩に、

訝しがりながら声をかける。

「まぁ、こっちこいや。」

と涼しい顔をして起き上がり手招きをする相方。

香は一瞬、身が引いたが、

しかたなく撩の隣に座って、

次のセリフを待ってみた。

「……匂いは取れたな…。」

撩は、

そう言いながらくいっと引き寄せて、

当たり前のように髪に鼻を埋めた。



一方香は、

この状況に恥ずかしく照れながらも、

どこか納得がいかなかった。

「ねぇ、…あたしに硝煙の匂いがつくのは、嫌なの?」

「………。」

香を抱き込んだまま沈黙する撩は、

自分の矛盾した思いをどう説明するかしばし悩んだ。

「撩?」

「んー。いや、わかってんだけどさぁ。悪あがきだって…。」

「悪あがき?」

「おまぁさぁ、美樹ちゃんところで練習してた時は、

あっちでシャワー浴びてから帰ってくることもあったろ。」

「!!」

香の体がピクッと反応する。



「硝煙の匂いってさ、意外と残るもんでな…。」

髪に指を絡められる。

「髪や露出していた肌を洗い流しても、

硝煙かぶった服をまた着ると、匂いがまた移っちまうんだよ。」

香は、撩にバレないようにと

匂いを落としていったつもりの小細工が

いとも簡単に見破られていたことと、

撩に隠し事をしていたことが、

すでに知られていたことに、

不甲斐なさや罪悪感が胸の中で渦巻いた。



「……自分でも矛盾してるっつーのは分かってんだけどさ…。」

撩は続けた。

「こんな世界で、お前と一緒に生きていくって決めたんだ…。」

髪を優しく撫でながら、

香を自分の胸に埋めさせる。

「射撃の腕を上げる必要があるのは分かっててもさ、

お前には、

洗っても落ちないような硝煙の匂いは、

つけて欲しくなくってな。」




「………りょ。」




撩の言葉に心室心房が跳ねる。

「で、で、でも!もうあたし随分前から、トラップ使ってるから、

か、火薬の匂いは結構な付き合いよ。」

噛みながら早口でつい出た言葉。

「……俺の中では、火薬と硝煙の匂いは別もんなんだよな…。」

ゆっくりと返事をしながら、

腕に少し力を込めた。

香は、

撩の服の襟を両手できゅっと握り、胸板に頬を寄せる。

そして、少し考えた後、

すっーと鼻で息を吸い込んだ。




「……あ、あたしは、撩の硝煙の匂い、…き、きらいじゃ、ない、よ。」



ずっと一緒に暮らして来て、慣れ親しんだ撩の匂い。

硝煙とガンオイルと、タバコの香り。

こうしてお互いの距離が短くなってからは、

その匂いがより近く強く感じるようになって、

それが撩の命がちゃんとあることを証明してくれているようで。




「……なんだかね、安心する匂いだから…。」




撩は、香の言葉にドキリとして、肩が少し揺れた。

「……香。」

「ごめんね……、内緒で、練習してて……。」

香は、ここで謝っておかなきゃと、口を開いた。

「…パートナーなのに、隠し事してちゃ、だめだよね…。」

ふっと撩の呼息が聞こえた。

「あんれぇ?香ちゃーん、隠し通せると思ってたぁ?」

香は、右頬に手を添えられ、上を向かされた。

全てはお見通しという、

黒い瞳に、香はかっと赤くなる。

「りょ…。」

接近して来る撩のドアップ。

(くるっ!)

と、目をきゅっと閉じる。

そっと優しく重なる温かい唇に、

心臓がバクバクと鳴り響く。

やんわりと触れた唇は、初めは啄むライト級だったのが、

だんだん湿っぽい接触になっていく。

撩は、角度を何度も変えて、

浅く深く上唇下唇を動かしていく。




「ふっ、…ん。」




静かなリビングに、

甘い水音と息使いのみが耳に伝わる。





「……だめだ。」





「ぇ?」

そっと離れた撩は、眉間に皺を寄せて、香を抱き直した。

「このままじゃ、夜まで、待てねぇ…。」

「へ?」

どさっと音が聞こえたのは、自分がソファーに倒された音。

気付いたら、香の首筋に撩の唇が這っている。



「りょっ!ちょっ!ちょっとっ!」

(だ、だめっ!い、い、いくらなんでもっ、

こ、こ、こ、こ、こんな真っ昼間から、こんな明るいところでっ!!!)

焦る香をよそに、撩の手は香の体を撫で始めた。

「ま、ま、まってっ!りょっ…。こらっ!!」

「んー、香ちゃぁ〜ん♡。」

「待てって言ってるでしょうがぁあああ!!!!」

ドーンという音と震動がリビングに響く。

恥じらいハンマー100トンを招集させ、

これまた見事にクリーンヒット。

ソファーとハンマーの間で痙攣する撩から離れた香は、

顔を恥ずかしさで真っ赤にしたまま、

口をはっと押さえた。





「はっ、し、しまった!いつものクセでついっ…。」

とりあえず、

この場から退散したほうがいいと判断した香は、

後ずさりしながら扉に向かった。

「あはは…、撩、ごめんねー。

あ、あたし、お昼用意してくるからー。」

パタンと閉まる音と同時に、

香はキッチンへダッシュ。



撩は、

しばらくハンマーの下敷きになっていたが、

熱が冷めるのを待って、

ようやくコロンと100トンを押しどけた。

「はぁー。危なかったぁ…。」

自分の管制室がもはや機能しないことを痛感する。

(おまぁがハンマーを出さなかったら、んとに無理矢理やりかねなかったぞ。)




— あたしは、撩の硝煙の匂い、きらいじゃないよ。 —

— なんだかね、安心する匂いだから…。 —



(おまぁが、あーんなこと言うから、

元々少ない理性がぶっ飛んじまった。)

がしがしと頭を掻きながら、またごろんと横になる撩。

(でもな、

やっぱりお前から硝煙の匂いが漂うのが嫌だというのは、

間違いなく俺のエゴなんだろうけど、

どうしようもないんだよなぁ。)



矛盾を分かっていて、銃を扱わせることに、

いつ心の整理がつくのやらと、

ふぅと一息吐き出す。

撩は愛読書を顔にばさっと被せて、

リビングに差し込む昼前の日差しを雑誌の隙間から感じながら

ゆっくり目を閉じた。


*******************************
(5)へつづく。





実はですね、
高校時代にハワイに行った時、
実弾を撃つ機会がありました。
で、その時、花火とは明らかに違う火薬の匂いが漂ったのが印象的でした。
まぁ、思い込みも入っているかもしれませんが。
今、思えばもっとしっかり取材モードで、
自分が使った2種の銃がなんだったのかを確認しておけばよかったっと、
かなり後悔しています。
ソファーで撩が潰れるシーンは、
ミックを追い出してと香が撩に迫る、決闘前の昼のリビングのカットと
重ねて下さいませ〜。



【誤植発見有り難うございます!】
Aさま!やっと修正致しました!
「早く口」⇒「早口」ご指摘感謝申し上げます。
他、改行、言い回し等若干いじっております。
ご連絡本当にありがとうございました!
2016.01.28.02:18


【タイトル大間違いやんけ!】
今更修正です〜。
タイトルの「Smell Of Gun Powder」
をずーっと「Gum」としたままでしたっm(_ _;)m。
ゴム粉って何のこっちゃいですよね〜(バカバカっ)。
ご連絡くださった
ma様、本当にありがとうございました!
2017.02.13.22:49


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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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