01-05 Together Foever

第1部 After the Okutama Lake side


(5)Together Forever *************************************************************1921文字くらい




− あなたを、愛してる −



すっと撩の目が優しく細くなる。

撩は、香の告白に、

カラだった入れ物が全て満たされるような

今まで感じ得たことのない心地よい感覚に、

またしても人生初ともいえる体験をしていた。

(香を自分の腕の中に抱いて、包んでいるのは俺なのに、

俺が全体を包まれている感覚になるのはどうしてだ?)



もっと浸っていたいと思いながら、

香の両頬を伝う大粒の涙を、片方は親指ですくい取り、

片方は目を閉じながらキスで吸い取った。

塩分を感じる水滴は、初めて味覚が感知する香の涙の味。

胸の奥で感じる、物理的力でぐっと強く掴まれるような感覚に周章する。



撩は、香をきゅっと抱き寄せて、耳元に口を寄せた。

「……香。」

(足りないんだよな…。

この気持ちを表現するには、愛するって言葉だけじゃ……。)



自分のこの溢れた想いを単語にするには、『愛している』という言葉では言い尽くせない。

自分が使うには、陳腐さや滑稽さが伴ってくる。

終生、自分の命に代えてでも守りたい存在、

自分が自分らしくあることの必要条件とも言える存在。

こんな感情が自らに芽生えるとは、アメリカ時代は露とも想像していなかったのに。



「…りょ…。」

腕の中で香の体温が更に上がった。

抱き寄せる力をまた込め直しながら、愛より上の表現を考え巡らせる。

しかし、どの国の言語も、やはり、ぴったりくる言葉は見つからない。



「………これからも、……ずっと、一緒だ…。」



言葉が見つからなければ、これから香とどうしたいのか、

そう素直に考えた瞬間、口からぽろっと出た言葉。

このセリフは大脳を介していない、ほぼ脊髄反射であった。

撩自身がそれに驚いた。



どうも、香と真剣に向き合うことを決めてから、

今まで全てを計算尽くの上で発していた言動が、

『つい』や『うっかり』、『無意識』の連発になっている自分にやや焦りも感じる。

こんなことを感じさせ、こんなことを言わせる女も初めてだ。



照れと恥ずかしさをごまかすために、

香の頬を包み、小さな顔を上にそっと向かせ、

撩はまた濃厚なキスを続けた。

お互いの唇が、独特の音を奏でる。

飽きない。

いつまでも触れていたい。

こんなことを本気で思っている自分にまた一驚する。



香は、蕩けそうな頭の中で、撩のセリフを繰り返し反芻していた。

これもまた信じられないことだった。

不器用で天の邪鬼で秘密主義で意地っ張りで、

自分の想いの内を簡単には明かさない撩が、

あの時、「愛する者」とその口でしっかりと言葉にした上に、

更に自分にとって、最上級の言葉を紡いでくれるとは、本当に思ってもみなかったのだ。



香は、きっとこの男は、自分に好きとか愛しているとか、

好意を表現する直接的な言葉を絶対に言うはずはないと、

心のどこかで確証めいた思いを持っていた。



だからこそ、今、自分だけでも、ちゃんと想いを伝えておきたいと思って、

やっと音に出来た言葉だったのに。

そこに返ってきた言葉は、生きる未来が共にあることを宣言するものだった。



後ろ頭を支えられ、深く抱き込まれたまま、お互いの接点から熱が醸し出される。

「ん…、ふ…、ん。」

もう、心臓は走り終えたマラソン選手のように、激しい拍動を続け落ち着こうとしない。

鼻だけの呼吸では、もう追いつかない。

撩の告白に対して、ありがとうと感謝の言葉も言いたいのに、まぶたが重たい。

熱っぽく、足も地についていない感覚だ。



「っりょ…。」

しばらくして、香は息絶え絶えに、ゆっくりと口を離した。

「りょ…、ちょ、っと、……ご、めん。

ぁ、…あた、し、なんだか、…急に、…体調が…。

は…、体が、…熱くて、足元も…なんだか、…ふわふわしているの。

ど…しちゃったの、…かしら?」

顔をほてらせ、目は潤み、息の荒い状態のまま、伏せ目がちで訴える。

支えられている撩の腕にすがりつく形でなんとか立っている状態だ。



「…ま、まさか、…か、風邪でも、…ひき、はじめてるの、か、な…?」

撩は、自分の体の変化に理解がついて行けてない香の姿を見て、

自身のブレーキが焼き切れそうになった。

(か、香っ、その表情はやばいって!)

このままでは色んな意味でヒジョーにマズいと感じ、飛散しかけた理性をかき集め、

ここで一区切りつけて、教会へ戻る決心をした。



撩は頭をぶんぶんと横に振り、もう一度、香の口に狙いをさだめて、

唇全体をちゅーっと吸い上げポンッと離す。

「っん。」

「よ、よしっ!続きは帰ってからだっ!きょ、教会へ戻るぞっ!」

(は?続き、…って?)

脳内がメルトダウンしそうな香は、その『続き』の意味が分からなかった。

撩は、その香の表情を見ながら苦笑した。

(…俺、帰るまでもつかな…。)


*************************************
(6)へつづく。






本気になった香だからこそ、
安易に「愛してる」って言葉を使えないと思うんですよね。
ヤツは…。
でも、たまにそれを言葉で欲しがるカオリンにも萌えちゃいます。
すいません、ここもリョウカさんの雰囲気やセリフをお借りしてます。
らしさを表すセンテンスってどうしても限られてしまって…。
ボキャブラリーのなさに反省です。
ちなみに、リョウカさんのブログでは、引用オッケーと記載がありますので、
このご配慮にかなり救われております。
さて、お二人とも教会に早く戻りましょう〜。


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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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