06-05 Unnatural

第6部 A Day Of Ryo & Kaori 

奥多摩から3日目


(5)Unnatural  ***************************************************************** 2081文字くらい



「撩…、お昼できたよ…。」



香は少しドキドキしながら、

そっとリビングの扉を開けて、

隙間から覗いてみる。

さっきのことがあるので、

まともに顔を合わせられない。



L字型ソファーの長辺で

頭を出入り口側にして仰向けになっている撩。

愛読書を顔にかぶせたまま動かない。

両手は頭の下にある。

足音を立てずに、

ゆっくり近づいてみると、

すー、すーと寝息が聞こえてきた。

(寝てる?い、いや、寝たフリかもしんない!)

射程距離からすぐ逃げられるように身を構えた上で、

愛読書をぺりっと剥がしてみる。



「撩!お昼ご飯できたわよっ!」

まだ、すーすーと目を閉じたまま。

(たぶん、タヌキ寝入りね…。)

「スイーパーが、

こぉーんな無防備なところ、見せる訳ないもんねぇー。」

わざと大きな声で言ってみる。



「せっかく呼びに来たのに。

食べる気がないんだったら、そのまま寝てなさい!」

と踵を返そうとしたとたんに、

右手首をきゅっと握られた。

「あ!」

そのままどさっと、

撩の胸に倒れ込んでしまう。

(しまったぁぁーっ。

捕まったっ!

こ、こ、これじゃ、さっきと同じじゃないっ!)

自分の読みが甘かったことを即反省。



「食べる気あるって…。」

耳元に囁かれて香はドキリとする。

(うう〜、このやりとり、んとに心臓に悪いよ…。)

「じゃ、じゃあ、早く起きて食べちゃって!」

「それじゃ遠慮なく、いっただきまーすっ!んー♡」

さっきと同様スケベ顔で迫って来る撩に、

また脊髄反射で恥じらいミニハンマーを食らわせてしまう。

「ぐはっ!」

「あたしは、食いもんじゃないっ!」

撩の力が緩んだスキに、

香はするりと抜け出した。

「さっさと起きてちょーだいっ!片付かないからっ!」

バタンッとリビングの扉が閉まった。



「はいはい、今行きますよぉー。」

撩は、くすくす笑いながらハンマーをコロンところがし、

むくりと起き上がった。

(慣れさせるためとは言え、ちと調子に乗り過ぎたか。)

香の可愛い反応がたまらなく楽しい。

(撩ちゃん、クセになっちゃいそう〜。)

ご機嫌な気分で、

撩はキッチンに向かった。



廊下を出たらすぐに、

ミートソースとオリーブオイルの香りが漂ってきた。

キッチンでは、香がコンソメスープを用意している。

「あ、やっと来た。」

まだ顔を染めている香の表情に、

撩は笑いたくなるのをこらえる。

「は、早く食べちゃって。きょ、教授の家に行く前に、

か、か、買い物があるから。」

「はいよ。」

どもりながらの口調に、もうこっちも吹き出しそうだ、と

撩はくすくす笑う。

「な、なによ。」

「いや、かぁーいーなぁと思って。」

ボンっと水蒸気爆発する香。

持っていたオタマがコンソメスープの中にばしゃんと落下。

幸い飛び散らかりはない。



そんな彼女をよそに、

テーブルに並べられた食事を自分の方に引き寄せ、

フォークを差し込む。

本日のランチは、

ミートソーススパゲッティとサラダとスープ。

「いっただきまーす。」

撩はたっぷりパルメザンチーズをふりかけて、

わざとさっきと同じ口調で言ってみる。

勢い良くソースの絡まったパスタを吸い上げた。

仰せの通り、早く食べてあげましょうとばかり、

大盛りだったお皿はみるみる減っていく。



「りょ…、やっぱり、あんた、ヘンよ…。」

「んあ?」

対面の席について、

カップのスープをすすりながら、

香が赤くしてぼそぼそと話す。

「第一あんたが、

あたしを可愛いなんていうこと自体、

かなりヘン。

絶対あたしを他の誰かと勘違いしているんじゃないかって思うくらい、

すごぉぉぉーく不自然…。」

スパゲッティをくるくると巻きながら続ける。

「今までと違い過ぎて……、

何だか、色々慣れるのに、やっぱり、…時間、かかりそう…。」

香は、溜め息まじりで、口に最初の一口を運んだ。



そんなセリフを言わせるのは、

すべては俺の長年の言動のせいだと、

撩はまた自己嫌悪の念が沸く。

「まぁ、今までが逆に、不自然、だったんだろうな…。」

ぼそっと、食いながら言った言葉に、撩自身驚いた。

香もはっと顔をあげた。



恋人でもない。

夫婦でもない。

兄妹でもない。

正式な家族でもない。

ただの仕事のパートーナーという立ち場だけで、

お互い、命を預ける信頼を交わして来た仲。

そして、

表の世界に戻さなければという言い訳をしながら、

香の想いと自分の心から逃げていた撩。

相思相愛でありながら、

健全な大人が同じ屋根の下、

綱渡り状態に近いギリギリのプラトニックな日々。

6年8ヶ月も生活を共にして、

何もなかったほうが不自然だったのだ。



「撩…。」

「いいんじゃね、少しずつ慣れていけば。」

「撩、あんた、やることなすこと、

180度変わってるってこと分かってる?」

「もっちろん。」

わざとにやけて返事をしてみる。

「ボクちゃん、箍がはずれちゃったみたいだしぃ〜。」

「はぁ?」

フォークを持ったままきょとんとする香。

撩の言う、

箍がはずれたという意味が一体何をさすのか、

香は分かっていない。

そんな相方の表情を見ながら、

ぷっと笑う撩。

「さ、早く食っちまおうぜ。これから出かけるんだろ?」

「ううー。」

まだ、どこか納得いかない香も、

とりあえず食事を進めた。


******************************************
(6)につづく。





そうなのよ!!!仕事上便利だからと、
同居・同棲している状態で、
いい大人のあんたたちは何やってんのよ!!と
振り返れば振り返る程はがゆい時間でしたね〜。(⇒「は」が抜けてました!mさん感謝!)
「CHパーフェクトガイドブック」では、
香が401から5階、そして6階の客間へ
引越しをしてきたことが説明されていますが、
それを許し受け入れた撩の心理もまた、
嬉しさや心地良さと共に、
困惑や罪悪感も常にあったのかもしれませんね〜。
撩にとって、香は一緒に暮らすことを心から許せる
最初の家族的存在だったかもと。
最初ということは、
流れでは次に得られる家族もあると思いたくなりますよね〜。
でも、まだお子ネタは、当分当サイトでは、
捻出できそうにないです〜。
読むのは大好きなんですが〜。

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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試運転中…

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