06-07 The Code Of Flower

第6部 A Day Of Ryo & Kaori 

奥多摩から3日目


(7)The Code Of Flower *******************************************************2961文字くらい



香は、ある程度、作業に区切りがついたところで、

買って来た花を美樹の部屋に持って行くことにした。

剪定バサミと花束を抱えて、廊下を進むと、

日本庭園の奥で、

教授と撩がこちらに背中を向けて何やら話している姿が見えた。

「なんだか、ろくなことを話していないように見えるのは思い込みかしら?」

香は、あえて気にしないことにして美樹の部屋に向かった。



コンコンと軽いノックをする。

「はい?」

美樹の明るい声が聞こえて来た。

「美樹さん、今いいかしら?」

「どうぞー。」

かちゃりと扉を開けると、昨日と変わらない姿の美樹が出迎えてくれた。

持っていた本を脇に置いて、笑顔を向けた。



「いらっしゃい、香さん。」

「今日の気分はどう?美樹さん。」

花を持った香がベッドに近づきながら、美樹に尋ねた。

「薬がよく効いているせいだと思うけど、痛みは殆どないわ。ただ…。」

自分の右肩を見つめながら続ける美樹。

「ただ…?」

「ヒマなのよねぇー。体も動かしたいけど、上半身はそうもいかないし。」

「上半身って。」

「足腰は動かしてるのよ。

スクワッドこっそりしているのは、ファルコンにも教授にも内緒ね。」

きょとんとする香と目があった美樹、二人同時にぷっと笑った。



「まずは、お花取り替えてくるわ。」

美樹の様子に安心した香は、笑顔で花瓶を脇に抱えた。

「ふふ、ありがと。」

香は、洗面所で花を整えながら、美樹の元気そうな姿にどこか救われる思いがした。

やはり、大事な日に、

自分たちが原因でこんな大ケガをさせてしまった事実は変わらない。

とにかく1日でも早く傷が治り、お店に立つ美樹さんが見たいと

真剣に願わずにはいられないのだ。



「お待たせー。ちょっと香りがきついかもしれないけど…。」

香は、ベッドサイドに新しく生け直した花を飾った。

「ううん、この香り好きよ。

ピンクのバラが一番良い香りを出してるみたいね。」

美樹は、目を閉じてくんと鼻を鳴らしてみる。

「花屋さんでね、

花言葉に『回復』って言う意味がある種類を選んでもらったの。」

香が買って来た花は、イタドリにスズラン、桃色のバラ。

美樹は、その香の気遣いにじんとくるものを感じた。

「ありがと。香さん、とても嬉しいわ。それにしても花言葉って面白いわねぇ。」

花瓶を眺めながら、美樹は優しい表情になる。



「私やファルコンは、傭兵時代に作戦とかの暗号として、

花言葉を使ったことがあったけど、

あの時は、

なかなか花を愛でるっているゆとりがなかった気がするわ。」

香は、はっと美樹を見つめる。

あまり語られない彼女の過去に、

改めて今まで生きて来た世界が違っていたことを感じた。

美樹も撩と同様、幼い頃に両親をなくし、戦場で生きて来たのだ。



— 銃で撃たれたのも初めてじゃないわ。 —



そう語った美樹の言葉を思い出した。

美樹が撃たれたその時、ファルコンの気持ちはいかほどだったか、

考えると、胸が締め付けられた。



そんな香の表情に気付いた美樹は、続けた。

「今は、みんなのおかげで、その“ゆとり”を貰っているわ。香さん。」

「美樹さん…。」

美樹の微笑みに、香もふっと表情が緩む。

お互い、ふふっと小さく笑った後、香は今後の動きについて話題を切り出した。



「海坊主さんと撩は、

今日は準備で出かけるって聞いたから、一応お弁当用意しているの。」

「まぁ、ありがと!きっと喜ぶわ!」

「そ、そんな…、たいしたものじゃないからっ。で、でね。」

と照れながら続ける香。

「今晩は、私と美樹さんと教授の3人で夕食を食べて、遅くにかずえさんが戻ってくるから、

また明日夕方ここにくるわね。」

「ありがとう、香さん。」

「それで、今日はあたしが美樹さんのお風呂を

お手伝いするように言付かっているんだけど…。」

「ああ、お願いするわ。

体はかずえさんとファルコンに拭いてもらっていたけど、

髪の方は、あれからまだなのよ。

そろそろむず痒くなってきたわ。

戦場では、何日も入浴できないのは当たり前で平気だったのに…って…、あら?」



ファルコンに拭いてもらったという言葉に過剰に反応してしまった香は、

かぁあ〜と頬が染まった。

「か、香さん、大丈夫?」

しゅーしゅーと湯気を出す香に苦笑する美樹。

(本当に香さんって可愛いわぁ)

「え?あっ、ええ!大丈夫!」

と赤い顔をしながら、ぶんぶんと顔を振る香。



「そ、それでね、かずえさんの話しでは、

全治約2週間ってところで、その後リハビリを1週間かけてするんだって。

今日が3日目でしょ。

で、かずえさんがあと4日ほど実験から手が離せないみたいなの。」

「かずえさんも大変ねぇ。

私は実験とか全く分からないから、彼女の研究って未知の世界だわ。」

「免疫系が専門みたいだけど。」

「だから、ミックのリハビリにも最適な役割だったのね。」

あの二人がこのような形で出会い、心が通じ合ったのも、

何かの運命を感じざるを得ない、と美樹と香は同時に思っていた。



しばしの沈黙の後、香は続けた。

「で、あと4日は、あたしたちがここに通うから。

あとは、かずえさんが終日動けるって言ってた。あ、でも待って、確か…。」

香は手帳を見直す。

「あさっては、かずえさんが一日こっちにいるって。」

「香さん、本当にありがとね。

なんだか、冴羽さんから香さんを取っちゃっているみたいで、申し訳ないわぁ。」

また、香は沸騰状態。



「い、い、いやだわっ、み、み、美樹さんっ!そ、そんなこと全然、な、ない、からっ!」

そんなに噛んでいては、誰も信じないわと、美樹は香の反応が面白くて、

ついつい、続けてしまった。

「そんなことあるって。きっと冴羽さん、

香さんとあまり離れていたくないんじゃないかしら?」

あうあうと、言葉にならない音を発している香がちょっと気の毒になった美樹。

(少しからかい過ぎたかしら?香さんのその可愛い反応なら、

冴羽さんも過保護になる気持ちも分かるわぁ。)



美樹は、微笑みながら、また口を開いた。

「香さん、そんなに照れなくていいのよ。」

「み、み、み、美樹さんっ、

あ、あいつは相変わらずだからっ!じゃ、じゃあ、あたし食事の準備してくるからっ!」

と、高熱を出したまま、急ぎ足で美樹の部屋をあとにした。



美樹は、ふふっと笑いながら、口元に手を添えた。

「『相変わらず』じゃないことは、バレバレなのに。

ふふ、そのうち、お惚気話しを色々聞かせてもらえるかしら?」



長年、じれったい関係を続けてきた二人が、

ようやくケジメを付けて、一緒に生きる決意をしたのだ。

乗り越えなければならないことは、

これから沢山あると思うが、

きっと香が思う以上に、撩の愛は大きいと、

妹のような彼女がこれから味わう生活を美樹も心から祝福した。



(きっと、冴羽さんは香さんを闇に堕としてしまったと、

自責の念や、後悔を、きっと拭いきれないままかもしれない。)

美樹はふっと窓の外を見る。

自分たちが生きる世界を振り返れば、これから先にどんな闇がからんでくるか、

全く分かったものではない。

しかし、それをお互い理解した上での、ケジメなのだ。

決して安易な選択ではない。

それは、自分もかずえも香も同じはず。



(大丈夫よね。)



彼女には、乗り越える強さがある。

分かっていないのは当の本人たちくらいだ。

だから、無用な心配はいらない。

そんなことを思いながら、美樹はまた本を手とった。


****************************************
(8)につづく。




花は、季節外れのモンばかりで、
ハウス栽培ということにして下さ〜い。
しかし、銃創の治癒がどれくらいかかるか
まったく分からんままなので、
流れに矛盾が出てくるかもしれませんが、
とにかく、美樹ちゃん早く治ってちょーだい。

スポンサーサイト
プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


9万hit記念に
とりあえず作ってみた
CH専用Twitter
 


拍手1000パチ記念につけちゃいました。



かなり便利なサーチツール

登録サイト最新情報はこちらをチェック!


試運転中…

カテゴリ
最新記事
月別アーカイブ
検索フォーム
QRコード
QR
現在の閲覧者数: