06-09 Miki's Bath Time

第6部 A Day Of Ryo & Kaori

奥多摩から3日目


(9)Miki’s Bath Time  ********************************************************* 2753文字くらい



美樹のケガは、

右肩の貫通射創で、

幸いにも傷の出入り口が小さく、

骨や大きな血管を傷付けずに抜けたので、

とにかく動かさないようにし、

痛んだ筋肉が修復されるのを待つ状態である。



ただ、痛み止めが切れると、

かなりの激痛が常時神経を襲う。

毎食後の薬の服用はかかせない。

美樹は部屋に戻って、こくりと錠剤を飲むと、

タオルを持って浴室に向かった。



すでに、

香は短パンに履き替え、シャツも腕まくりして、

美樹の座る椅子まで整えている。

「じゃあ、美樹さん、ここに座って。」

「ありがと。」



香は、

美樹の首周りにうなじが見えるようにタオルを巻いて、

かずえに用意してもらっていた

散髪用のビニール製ケープで、

美樹の上半身を覆った。

「熱かったら、ちゃんと教えてね。」

そう言いながらシャワーのコックをひねる。

「ええ。」



美樹は座ったまま、

頭を浴槽に突き出す形で、

ウェーブのかかった黒く長い髪の毛をゆらりと垂らした。

香は、

斜め後ろから優しくお湯をかけていく。



「あ、あたし、他の人の髪の毛洗うの初めてだから、

何だか緊張するわ。」

「ふふっ、記念に好きにいじってもいいわよ。」

俯いたまま美樹は楽しそうに返した。

「いやだ、なんかドキドキしてきちゃったわ。」

二人ともぷぷっと笑う。



充分お湯が回ったところで、

香は一度シャワーを止めた。

シャンプーを手にとり、濡れた美樹の髪に馴染ませる。

「1回目のシャンプーは余洗いだから、2回洗うわね。」

かずえのアドバイス通り、

入浴が制限されて、やや頭皮の脂がまわった髪は、

泡が立ちにくいと香は実感した。



「香さんの指が気持ちいいわぁ。」

その言葉にちょっと照れてしまう。

しゃかしゃかと髪全体をもみあげ、

一通り泡がまわると、

香はシャワーからお湯を出し、

丁寧に漱(すす)いだ。




「美樹さんの黒髪ってツヤツヤしてて、

すごく健康的に見えるわ。」

流しながら、素直な感想がぽろりとでる。

ボリュームのある波を描く髪に、

香は少しうらやましく思った。



「そうかしら?

これでも手入れが結構めんどうなのよねぇ。」

「あたしも、

伸ばしたらとんでもないことになるから…。」

香は話しながら2回目のシャンプーを

同じように髪に梳き込ませた。



「あら、でも色は地色でしょ?

明るい栗色で、ふわっとしていて、

とても触り心地がよさそうだわ。」

香は、ぼぼっと赤くなった。

「そ、そんなことないわよっ。」

美樹の言葉に、

つい撩が自分の髪をくしゃっとする場面が

ポンと頭に浮かび、

洗う手の動きがぎこちなくなる。

それでも、

明らかに先ほどより泡立ちがいいのがよく分かった。



「じゃ、じゃあ流すわね!」

余計なことを考えて、

赤面しているところがバレないようにと、

洗髪になんとか集中する。

「はいはい、お願いしま〜す。」

美樹は、香の言動の変化に、

何を思っていたかが手に取るように分かり、

ついクスクスとにやけてしまった。



「つ、次は、リンスね。」

原液を洗面器で薄めて、

全ての髪がコーティングされるように、

十分に液体をまわした。

美樹の白いうなじが、

同じ性を持つ香にとっても、妙に色っぽく見え、

どきまぎする自分にやや戸惑う。



「私も昔は、ショートカットだったのよ。」

「え?美樹さんも?」

「そう、少年兵っぽく見えるように、

もはや男装といった感じだったけどね。」

懐かしそうに、美樹は語り始める。

「……ファルコンが日本にいるって分かってから、

やっと探し当てて、久しぶりに再会した時に、

彼すっごく驚いてたの。」

「海坊主さんが?」

「だって、ファルコンは短い髪の私しか知らなかったから、

いきなりロングヘアで押しかけて来た私に、

もう言葉が見つからないってくらいワタワタしてたわ。」



香は、

驚きと照れであたふたするファルコンが

容易に頭に浮かび、

肩を揺らして笑った。

「ぷっ、ふふ、海坊主さんらしいわ!」



「そんな中で、私が結婚を迫ったものだから、

ますますファルコンは慌ててね、本当に苦し紛れに

『冴羽を倒したら考えてやる!』って、

顔を真っ赤にしながら言ったのよ。

あの時は、必死だったなぁ…。」



「ほんと、美樹さんと最初に会ったあの時は、

かなり驚いたけど、

今となっては、懐かしい限りね。」

「まったく、そぉーよねぇー。」

香は、髪を丁寧に揉みながら、

美樹の店に初めて訊ねた時のことを

思い返していた。



「じゃあ、そろそろリンスも流すわね。」

「ええ、お願い。」

香は、シャワーのコックを開き、

ぬるいお湯でリンスを洗い流した。

「んー、気持ちいい!」

「タオルで水気を取るから、体起していいわよ。」

「よっと。」

背筋を伸ばした美樹の後ろに立った香は、

しっとりとした髪の毛をバスタオルでそっと包んだ。



「私の髪の毛、乾きにくいのよねぇ。」

「大丈夫よ。ドライヤーもかけるけど、もうちょっと拭いてからね。」

「ありがとう。香さん。」

香は、ケープを取って、

美樹の髪に適度な圧をかけて水分をタオルにすわせた。



香は美樹を脱衣所に促し、

洗面台の前のイスに美樹を座らせる。

「ドライヤーも熱かったら言ってね。」

そう言って、

スイッチをオンにするとゴォーというモーターの音が響く。

「そんなに、気を使わなくてもいいのよ。香さん。」

「ううん、これが今、私ができる数少ないことだもの。」

(だから、精一杯努めたいのよ。)

香は、まだ美樹の傷に対して罪悪感が払拭できずにいる。



「でも、嬉しいわ。香さんとこんな時間を過ごせるなんて。」

美樹の言葉に少しドキリとした。

「そ、そう?」

ドライヤーの音でやや聞こえにくいので、

お互いいつもより声が大きくなる。



「だって、こんなことそうそうにないわよ。

普段は、私はお店で、

香さんはカウンターっていうパターンが殆どでしょ?」

「言われてみればそうね。」

お互い鏡越しに視線が合う。

「思えば私たちの出会いも、なんだか運命って感じだわ。」

「っほんと、不思議な巡り合わせよねぇ〜。」

二人とも、

お互いの顔を鏡で見ながらくくっと笑った。



数分後、カチリと熱風をオフにする。

とたん静かになる洗面所。

「さ、もう乾いたみたい。こんな感じでいいかしら?」

香の言葉に、

美樹は自分の左手でうなじから髪をかきあげた。

「ええ、ちゃんと中まで乾いたわ。ありがとう、香さん。」

「どういたしまして!」

そう答えながら、いつか自分も撩の髪を洗ったり、

洗われたりということがあるのだろうかと、

ふと考えただけで、勝手に体が熱くなる。



「じゃ、じゃあ、ちょ、ちょっとお茶でも飲みながら、

い、一服しましょうか?」

「そうね。」

くすりと微笑みながら返事をした美樹は、

急に照れ始めて噛みまくる香が、

何を想像したか、

先ほどと同じく、

美樹はなんとなく分かってしまった。



「え、えーと、こ、これはここに戻してっと。」

香は自分の妄想をごまかすように、

バタバタと周辺の後片付けを軽くした後、

美樹と一緒に、キッチンへ向かった。


*************************
(10)へつづく。





うーん、
確かに香が美樹の洗髪をするというシーンは、
他ではあまり見たことないですね〜。
美樹ちゃん、いいな〜。
ワタクシも洗ってもらいたい〜。
次はお弁当持って出かけた二人のシーンです。


【誤植発見ありがとうございます!&若干改稿しました】
「勤めたいのよ」⇒「努めたいのよ」に修正しました!
mさん、ご連絡ありがとうございました!
2016.02.07.03:58

若干改稿
2017.02.13.22:39




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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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