06-10  Dinner In The Car (side Ryo)

第6部 A Day Of Ryo & Kaori 

奥多摩から3日目


(10) Dinner In The Car (side Ryo) *******************************************2056文字くらい



海坊主と美樹ちゃんの結婚式から3日目の夜。

俺とタコは、再び大井埠頭に向かった。

その前に、キャッツに寄り道して、車を変える。

もちろんナンバーもニセモノに変えてあるものだ。

クーパーに積んであった必要な道具は、

教授宅を出る時にタコの車に移し替えたが、

さらに引っ越しをさせる。



昨日と同じ車では、もし下見にあちらさんがいたら怪しまれる。

下準備でも、こういった用心はかかせない。

ついでに、作業服に着替える。

港にいてもおかしくない作業員に扮するため。

着ていた服は、作業服を入れていたカバンに詰め込み、

乗り換える車にも放る。

タコも着替えたが、よくそのサイズのつなぎがあったもんだ。

特注か?

かえって目立ちそうだぜ。

ワンボックスカーに乗り込み、再出発。

運転は俺。



「おい、メシどうする?」

俺は、後部座席の香の弁当をミラーでちらっと見ながら言った。

「……後で食うか、先に食うかってことか?」

海坊主のセリフに若干照れが入っている。なぜだ?

「あと、どこで食うか。」

んだよ、このタコの微妙な空気は。

「お、お前に任せる。」

おいおい、そこ赤くなるところじゃないだろう!

「んじゃ、先に俺らの燃料補給っちゅーことで、首都高のパーキングにでも寄りますか。」



車のライトが必要になった頃、

大井埠頭から一番近いパーキングに止まり、

狭いが我慢して車内で食べることに。

現場の近隣でむやみに外に姿をさらさないほうが、

リスクが低くなるからだ。



バスケットから2つある大きな重箱を持ち上げ、1つをタコの膝に乗せた。

「ほれ。」

「あ、ああ。」

ちょっとぎこちないタコ、訝しがる俺。

いったい何なんだその反応は。

ひとまず弁当を開ける。

まだ、温かさが残っている。

にぎり飯とサンドイッチが両方楽しめる欲張りなメニュー。

タンパク質系も野菜系もクシが刺してあり、

手を汚さずに、片手で食べられるようになっている。

まぁ、よくもあの短い時間でこれだけ用意できたもんだな。



「さっさと食っちまおう。」

「あ、ああ。」

さっきからどうもタコの様子がおかしい。

調子が悪いという気配ではないが、なんでこの状況で赤面してんだよ。

気色わりぃな。

ハグハグと食べ始めた俺を気にしながら、

タコもメインのおかずに手を伸ばした。



「ふん、香の料理は店で出せる価値があるな。」

「おいおい、お世辞は本人の前で言ってくれよ。」

がつがつと食っている俺に向かって、

タコはふっと唇を緩ませた。

「……香には、気を使わせてすまんな。」

「は?」

俺はにぎり飯を頬張ったまましばし固まった。

「あっ、いや、その、なんだっ、お、お前も、香とゆっくり、その、

す、す、すっ、ごっしたいん、じゃ、っないのか?」

ぼしゅっと蒸気機関車のごとく様相が変わった。



おいおい、俺と一対一で香のことを話すときまでも、

どうしてそこまで沸騰できるんだろうねぇ。

もしかして、それが言いたくて、挙動不振だったっつーの?

俺は思わずふっと口角があがった。



ぱくっとおかずを口に放り込みながら、返り討ちを狙う。

「お前だって、新婚早々美樹ちゃんを残して仕事やってんだ。

一緒にいたいっつーのはむしろ美樹ちゃんの方だろ。」

「ぐっ、…だ、だ、から、その、おまえたちは、その、

よ、よ、ようやくだなっ、……。」

そこまで言ったタコは、これ以上ないくらい茹で蛸になり、

言葉が止まった。

「い、いや、な、何でもないっ。」



しゅーしゅー言いながら何でもないとはないだろ。

あー、つまり、こいつは、俺らがやっとこさ、ケジメをつけたことを感じて、

一大事とも言える人生の節目の直後に、

こうして自分の仕事に付き合わせていることに

罪悪感を持っているっちゅー訳だな。



「余計な心配すんなっつーの!」

口をサンドイッチで膨らませてもぐもぐしながら、

澄まし顔で言ってみる。

海坊主は、少しだけ、はっとしたように体が動いた。

「んなことより、さっさと食っちまって、さっさと片付けようぜ。」

片付けるというのは、メシのことではなく、

今晩現場ですべき小細工のこと。



前の俺だったら、

“あんな男女とゆっくり過ごすだぁ?冗談過ぎるぜぇ”

とか、

“ようやくってなんのことだぁ?アイツはただの仕事のパートナーだっ”

と、否定しながら、ごまかすのがセオリーだった。

海坊主の言葉を肯定するような言い回しをした己に自分でもやや驚く。



しかし、冗談抜きでさっさと終わらせちまいたい。

早く教授宅へ戻って、

香と一緒に一刻でも早くアパートに帰りたいんだが、

そんな気配を少しでも出そうもんなら、

またコイツやミックにからかわれるのがオチだ。



お、水筒の中身は、ほうじ茶か。

ぐびりと飲んで、自分の分は平らげた。

「ごっそさん!お前もさっさと食えよ。」

「あ、ああ。」

海坊主の手のサイズには、にぎり飯もサンドイッチもみな小さく見えるが、

そこそこ量があったので、

俺らはとりあえず一食分満足して晩飯を終えた。



「じゃあ、出るぞ。」

すっかり辺りは暗くなり、街の光が賑やかに見えるのを

視界の端に捉えながら、

目的地へと急いだ。


***************************************
(11)へつづく。





あの湖畔での二人のハグシーンを最も近くで見ていた(感じていた)海ちゃん、
待たされた時間や、直後の二人の雰囲気、
翌日に教授宅で感じた変化などなど、
もうファルコンには、いやっていう程、コトの状況は分かっていると思います。
いつも自分たちの前できゃんきゃん喧嘩ばかりしている2人が
大人の関係になっちゃったことも、しっかり認識しているでしょうし、
ついそーゆーシーンを想像しちゃって、勝手に沸騰しちゃったりぃ〜。
自分の仲間が増えたと、海原戦の直後に喜んでいた姿もあるので、
本当は、撩に祝福の言葉でも伝えたいところかもしれませんが、
海ちゃんも、香に負けず劣らず超照れ屋なので、
結局ここでは言い損ないました〜。

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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