06-11 Trap (side Ryo)

第6部 A Day Of Ryo & Kaori

奥多摩から3日目


(11)Trap (side Ryo) ********************************************************** 2155文字くらい



夜の大井埠頭。

平らなアスファルトが広く続く中で、

各所にコンテナが高く積み上げられている。

倉庫も整然と並んで、なんとも無機質な空間だ。

前日の下見で見つけた、ちょうど死角になる場所に車を止める。

しかも、関係者の出入りに見せかけるように、

怪しまれない場所を選んだので、

いたって自然な侵入だ。



エンジンを止めた車内で、まずは気配を読む。

深夜に到着する大型船の貨物を受け取るための、

作業員が二ケタは動いている。

目視で、周辺を見ると、やはりいた。

恐らく、前日の見張り役であろう、

南ガルシア政府の関係者らしきスーツ姿の男が数名。

怪しいモンですって自分から言っているようなもんだ。

顔立ちはアングロサクソン系。

左胸の膨らみは、銃の所有の証。

素人に毛が生えたようなもんだ。



「ふ…ん。」

「撩、把握は出来たな。」

「あぁ。」

「今日はやり合う気はない。全ては明日だ。」

「わぁーってるよ。」



明日の荷の運び出しは、相当数の雑魚が集まることが予想される。

片っ端から殺しちまってもいいが、

後々冴子が処理に苦労することや、香に不安な思いを増やすことにも

つながるだろうから、

致命傷の寸止めで戦闘能力を奪うのが、

このところの俺とタコの暗黙の了解。

まぁ、俺だって必要のない殺しはしたくない。

あっちにいた頃は、こんなことは考えもしなかったが。



「出るぞ。」

「ああ。」



俺らは外に出ると、リアハッチを開けて、荷物を取り出した。

つなぎの作業着を着ているので、

端からみれば、本当にただの作業員だ。

タコの巨体を除けばな。

明日のターゲットのスーツ男たちから見えない位置に移動。

まぁ、気づかれてもなんとかなるだろ。



打合せ通りに、破壊力を落としたプラスチック爆弾、

閃光弾と催涙弾に模した手榴弾を複数箇所に仕掛けていく。

怪しまれない動きで、かつ死角になるように作業開始。

鉄骨やドラム缶の側面、階段下など、めぼしい場所を絞り込む。

プラスチック爆弾は、建物への被害が殆ど出ないように調整してある。

とにかく今まで公共施設をぶっ壊して

冴子にこっぴどく苦情を言われたので、

俺たちなりの配慮。



基本は、弾丸で打ち抜いて作動させることを前提にするので、

ワイヤーやタイマーは使わない。

分かるように仕掛けちゃだめだ。

しかも、弾を撃ち込めるように一部露出させなければならない。

そして、証拠隠滅のために全ての仕掛けを使用するお約束付き。

数にモノを言わせてくる相手方に対しての

ちょっとしたイタズラだ。



ジャングルで暮らしていたあの時は、生死を決めるシビアな背景のトラップ作り。

ソレとは違う余裕を含んだこの作業に、

なんだか、香がトラップをしかける時の気分が少し重なった気がした。

ちょっと楽しいぞ、これ。



「おい、撩、何をニヤニヤしてんだ。」

「何でもねぇよ、っておいタコ!お前に俺の顔見えるわけねぇーだろ。」

「ふん!雰囲気、気配、息づかいで分かるんだ!」

これは、否定しなかったことを少しばかり後悔。



「撩、お前、今トラップしかけながら香のことを考えていただろ。」

「っ!」

図星を当てられ、やや動揺するも、表情筋は動かさないままで答える。

「はん、これにやられる雑魚共の姿を連想してたらおかしくなっただけだ。」

「まぁ、そういうことにしといてやる。次は隣の棟だ。行くぞ。」

海坊主は、全てお見通しという空気で荷物を背負い直した。







「……こんなもんか?」

ほぼ空になったザックとカバンを持ち直し、

海坊主に言った。

「ああ、これだけありゃ、明日相当楽ができる。」

「拘束用のロープと針金は?」

「あそことあそこだ。」

海坊主は3カ所を指差し、隠し場所を伝えた。

「了解。」

船が入って来る位置は聞いといたが、当日そこに着岸するとは限らない。

船体の特徴も、今ある情報と違う可能性もある。

そして、密輸出されるコンテナもダミーがあるかもしれない。

いずれにしても、俺らが仕事をしている間、

ミックと教授の情報操作によって、

南ガルシア政府の根幹が揺るぐ事案が明るみになり、

奴らは、それを速報で聞きながら戦闘意欲喪失状態ということになるだろう。



とりあえず、海坊主が暴れている間、

俺はブツの入ったあの巨大な箱を海にドボンとするだけ。

ハエが多くて煩わしそうだが、クロイツ親衛隊レベルではないだろう。

30分でカタを付けたいところだ。

明日のイメージが固まってきたところで、撤退を促す。



「海ちゃん、そろそろ帰ろうや。」

「あぁ、明日は10時頃にここにくればいいはずだ。」

「んじゃ、メシは教授宅でゆっくり食えるな。」

「食い過ぎて動けないなんてことになるなよ。撩。」

「余計なお世話だ。」



空の荷物を車に放り込み、運転席へどかっと座った。

「さっさと乗りな。」

また狭苦しそうに巨体を助手席に沈めて、んと大変だな。

左に沈んだ車体をぐいんとUターンさせ、

俺らは教授宅へスピードを上げた。

家には、今日中に帰れそうだな。



「撩、違反で捕まったらシャレにならん。落ち着いて運転しろ。」

タコがぼそっと言った。

はは、早く帰りたいのがバレちまっているか?

「っせーなー。お前よりも遥かに安全運転だ。」



尾行してくるヤツもいない。

ああ、早く終わらせちまいたいぜ。

既に俺の頭の中は、

今晩香とどう過ごすかで満たされていた。


*****************************************
(12)へつづく。





まぁ、この二人にはこんな小細工なしで、
当日いきなり本番スタイルでも問題ないと思いますが、
今回は予備情報が入っているということで、
冴子ちゃんに気ぃ遣ってます。

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きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
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中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
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