01-06 In THe Forest

第1部 After the Okutama Lake Side


(6)In The Forest ****************************************************************1710文字くらい




撩は、中腰になって、両腕を香の膝裏と背中にまわし、

ひょいっと抱き上げた。

いわゆるお姫様抱っこのスタイルだ。

「わっ!ちょ、ちょっと!自分で歩けるわよ!」

赤くなって驚く香にかまわず、撩はそのまま小走りに現場を離れた。

「いいから!タコが車で待っているはずだ。

あまり遅いと、後で何を言われるか分かったもんじゃねぇ!

ちゃんと掴まってろよっ。」

そう言いながら、過去のことに想いを巡らす。



(香をお姫様抱っこするのって何回目だっけ?)

ジェネラルを倒した時のことや、

北原絵梨子の水着事件、

手錠の鍵を犬に飲まれた時、院内を突っ走ったことなどを思い出す。

(リビングから客間へ運んだことも何度かあったよなぁ。

あ、一度俺の部屋に寝かせたこともあったか…。)

むしろ軽いとも言える心地よい重さと温かさ。

しなやかな体の柔らかさも直に感じ、おのずと顔が緩む。



撩は、道とは言えない森の中、倒木をひょいひょいと越え、

視界には木漏れ日の影が次々と横に流れて行く。

端から見ると、大人一人を抱えているとは思えないくらいの

軽い足取りとスピードに、

香も改めて撩の基礎体力の高さを思い知る。

(うぅ〜、なんだか恥ずかしいぃ。

自分は、大柄なほうだからお姫様抱っこなんて、

そうそう縁がないものと思っていたのにぃ。)

耳からもしゅうしゅうと湯気が出る。



と、進んでいた撩の歩みが少し遅くなった。

この先は、撩とファルコンが親衛隊と闘った痕が、そのまま痛々しく残っている。

抉られた木の幹に、葉や枝は所々焼け焦げ、銃弾の痕もそこかしこに目に入る。

流血したまま倒れた兵士も夥しく、生臭い血の匂いも皮膚が焼けた焦げ臭さと一緒に漂い、

呻き声が所々で漏れる中で、銃器も熱を持ったまま転がっている。



しばしの躊躇の後、香に声をかける。

「香、このまま森を突っ切るぞ。」

森を抜ける道を進みながら、香は撩の方を見る。

「たぶん、死んではいないと思うが…、

俺とタコが倒したクロイツの兵士がそこら中に転がっているけど、

遠回りしているヒマがねぇ。」



戦いの痕跡をさけて森を抜ける手もあったが、

待たせているファルコンのことを思うと、

余計な時間はかけたくない。

戦闘の後をそのまま戻ることにしたが、

撩の本心は、砲弾や銃弾で痛んだ森の様子と、

出血して呻き倒れている兵士たちの姿を香の目には入れたくなかった。

自分を救出するために、

瀕死の重傷を負わされている人間を

多数目に入れることが、香の心理にマイナスになる予感もあったからだ。




しかし、過去を思い返せば、

シュガーボーイの香に出会った時でさえ、

不世井重工の社長宅での荒療治を目の当たりにしても

取り乱すこともなく、

海原戦で看板の上に転がる多数の海原の部下たちを見ても、

香は動じなかった。

香の前で、人を死に至らしめたことも何度もある。



隠す必要はない、自分たちの生きる世界がこんなものだと、

再認識させる機会の一つでもあるかもしれない。

撩はそう考え、あえて目を閉じろという言葉を飲み込んだ。




「うん、わかった。」

香は撩の瞳の奥にあるものを感じながら、太い首と肩に腕を回した。




所々に、複数の男たちがまとめて縛り上げられて

木の幹に括(くく)りつけられている。

恐らく、ファルコンが車に戻る途中で、

意識が戻って身じろいでいる兵士に気付き、

拘束したのだろう。



あの親衛隊の数から受けた攻撃の中で、

相手に致命傷ギリギリの傷を負わせた上で戦闘能力を奪うことは、

撩もファルコンも、やや難しい状況だった。

しかし、闇に身を置く立ち場ではあるが、

必要がなければ、二人とも

「大量殺戮」という事案はあまり作りたくなかったのだ。

「急所を外すゆとりがない」という切羽詰まった状況ではなかったが、

むしろ中米にいた頃のほうが急所を外すことができなかった。



もしかしたら、一部は絶命している可能性があるが、

それでも、できる限り「命は奪わない」形を選んで

撩とファルコンは香の救出を成功させた。

中途半端に動けるようにしたら、

自分たちの命が危険にさらされるのだから、

生半可な戦闘力ではできない。

ただ、早めの処置をしないと失血死もありうる倒し方故、

冴子への連絡は早めのほうがいいなと、

撩は、教会に戻ったら、

すぐにクロイツ親衛隊の現状を伝えることを、

頭の片隅で考えていた。


**********************************
(7)につづく。





勝手な妄想ですが、
一度ファルコンの部隊を殲滅させた撩にとって、
複数人全員の息の根を止めるシチュは可能な限り
選ばないような気がします。
そういう技術を持ち合わせていることが前提ですが、
まぁ撩なら可能でしょう。
これまで原作の中で、完全に殺傷したのは、
だいたい「単品モノ」だったと思いますし、
美樹を撃った狙撃兵も「単品モノ」としてとらえれば、
木から落ちて来た時絶命していると仮定してもいっかと。
冴子と頭目エランの所に行く前にヘリから乱射した(第38話)のも、
たぶん急所ははずしてんじゃない?と
都合良く補正してます。



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きまりも

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since 2012.03.31.


5周年記念に
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十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


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ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
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