06-14 How To Invite (side Ryo)

第6部 A Day Of Ryo & Kaori 

奥多摩から3日目


(14)How To Invite (side Ryo) ***************************************************4268文字くらい



奥多摩湖畔から帰宅して3日目の夜。

教授宅から戻り、駐車場に車を入れると、

俺は着替えやらトラップの残りが入ったカバンを、

香はバスケットを持って階段を登った。



奥多摩から戻ってきた時は、唇を合せながらのお姫様抱っこで、

翌日は恥ずかしがり屋の香に先手を打たれて後ろからついて行って、

次の日は背中を押してもらいながらの家路。



この6階までの階段を移動する間でさえも、

香に触れながら昇りたいと、体温を求めた欲求が渦巻いてくる。

しかし、なにせトラップをしかけるのに、

埃だらけの場所をうろついていたので、

かなり結構汚れてしまった格好だ。

とりあえず、小さく我慢をしておく。

そんなことを考えながら、玄関を開け、香を先に中に入れた。



「俺、先に風呂入ってくるわ。」

「うん、そうして。あ、着替え持ってってあげる。」

「ああ、頼む。」

俺は、そのまま浴室に向かった。

香は、弁当殻の入ったバスケットをキッチンに運んで、

俺の部屋へ服を取りに、階段を登って行った。



浴室に入り、シャワーのコックを緩めて、体の汚れをざっと流していく。

髪の毛の中も埃まみれなので、いつもよりしっかり洗うことに。

二晩のインターバルをとりあえずは置いた。

香も疲れはあまりなさそうだ。



あいつは、今晩2度目の行為に及ぶことを受け入れてくれるだろうか。

他の女を誘う時は、いくらでも出て来る言葉が、

初めて本気になった相手では、どう切り出していいかさっぱり分からない。

体の泡を流しながら、セリフを色々思案してみる。



「ボクちゃんと、今夜ももっこりナイトどう?……違うな…。

香、明日はのんびりできるんだろ?今夜は寝かせないぞぉ。

……だめだ。

これじゃあ、恥じらいハンマーくらって、客間に逃げられるか…。」

頭をがしがし掻いても良い案は出てこない。



「あああっ!もうっ!俺、何やってんだ?」

文言に悩んでいたら、もっこりセンサーがポンと反応する。

「んー?」

どうやら香が着替えを持って来てくれたようだ。

脱衣所に、少しだけ緊張した気配がある。

それは、すぐにパタパタというスリッパの音と共に、

廊下へ消えて行った。

「顔くらい覗かせてもよかったんでないかい?」

ふと顔が緩む。



この今のギクシャク感は、嫌いじゃあない。

むしろ楽しんでいる自分がいる。

まだ、ケジメをつけてわずか3日。

触れられるだけでも、一緒に寝られるだけでも、深く高い満足感を味わっている。

だが焦りは禁物だ。



「でもぉ、ボクちゃん、我慢できなぁ〜い♡」



誰も見ていないと分かってはいても、

くねくねおねえスタイルでおちゃらけてみる。

矛盾した思いがせめぎあうが、とりあえず出るか。

脱衣所に上がると、パイソンの横に、

スウェットの上下とトランクスが丁寧に畳んで置いてある。

「サンキュ、香…。」



香と暮らすまで、

人の気配があることが、愛おしい存在が傍にあることが、

こうも心地良いものだとは、思ってもみなかった。

自分のテリトリーの中で、他人が常時いるなんてことは、

かつては考えられないことだったはず。

一人での生き方が当たり前だったが、

いつの間にかあいつとの生活が居心地よく、

手放さなければ、表に返さなければという思いとは裏腹に、

もう少しだけ、

お前との暮らしを先延ばししたい心境に

錘(おもり)がどんどん積み重なっていった。



この世界にとどめるべきではないと理屈では分かってはいても、

表の世界で他の男と一緒になる香の姿を

どうしても認めきれず、

滅多に夢を見ない自分が、

それに似た悪夢に幾度も苛(さいな)まれ、脂汗をかいて目覚め、

非常に後味の悪い朝を迎えたこと複数回。



お前がいない生活は、

もはや自分の中で受け入れられなくなっていった。

そんな想いは随分と前に自覚していたのに、

ごまかし続け、香を傷付け、危険に晒(さら)し、覚悟から逃げていた。

どこまでも、卑怯で身勝手な己に情けなくもなる。



「もう、逃げはしないさ…。」

無意識に呟く。

「だから、槇村よ。化けて出て来るなよ…。」



俺は、スウェットを着込んで頭にタオルを乗せたまま洗面所に行き、軽く口を漱いでおく。

あとは、寝るだけにするために、トイレもすませておく。

さて、香はキッチンかリビングか、客間か。

廊下に出て気配を探ると、キッチンから水音が聞こえて来た。

わざとあいつが気付くように足跡を立ててキッチンの扉を開ける。



「おーい、上がったぞ。おまぁも早く入ってこいよ。」

顔だけ覗かせると、弁当の容器を洗い終わるところだった。

「あ、うん。そうするわ。何か飲む?」

自分のことよりいつも相手のことを優先する香は、

ごく自然に俺にそう聞いてきた。

「いや、自分でするよ。」

「そぉ?じゃあ、シャワーだけ浴びて来るわ。

なんか1日2回も使うともったいないけど。

美樹さんの髪洗った時、けっこう汗かいちゃったから。」

エプロンを外しながらそう言う香に、そっと近付く。



「お前も、今日もよく働いたな。」

くしゃりと茶色のくせ毛を掻き回し、感触を楽しむ。

それだけで、かぁっと頬を朱に染める香がとにもかくにも愛おしくて、

それ以上に触れたくなるが、そこは何とか押さえて、風呂へ促す。

「さ、行ってこいよ。」

「うん。」

香は、エプロンを持ったまま、客間経由で浴室に向かった。



「さてと。」

あいつの風呂上がりに合せて、何か飲むもん用意しとくか。

冷蔵庫を覗いて見ると、缶ビールが目に入る。

これでいっか。

2本取り出してテーブルの上に置く。

今常温に出しておけば、冷えすぎない程度の温度になるだろう。

晩秋に近い季節、あいつの体をあまり冷やすわけにはいかない。

この間に、戸締まりやらなんやら確認しておくか。



いったん、キッチンを出て警報機のチェックや鍵の施錠をざっと見て回る。

抜け穴やら、トラップやらさながら忍者屋敷状態のところもあるが、

これが俺たちの日常。

このところの首都圏でも

一般家庭に警報機や監視カメラが置かれることは珍しくなくなってきた。

それでも、まだ治安の良さは欧米に比べたら遥かにいい方だろう。



キッチンに戻ると、右手側の壁の向こうには既に気配はなかった。

お?もう出たのか?

素早いな…。

あ、そっか。髪は俺が昼に洗わせたんだった。

キッチンをざっと見回してみる。

炊飯器のセットがされていないっつーことは、朝飯はトースト系か。

食パンとバケットがある場所に視線が移る。

いや、たぶん起きるのは下手したら昼頃になるかもしれん。

メシ作りは俺がすることを考えた方がいいだろうな。

なぜかって?みなまで言わすな。



「あ、あれ?リ、リビングにいるかと思った。」

風呂から出た香がナイティーに身を包んでキッチンにやってきた。

「ああ、戸締まりの方先に見てきた。一緒に飲むか?」

缶ビールをひょいっと投げる。

「ひゃあ!」

パシッとギリギリで受け取った香。

「あ、ありがと。サンゴー缶のサイズだったら、大丈夫、かな。」

そう言いながら、素直にプルタブを引いた。

大丈夫というのはきっと翌日に残らない量として問題なしということだろう。



俺は、流しに寄り掛かり立ったままで、きゅーと一気に飲んだ。

ふーと息を吐きながら、コンとシンクに空き缶を置く。

香は、扉近くのイスの端に腰を下ろし、ゆっくり味わっている。

「はぁー、今日もあっという間だったわ。」

足を浴室側に伸ばして、缶を持った両手も、うーんと言いながら斜め下につっぱらせた。



「お疲れさん。」

「……撩もね。」



香は、少し赤らみながら答えた。

残りのビールを飲み干すと、立ち上がってシンクに持って行こうとしたが、

俺はすかざすそれを受け取った。

「あ、ありがと。」

コトンと缶を置く音と同時に香が一言発したが、

そのまま腕を引っ張り込んで、自分の腕の中にふわりと納めた。

「ぁ。」

香の身がきゅっと硬くなる。

外出する前にソファーで抱きしめて以来だから、

12時間振りくらいか?

たった半日触れていなかっただけなのに、

えらく久しぶりな感触だ。



香の体温がどんどん上がって来る。

右腕は腰にまわし、左手を香の後頭部の髪に差し込んで、少し上を向かせた。

その顔色はもう完熟トマト並。

瞳の表面はうるうると揺らいでいる。

思わず吹き出しそうになった。



「まぁーだ、慣れないのぉ?香ちゃん。」

俺は、前髪をかき分けて額にそっと唇を寄せた。

「うひゃっ。」

どくんっと、心拍の跳ねる様が胸骨を越えて伝わって来る。

こうもカチコチに硬くなっていると、どうも次に及びにくいが、

その反応が楽しくて、ストップが効かなくなる。

香は、もはや返事をすることも出来ないくらいに、

硬直している。

とりあえず、おかまいなしにそのまま唇を鼻筋から上唇へと移動させた。



「んん…。」



香は、くっと目を閉じて、俺の胸部の生地を両手で握り込み、

恥ずかしがりながらも抵抗せずに受け入れている。

上唇下唇を啄むバードキスから、少しずつ湿り気のある口付けに変えていく。

ビールの風味が残るキスはたぶんお互いが感じている味だろう。



「…ふっ。」



時折漏れる香の声に、自分の気分が増々加速していく。

怖がらせたくない、怯えさせたくない、ヘタ打ったらこの先がないかもしれない。

そんな緊張と慎重さも同時に込み上げてくる。

まだ硬い香の体をさすりながら、唇を離さないまま言ってみる。



「キンチョーしてんの、おまぁだけじゃないんだからな…。」



「…ぇ?」

そのまま深いキスに移行させた。

「んんんっ…。」

そう、本気になった初めての相手、

余裕のない自分が可笑しくてしょうがない。



キッチンでお互い立ったままの抱擁、

唇を寄せ合っての甘い空気が時間を忘れさせる。

香の足が少し震え始めた。

息使いも荒くなる。

そっと唇を離し、鼻先だけをくっつけた。



「……この続きは、どこがいい?」

「は?」

香がパチッと目を開けた。

「ココがいい?お前の部屋?俺の部屋?」

お互い超至近距離で、たぶん視線が注がれているのは効き目のほうか。

香は今にも気を失ってしまうんじゃないかというほど、

茹で上がっている。



「ぁ…、ぅ…。」



口だけぱくぱくして声が出ない香。

「ボクちゃんは、どこでもいいんだけどねぇ〜♡」

またちゅっと軽く唇に吸い付いてみる。

また香の心拍の変化が自分の皮膚に伝わってきた。

きゅっと抱き寄せ、髪を撫でながら、

肩口に顔を埋めて返事を待つことにした。



「どうする?」



「……ぁ、……リョ…の部屋が…ぃぃ。」

まさに蚊の鳴くような小さい呟きが聞こえた。

思わずにやりとしてしまう。

「了解!」

まだこういうことをわざわざ言わせるのはちと酷かと思ったが、

慣れてもらうためのステップアップということにしておこう。

腕の中の香は、急速に体温が上昇していった。



**********************************************************
(15)へつづく。





撩の「この続きはどこがいい?」のセリフは、
各所で見かける言い回しでございますが、
当方も、便乗させて頂きました〜。
という訳で、早く連れていっちゃえー。
ところで、ビール飲んで歯磨きなしってどうなん??
うち、お酒飲まない家なもんだから、
飲んだまま寝ちゃうっつーシチュがピンとこなくて〜。
てか、学生時代、サークルの飲みでは仲間や後輩先輩は、
そのまんま爆睡だったか…(苦笑)。
ま、いっか。


【誤植情報感謝!】
Sさま:千錠→施錠の変更やっと出来ました〜。
ご連絡本当にありがとうございました!
2013.11.16.03:00

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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試運転中…

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