08-04 Confusion Of Kaori (side Kaori)

第8部 Oi Wharf 

奥多摩から4日目


(4)Confusion Of Kaori (Kaori side) *********************************************1576文字くらい



横になったまま、撩が出て行った扉を見つめながら、

あたしは唇にそっと指を当てた。

この4日間の激変に、脳がついていっていない。

撩が、あんなことを言うなんて、信じられない…。

本当に、信じられないっ。



—  お前が望む未来を諦める必要はない —



折りしも、教授に3日前に言われた同じセリフが、

撩の口からも紡がれた。

撩、あなた、それがどういうことか分かってるの?



とっくの昔にケリを着けていた事案が蒸し返された。

それもかなり強烈な加熱での蒸し返し。

望んではいけない未来であるはずのことなのに。

撩は、その道筋を断ち切るつもりはないと、宣言した。

それが、たとえ自分へのリスクとしかならなくても。



なぜ?



頬をまた涙がつたう。

やっぱりあの男は優し過ぎる。

殺し屋をするには、残酷な程相応しくない優しさ。



撩…。



あなたも、あたしも、

本当の産みの親を知らない。



家族が欲しいと思ったことはない、と言えば嘘になる。

しおりちゃんが、うちに来た時は、

間違いなく赤ちゃんがいる生活に憧れを持った。

しかし、それは所詮実現不可能なことと、

考えることを遠くかなたへ追いやった。



撩の子を宿すことは、その子供にも危険が降り掛かって来る。

あたし以上に無防備な小さな子が命を狙われ続けることは必至。

それをあなたは、自分への危険を省みず守り通そうというの?

撩…、あなたは家族が増えることを、受け入れられるの?

それをあたしに許してくれるの?

涙が零れ枕に染みてしまう。



望む未来の選択肢は、まだ冷静に見据えることができない。




「…ああ、いけない。…早く、降りなきゃ。シャワーもだわ。」



考えにふけっていたら、

さらに時間が押してしまった。

慌てて涙を拭って、起き上がり、パジャマを羽織って、客間へ急いだ。

一昨日と比べたら、体のだるさは殆どない。

ちょっと異物感が残るけど…。

大丈夫。

ちゃんといつも通り歩ける。



トイレに寄って、着替えを取りに自分の部屋に入る。

あれから使われることのない自分のベッドにぎしりと腰を降ろす。

ここで、何度か撩に秘密のキスをされていたことを思い出す。



髪の毛の時もあれば、頬だったり、限りなく唇に近かったりと、

もう、夢だか現実だか訳が分かんなくて、

きっと自分の夢の中のこと、

妄想が見せた気の迷いだろうと、

深く考えることを敢えて拒否していた。



それが現実だと教えられた時に、

撩自身も苦しんでいた想いが、波のように心に流れ込んで来た。

お互い、相手のためだと思い、気持ちを交わすことから逃げていた。



今までの関係を壊し変えられたことが、まだウソみたい…。



このままだと、本当にこの部屋は、客間専用になっちゃうかも。

と、とにかく、服持ってシャワー浴びなきゃ。

タンスを開け、

ジーンズとパステルカラーのシャツを選び、

慌てて部屋を出る。



何だか最近、お風呂の頻度が高いわ。

夜は入らなくてもいいように、

今日の後半の動きはなるべく汗をかかないようにしなきゃ。



あたしは、大急ぎで

浴室に入って熱いお湯を全身にかけた。



ん?ちょっと待って。

今夜は、海坊主さんと一緒に、密輸阻止の本番の日よね。

そんな日に、撩に家のことしてもらうなんて、できないわよ。

さっさと出なきゃっ。



超特急で、髪の毛を洗って、全身を流し、脱衣所に向かう。

ドライヤーで髪を乾かし、歯を軽く磨いて、服を着込むと、

洗濯機のスイッチを入れる。



そのまま客間に飛び込み、軽く化粧水や美容液を施す。

メイクとまでは言えない簡単な作業。

ルージュを使う習慣は殆どないので、絵梨子からもらったものも、

もったいないけど殆ど使ってない。

墓地に行った日だけは、心の正装を意識して薄く施したくらい。



今までの経験から、

あたしが化粧をすることを撩はとても嫌がっているのは分かっている。

鏡の前で、ふぅと溜め息をつく。



「何をしても無駄なのも、分かってるけどね…。」



早く動かなきゃ。

あたしは、足早にキッチンへ向かった。


***********************************
(4)へつづく。






【またまたちょいと長めの関連考察】
いやー、カオリン確かに混乱困惑しまくるでしょうね〜。
奥多摩の結婚式の前のストーリー(橘葉月編)は、
ヒグラシが鳴いていた夏中盤。
(ミックと自販機の前で会話する背景にヒグラシのカナカナ効果音あり)
美樹の結婚式は一応当方のイメージでは11月上旬。
で、この3ヶ月強の期間、
きっと変わりない生活をしていたと思うと、
奥多摩直後に一線越えちゃって、子作りの話になっちまったら
そらぁ〜思考が追いつかなくなるのも当然だわな。

ソニア編での公園ハグの後も進展なし、
海原戦のガラス付きちゅうの後も、何にも変化なしで、
さらに、病院の屋上で「種族維持本能じゃない」という文言を聞いていても、
その後なぁ〜んにも撩のアクションがなかったら、
「やっぱり期待しちゃいけなかったんだ…」とか、
「やっぱりあの時『妹みたいになってくれや』と言われた通りなんだ…」とか、
カオリン、ブルーに自己解決しちゃうだろうし。
仮に、撩がこの3ヶ月強の間、
それとなぁーく、アピールしていても
自分のことに関して超超鈍感なカオリンは
全く気付かない可能性大だろうし〜。

今、こうして一日一日の2人の生活を文字にしていると、
進展なし数ヶ月っつーのは、
想像するだけでも、結構ソーゼツかもぉ〜と。

多くの二次創作で奥多摩後の進展なし状態は、
ワタクシにとっては、
この1991年8月〜11月の間に相当しているかもと感じております。
もやもやモードでの数ヶ月間変化なし、
そろそろマジで限界じゃ〜、溢れる寸前っというところに、
事件発生拉致監禁救出告白ちゅう合体の流れは、
美樹の結婚式での事案に重ねちまってもよかろうと。
起爆剤としては、あまりにも贅沢過ぎるシチュですがね〜。
あんな表情で「愛する者」って言っちまったら、
もうごまかせないっしょ。
しかし、あのセッティングをモノにできない撩は、
ソートーのヘタレの烙印ポン!です。

まぁ、それも撩ちんらしく、
奥多摩後、進展なしバージョンも大大好物なので、
考えうる複数の未来を楽しませて頂いておりま〜す。

スポンサーサイト
プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


9万hit記念に
とりあえず作ってみた
CH専用Twitter
 


拍手1000パチ記念につけちゃいました。



かなり便利なサーチツール

登録サイト最新情報はこちらをチェック!


試運転中…

カテゴリ
最新記事
月別アーカイブ
検索フォーム
QRコード
QR
現在の閲覧者数: