08-09 Boeuf Bourguignon

第8部 Oi Wharf 

奥多摩から4日目


(9)Boeuf Bourguignon ********************************************************* 2344文字くらい



「教授、お食事が出来ましたよ。」



かずえが書斎を開けた。

「おぉ、もうそんな時間になったかのう。

さて、撩もしっかり食べていくんじゃな。」

「食べ過ぎで動きが鈍くなるかもな。」

ミックがにやりと呟いた。

「うっせぇ、ミック。

あー、かずえちゃん、タコはもう着いた?」

「ええ、さっき美樹さんのお部屋に行ってましたよ。」

「あいつ、ぎりぎりまで何やってたんだか。

じゃ行きますか。」

かずえ、教授、撩、ミックの4人は食堂へ向かった。






「美樹さん、お食事の準備が出来ましたよー。

って、あら海坊主さん、いつ着いたんですか?」

「ついさっきだ。」

美樹の部屋にいたファルコンに出会い、

その到着をまったくチャッチできなかった香は、

驚いたと共に、まだ気配を読めない自分に

やや反省の思いも心の隅に芽生えた。

それを悟られるような表情に出さないままに、

食堂へ2人を促すことに。

「さ、夕食を食べましょう!今日はブルゴーニュ風の肉料理よ!」

「へぇー、聞くだけで美味しそう!」

美樹も食欲をそそられたようだ。

「この香りは赤ワインだな。」

ファルコンも小さく答える。

「かずえさんの得意料理なんですって。

行きましょ。」



食堂に7人がそろった。

料理からは湯気がのぼり、

食欲をそそる香りが室内に漂う。

テーブルには煮込まれた大きな牛の肩ロースが、

それぞれの皿に盛り付けられていた。

特にファルコンとミックと撩の皿には

特大の塊が盛られている。

「今晩は赤ワインの牛ロース煮込みがメインメニューよ。」

香が配膳しながら、みなを席に促した。

他にも、大盛りサラダ、スープ、色とりどりのフルーツ、

ライスとパンは選べるようになっていて、

パスタも2種類用意されている。



「ほほ、これはこれは、豪勢じゃのう。」

教授の嬉しそうな言葉にフォークを並べていたかずえが振り返る。

「この人数と大食漢揃いなんですもの。

きっと残らないと思いますわ。」

「ブフ・ブルギニョンか…。」

撩も料理名を知っているようで、

ちょっと嬉しそうに椅子に腰を下ろした。



「さ、腹減った!食べようぜ!」

ミックが待ちきれないと言った様子で食器を手にする。

2日前にみんなでワインをたしなんだ時と同じ席で、

7人が食卓についた。



「どうぞ、召し上がって。」

かずえがゴーサインを出すと、

男性軍はさっそく肩ロースにフォークを入れた。

「いっただきまーす!」

ミックは遠慮なくかつ上品に、

柔らかく煮込まれた牛を頬張った。

「ん?これは…。味付けはカオリのオリジナルだね。」

「え!どうして分かったの?」

「カズエの料理とビミョーに味が違う。」

「ご、ごめんなさい、マズかったかしら?」

瞬時に暗い表情になった香に慌ててミックが説明した。

「No! No! 違う!違う!

2人とも個性が表れている味付けってことさ。

俺はどっちも好きだよ!

たぶん、

入れる調味料の量とタイミングと加熱時間で差がでてくるんだろうな。」



そこにかずえがフォローに入る。

「仕込みは私がやって、

最後の仕上げを香さんにお願いしたの。

お好みの味に整えてねって。ね!香さん!」

「ぁ、あ、…そ、そうなの。

とても簡単にできる料理だから、驚いちゃった。」

「ほ、かずえ君と香君の合作じゃな。

柔らかくて年寄りも楽しんで味わえるぞよ。」

教授ももぐもぐと口を動かしながら、味を堪能する。

「ファルコンも撩も、これから多少運動するんじゃったら、

たっぷり食べていかんと、向こうで腹が減っても知らんぞ。」

教授はこれから戦闘に赴く2人に視線を流した。

「そんなの関係なく、

食える時に食っときゃいいんですよ。」

ばくばくと口に運びながら、

撩がつまんなそうな表情で答えた。

ミックが味付けをすぐに見破ったことが面白くないのだ。



「おい、撩、食い過ぎて動きが鈍くなっても、

おれは責任持てんぞ。」

ファルコンが突っ込んだところで、

ミックがぶっと吹き出した。

「それ、俺もさっきリョウに言ったばっかりだっ!」

「ったく、どいつもこいつもおんなじセリフばっかり言いやがって…。」

既にメインを空にした撩は、

パスタとサラダとパンを口に突っ込んで

もごもごしながら文句を言った。



「出発までは、まだ時間があるんでしょ。

落ち着いてゆっくり食べてよ。」

香は半ば呆れ顔で撩に言う。

「毎回毎回、美味しい食事が出来て嬉しいわ。

かずえさん、香さんありがとう。」

美樹が片手で食事をしながら、2人に笑顔を向けた。

「ふふ、他の病院に入院してたら、

こんなメニューは出てこないかもねぇー。」

かずえは悪戯っぽく笑いながら、

自分が出入りしている大学病院を思い出していた。

「でも、ほんと、味が良くしみ込んで美味しいわ。

赤ワインにお肉と玉ねぎとローリエとニンニクを浸け込んで、

煮込んだだけなのに。」

香が不思議でしょうがないという顔で

肉の刺さったフォークの先を見つめる。

「仕込んだのは2日前だからね。」

「え!そうだったの?」

「2日前?」

驚く香と美樹に、かずえはクスリと微笑む。

「そうなの。仕込んでおけば後は煮るだけ。簡単でしょ?

あとでレシピあげましょうか?」

「嬉しいわ!是非お願い!」

美樹は提案に飛びついてきた。



「賑やかな食卓はいいのう。」

教授がしみじみとまわりを見渡す。

口には出さなかったものの、

もしこの3組のペアから、

次の世代に命が紡がれたら、

孫かひ孫が出来たも同然。

さしずめ自分はじいちゃん扱いかと、

遠からぬ違った賑やかな食卓を思い浮かべていた。

そんな7人は他愛もない会話を交わしながら、

大量に用意された料理をすっかり空にしてしまった。





「あー、食った、食った。

ガソリン満タンってとこだな。」

撩はげっぷをしながら、腹部をさする。

「食後の飲み物を用意してくるわ。」

「あ、手伝うわ。」

かずえの動きに香も一緒に下膳し、

コーヒーの準備を始めた。


**********************
(10)へつづく。





もらったワインを持て余し、
1回だけ作ったことがあるんですけどね、
何を失敗したのか、
ときめくような味に仕上がらなくて、
再チャレンジできないままでごぜえます。
海ちゃん、
美樹ちゃんのドレスの洗濯、染み抜き、修繕をしていたってことで、
到着遅くなりました〜。


【誤植修正感謝!】
撩の台詞の「ビーフ・ブルギニョン」を
「ブフ・ブルギニョン」に変えさせて頂きました。
フランス語統一を推奨して頂き合点でございます。
前者だと、「ワン,ツー,さん,し,ご」と
二カ国語ごちゃ混ぜカメレオンという感じの表記になるので〜。
「下善」⇒「下膳」に修正致しました。
mさん、発見ありがとうございました!
2016.02.07.04:29


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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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